第2章 第18話 まだもう少しそれぞれの青春を
進み始める青春の1ページです。
ぜひ読んでください。
「5分休憩」
部長の声が体育館に響く。
2 on 2の練習を一緒にしていた先輩方が俺、獅子原大輝の方に駆け寄ってくれる。
「獅子原、期待してるぞ」
「はい!」
「1年生でたったい一人のレギュラーだもんな。一緒に頑張ろうぜ」
3年生にかわいがってもらって、認められて本当はうれしい。
でも……
「あいつすこし先輩に認められてるからって……」
「俺たち2年を差し置てって腹立つわ」
「まあそれでも3年の先輩は夏で引退するし、あと少しの我慢だ」
後ろから聞こえるその声に聞こえないふりをして俺は大きく息を吸う。
「はい!!」
せめて先輩たちに恩を返せるように、それまでは前を見ていないと。
――――――――――――――
もうすでに気温は30度を超えていると思う。
日に日に気温は高くなるし、練習の度合いはます一方。
でも私も置いて行かれないように頑張らないと!
胸の前で小さくこぶしをぎゅっとして頑張るぞ!と私、松原風香は気合を入れる。
「あっちぃよー。風香倒れてねーかー?」
ふらふらとしている紗季ちゃんとすこし苦笑いしながら良太君がこっちに来てくれる。
「紗季大丈夫か?風香ちゃんも暑いから水分取ろうね」
「うん。良太君ありがとう。紗季ちゃん、日陰の方に行こう?」
そーするーといいながら紗季ちゃんは日陰の方に行く。
「紗季ちゃん大丈夫?」
「紗季なら大丈夫。暑いし心配ではあるけどそんなやわじゃないよ。疲れたの4割、さぼりたいの6割かな」
たしかに紗季ちゃんが倒れるなら私なんてとっくに倒れてるか。
自分のひ弱さにすこしだけ笑みをこぼしていると、
「篠原さん大丈夫?」
優しい暖かな言葉のはずなのにどこかひんやりとした声が後ろからして振り返る。
「団長」
良太君が短くそういうと紗季ちゃんはさっと立ち上がってすこしだけ緊張した顔になって団長を見る。
「どうされましたか、団長」
どこか警戒するような雰囲気をだしながら紗季ちゃんいうと、すこし笑みを浮かべながら団長は続けた。
「いいや、後輩がすこし心配になってね。先輩、いやとしてきたんだよ」
「そうですか団長。紗季は元気ですので大丈夫です。ご心配おかけしました」
良太君の声がどこか震えている。
いつもより力強い声なのにどこか震えてこわがっているような気がする。
「おやおや三木くん、ずいぶん言うようになったね。そんな言い方後輩らしくないよ」
「そうですか?ありがとうございます。ほかの幹部の方がおよびになってますよ」
「あ、ほんとだ。じゃあね、三木くんと篠原さん。そして松原さん」
そういってくるりと方向を変えて団長は応援団の中心の方に行く。
紗季ちゃんと良太君は団長の背中から目を離さない。
団長と昔何かあったのかな。
でもそれを私が聞いていいのかわからないし……。
もし何かを聞かされてもどんな言葉をかけていいのかわからない。
「はぁ」
小さく私の口から息が漏れる。
「ごめん、風香。わたしちょっと教室戻る」
「僕も戻るよ。風香ちゃんも戻る?」
今二人と戻っても何も知らない私は何もできないし……。
「い、いや私は練習残ろうかな。何か連絡事項とかあったら伝えるね」
「うん、ありがと」「ありがとな、風香」
いつもより明らかに様子が違う二人が教室にゆっくりと歩いていくのを見送った後、練習に参加するにはすこしおっくうだったので体育館近くのベンチに移動して座った。
なんていえばよかったのかな。
二人についていくのは違う気がするし、励ますって言われても何があったのか知らないし……。
一歩踏み出すのは怖いし、でも紗季ちゃんたちの力にはなりたいし。
「はぁ」
大きなため息がふらふらと青空に舞い上がり遠くの入道雲の一部に吸い込まれていった。
「どうしたらいいのかなぁ」
消えそうに、自分でもわからないぐらいの声。
のはずだった。
ドサ
目の前が真っ暗になる。
え?なに?
タオル?しかもちょっと大きい
頭に乗っかったタオルを取ると、
「どーしたの、風香?」
そこにはまぶしすぎる青空を覆い隠すように、ふらふらと青空に消えそうな声を逃がさないようにくしゃっと笑う大輝君が居た。
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