第8話 公爵家残党との再会
王都の裏街からさらに離れた、森に囲まれた古い屋敷。
健一はセレナとローズマリーに連れられ、そこに辿り着いた。
屋敷は長年放置されていたらしく、蔦が壁を這い、庭は荒れ果てていたが、どこか懐かしい雰囲気が漂っていた。
「ここが……元公爵家の隠し別邸です」
セレナが静かに言った。
健一は門をくぐりながら、胸に奇妙な感覚を覚えた。
この体——レオン・フォン・ローゼンベルクの記憶が、少しずつ蘇ってくる。
屋敷の奥の応接間に入ると、そこに数人の女性が待っていた。
年配の女性執事と、若いメイドたち。
彼女たちは健一の姿を見るなり、目を大きく見開いた。
「レオン様……!」
一番年長の女性執事、ミセス・エレナが、震える声で駆け寄ってきた。
「本当にお戻りになられたのですね……。私たちは……ずっと、お待ちしておりました」
健一は彼女たちの顔を見て、胸が熱くなった。
元レオンの記憶が、鮮明に流れ込んでくる。
彼女たちは、冷酷だったレオンに対しても、忠実に仕え続けていた女性たちだった。
王女派の圧力で公爵家が没落した後も、密かにこの別邸に残り、健一
の帰りを待ち続けていた。
「みんな……ありがとう」
健一は静かに頭を下げた。
「俺は……レオンじゃない。佐藤健一という、別の世界から来た人間だ。でも、この体で生きている以上、お前たちを裏切るつもりはない」
エレナは優しく微笑んだ。
「レオン様であろうと、別の魂であろうと……。私たちにとって、あなたは大切な主です。どうか……私たちをお使いください」
健一は一人ひとりに近づき、支配の刻印を優しく使った。
触れることで、心の奥底にある忠誠をより強固なものにしていく。
メイドの一人が、目を潤ませながら言った。
「レオン様……心が、温かくなります……。私たちは、どこまでもあなたについていきます」
健一は彼女たちの手を握りながら、静かに感動を覚えていた。
(この子たち……俺が何者であっても、信じて待っていてくれた……。守るべき存在が、また増えた……)
彼は部屋の中央に立ち、皆を見回した。
「これから、俺たちは反王女の勢力を形成する。表向きは『献身の奴隷解放運動』として活動するが、実態は俺を中心とした新しい力だ。みんな……俺と共に、この理不尽な世界を変えていこう」
女性たちは一斉に頭を下げ、力強い声で答えた。
「はい、レオン様」
その夜、健一は屋敷のバルコニーに出て、星空を見上げた。
ローズマリーが静かに隣に立った。
「レオン様……お一人で悩んでおられるのですか?」
健一は小さく微笑んだ。
「悩んでるんじゃない。ただ……少し、感動しているだけだ。この子たちを、絶対に裏切れない……そう思ったら、胸が熱くなってな」
ローズマリーは優しく頷いた。
「それが、レオン様の強さです。力だけではなく、心で人を動かす……
私も、そうありたいと思います」
健一は星空の下で、静かに拳を握った。
公爵家残党との再会は、ただの再会ではなかった。
それは、健一にとって「守るべき家族」が増えた瞬間だった。
反王女勢力の基盤は、ここに確かに形成され始めた。
これから始まる戦いは、きっと過酷なものになる。
しかし、健一の心には、初めての「温かい覚悟」が生まれていた。
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