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田舎暮らしのススメ


ぴーーーパタパタパタ。

青々とした草むらから、鳥が飛び出した。

ここは、神の住む町の外れ。農村の一角、小さな小屋の煙突から煙が出ている。


「タケシーご飯よー」

「おぉー」

隣の納屋から、ハンチングをかぶった男が出てくる。井戸で汚れた手を洗い、小屋に入っていった。





「オモジイ、おひさー」

「おう、元気そうじゃな。今日はどうした」

「タケシの仕事でこっちに来たんだけどね」

どん。と鍋を出す。

「これさ、ちょっと改良してよ」

カツミはタケシと暮らし始めてからも、カレー屋をやりたいと考えていた。

でも、そのための課題も多かった。

「この蓋さ、ぴったり鍋に固定できるように、金具をつけて欲しいんだ」

「金具か」

「うん。馬車で運んでて、こぼれたら困るし。それにーー」

タケシの家から町までは、急いでも馬車で1時間はかかる。

ランチに間に合わすには少々きつい。煮込む時間が足りないのだ。

カツミは、握りこぶしほどの大きさの石を取り出した。

「これをうんと熱くしてさ、鍋に入れてぴっちり蓋をしたら、煮込めるんじゃないかと思って」

「ほう。お前、うまいこと考えたな。

そうじゃな、まず試してみることだな。

分かった。金具、つけといてやるから、またこっちに来る時に取りに来いや」

「ありがとう。頼むわね」


「やあカツミちゃん。 元気?」

わっ!しまった。見つかった。

クニオだ。

「おかげさまで」

「カツミちゃん、カレー食べたいんだけど」

「もうちょっと待っててよ。今色々やってるからさ」

「みんな待ってんだよー。早くしてね。

何なら僕、おじゃましてもいいんだけどな」

「やだ。待ってて」

「えー。冷たいなぁ......」




市場に寄って買い物をして、待ち合わせの噴水広場に。

屋台が出ている。

ここいいよなー。ここでやりたいなー。


タケシと馬車で帰りながら、噴水広場の事を話すと、

「そうやなぁ、ウカミーに聞いてみれば?」

そっか。商業ギルド副長やった。忘れてたー。

「明日聞きに行くわ」



ウカミー農園は、タケシの住む村の端にある。歩いていけるから、ちょくちょくお邪魔しては、野菜の作り方を教えてもらっている。

ゆくゆくはーー自分の農園の野菜を使ってカレーを作りたいから。

家の横を耕して小さな畑も作った。絶賛練習中なのだ。



ウカミー農園に行くと、母屋がなんだか賑やかだ。

「こんにちわー」

「おぉ、カツミか、いいところに来たな。こっちに来い」

縁側でくつろいでいたのは

ピコン♪

*ヤスベー*(波邇夜須毘古神)

*ハヤメ*(波邇夜須毘売神)

あ。神様だ。

「これがな、さっき言ってたカツミじゃ」

「はじめまして。カツミです」

「そうー。あなたがカツミさん。で、畑始めたって?」

「はい。まだ始めたばっかりで......」

「じゃぁちょっと土をみてあげるわ。

ね、あなた行って見てあげて」

「お、おう」

ありゃ。尻に敷かれてる?


カツミについてきたヤスベーは、畑の土をギュッと握ってうなずいた。

「すみません、まだ耕したばかりで」

「ああ、いい土だ。ここは元々農場向きの土地だしな」

「そうなんですか。でも草が凄くてなかなか進まなくて」

「痩せた土地には草も生えんよ。

大丈夫。ちょっと手を加えればよく実るぞ」

ヤスベーに畑の作り方を教えてもらっていると、ハヤメがやってきた。

「悪くないわね」

「後は肥料だな」

「そうねー。カツミさんてさ、カレー作ってるんでしょ。

野菜くず、いっぱい出るんじゃない?」

「ええ。結構出ます」

「それじゃー」

ハヤメは簡単コンポストを教えてくれた。

端の一畝。その端から順に野菜くずを埋めて土をかぶせる。順に埋めていって端まで来たら、次の畝へ。

一カ月置けば分解されて肥料になるから野菜を植えられる。

「これならできるでしょう。

米ぬかがあれば、混ぜるといいわよ」

「あ、それならウカミーに貰えば」

「そうね、そうなさい」

「まぁしばらくかかるがな」

「いえ、いいんです。

当面はご近所の農家さんにお願いして分けていただいているので。

ちょっとづつでもやれたらなって。

あ。そうだ。カレー、良かったら召し上がりませんか」

ヤスベーがニッコリした。

「もちろん、いただくわ」



タケシも入って、4人でカレーを食べた。

「いいわねー。たまにこういうスパイスの効いたもの」

ヤスベー黙々と食べている。

「スパイスやハーブは、ほとんど森に自生しているものらしくて。

うまく手に入らない時もあるから、多めに買ってドライにしてるんですけどね」

「ん?作れるぞ」

「え?」

「あぁ、種蒔きゃ生えるさ。草みたいなもんだ」

「じゃぁ野菜より、そっちにしようかな」

「いいじゃない。ハーブ園」

うん。いいかも。



ひとしきり農業講座開いて、2人の神様は帰っていった。

またハーブを撒く時には来てくれるそうだ。


あ、しまった。ウカミーに聞くの忘れてた。

まぁ今度でいいか。


私もタケシもちょっとせっかちで、やり始めると止められない。

だから意識して休むようにしている。

ここの世界の人たちは、みんなのんびりで、割となんでも適当だ。

良く言えばおおらか。悪く言うとルーズ?でもそれで成り立っている。

慣れれば案外困ることもないし、かえって楽だ。

まぁタケシの馬車が認められたのは、細かいことまでこだわっているからなのだけど。

普通はもっと大雑把なのだ。

せかせかと追われるのはもう嫌だ。

ゆっくりと。

でもーーカレー屋はちゃんとやる。





******


=波邇夜須毘古神・波邇夜須毘売神=

黄泉の穢れに苦しむ中で生まれた、土を司る夫婦神。

はにすなわち土・粘土を象徴し、大地や土壌、あらゆる作物の基盤を担う存在とされる。

静かに万物を支える、実りの根源の神々。


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