最終話 消える光と消えない闇
「サビ太郎」
「ハイ、ナンデショウ?(はい、何でしょう?)」
近所の公園に誘う。
「カジガ…(家事が…)」
「今日はもう夜だし明日俺がするよ」
サビ太郎はいつものやり取りに、無表情に微笑む。
時計のように2人は並んで歩く。
時刻は深夜2時を回ろうとしていた。
「サビ太郎はあの時錆びてたんだよな〜」
出会った時の話を懐かしげに話し始める。
「ソウデスネ。デスガワタシハ、スリープモードデシタ(そうですね。ですが私は、スリープモードでした)」
優しく笑って返事をした。
「ナニガオモシロカッタノデスカ?(何か面白かったですか?)」
「あ〜悪い悪い…」
少し俯き謝り笑いながら歩を進める。
「あの時俺も色んな仕事を転々としてたんだよ。今思えば、サビ太郎の強い運が俺を引き寄せたのかもな」
「……ウン……デスカ(…運…ですか)」
サビ太郎は、理解出来ない言葉と再確認をしてきた。
「磁石みたいなものかな?まぁとりあえず……ありがとうって言いたいんだよ」
無機質で硬い肩をトントンと手のひらで叩く。
横断歩道を渡り切った先すぐにある公園の敷地に入る。
2人でブランコに乗る。サビ太郎も器用にブランコで揺れる。
雑談。
「ソロソロ、サンジニナリソウデスネ。モドリマショウ(そろそろ、3時になりそうですね。戻りましょう)」
「そうだな明日もあるし」2人同時に立ち上がる。
「2人で競争だ!」俺は、フライングのように走り始める。
「マッテ…(待って)」ガタン!
公園の中央。ブランコの周りを囲う鉄骨に腰を引っ掛けよろめくサビ太郎。
「先行ってるぞ〜」
振り向くとガタンガタンと音を立て体勢を立て直すサビ太郎を見てからそのまま帰路に向かって走り出す。
ブーー
走り出したサビ太郎の体内で異音を検知。
ピピッピピッピピッピピッ
”走行車両 検知”
車に搭載されているABSの電波がロボットと接続され検知する仕組みを、実験的に取り付けてあったものが反応。
「タイヨウクン……(太陽くん)」小さいボリュームで音声を発する。
「エイガ……(映画)」
サビ太郎は走り始める。
機能音声が命令を下す
"記録読み込み完了。安全モードに切り替えます"
…………
パーーー
ドンッ
んぐっ!!!
ドサッ ガシャン!!!
ガシャン ドンッ
――
キーン……んんグググ
何が……
唐突に見える白い空。
揺れる身体とくぐもった声。
のぞき込んでいたのは空の顔。
目が覚めてから1週間後真実を知った。
サビ太郎はトラックを検知し俺を突き飛ばし、自らの身体を呈して大破した……と。
俺は、独りだった…だと思い込んでいた。
でもサビ太郎と妻だけは同じ。
世界の片隅でうずくまっていた。
似たような場所で。似たような道を通って。
でも幸運なことに、出会えてよかった。
諦めなかったからこそ出会えた。
自画自賛。自己満足かもしれないけど、助けだせてよかった。
自分が助けてたつもりが、逆だった。
だから俺は、これからは誰かの幸せを守る番。
……遅くなってごめん。もう泣かなくていいんだ....いや泣いていい好きなだけ。受け止めるからね全部
2035年春
コンコンコン
俺が新しいドアをノックするように、右の靴のつま先で反対のかかとをつつくと、目の前にはビジネスデバイスの画面が表示。
……ブゥン
「オハヨウゴザイマス。ヨクネムレマシタカ?(おはようございます。よく眠れましたか?) 」
「おはよう。サビ太郎。緊張で寝れなかったよ〜」
デバイスの中に居るのは、サビ太郎だ。
AI技術の発達と自身が開発したスマホの代わりとなる、情報漏洩防止特化型のAI機能付きデバイスのSBTによる、夜間に秘書のサポートを行うための試験機。
「お待たせ〜」
パンツスーツ姿の妻が遅れて靴を履き始める。
コンコンコン
同じ動作で、ビジネスデバイスを起動。
「キョウノヨテイハ、シンシャチョウノシュウニンシキデス。ホウコクシマス。コクナイ5ネンレンゾクシボウジコゼロケンケイゾクチュウデス(今日の予定は、新社長の就任式です。報告します。国内5年連続死亡事故ゼロ件継続中です)」
「了解ありがとう」
妻がスケジュールを確認。
「さてと。行きましょうか?社長」
俺は妻を見つめる。
「やめてよ」
妻と笑いながら、2人でドアを開ける。
「社長。新しい計画ですけど、精神科専門医……」
「オキヲツケテ。シャドウGPSキドウ(お気を付けて。車道GPS起動)」
"安全モードに切り替えました。個人情報ハッキングインポートデータ削除……完了。各車両のGPSデータのみ保存……完了。リアルタイムデータに切り替えます"
最後までお読み頂き、本当にありがとうございます。
以上で物語は終了です。
まだまだ魅力に欠けていると思っております。
読者様の正直な、お気持ちで結構です。
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