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エピローグ 春を待つ

 出勤中と思われるせわしなく歩く人たちのあいだを抜け、岡山駅の自動改札にスマートフォンをかざして、新幹線のホームへ向かう。


――まもなく、二十三番線に、のぞみ号、東京行きがまいります


 新幹線の接近を知らせるアナウンスに、初めてこの駅で降りた祖父の葬式のときを思い出す。あのときは春だった。

 あれからまだ半年しかたっていない。けれど、もうこの土地の空の広さに慣れている。岡山駅周辺ですら、空が狭いと思う。

 手を見ると、日焼けして、爪のあいだに落ち切っていない土が入っている。

 駅までは、翔に送ってもらった。

 バッグには、新幹線で食べなさいと菜美の祖母が作ってくれたばら寿司。抱えているのは、千葉の祖父のお墓にお供えするためにもらってきた、菜美の育てた花。

 ツルを伸ばす前のエンドウが春を静かに待っている畑は、源にお願いしている。


 岡山駅を発車した新幹線は、ぐんぐんとスピードを上げていく。

 車窓には、稲刈りを終えた田んぼと丸い山々が流れていった。

 窓に映る自分の顔が、どこか穏やかに見えた。

 ふと、今年は見られなかった桜を、来年はみんなで見たいな、と思った。


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