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軟禁生活と、謎の声

風の精霊を解放し、一行はセントマギアの城へと戻ってきた。

それからは、この国の第一王子であるライオットが魔族との開戦を宣言するべく色々と準備が進められていた。

開戦時には神子の存在が不可欠であるという理由で愛は神官長に連れ回されており、彼女が反抗しないための人質状態である皐は軟禁状態にあった。


「サツキ。飯をもらってきたんだが…」

「…ごめん、食欲ないや」


神子を反抗させないために城の一室に押し込まれて、早三日が経過していた。

皐は"自分さえいなければ愛はもっと自由だったのではないか"という思いに囚われて以来、体調を崩していた。


「…辛いか?」

出会った頃とは比べ物にならないほど、ヒロトの声は優しい。

ヒロトだけは皐の護衛であったため、護衛の任は解かれずにいた。

護衛とは名ばかりの見張りではあるのだが。


「そういうんじゃ、ないんだけど…」

「なら、食べられるだけ食べた方がいい。元の世界に帰る前に、身体を壊してしまう」

「うん…」

「城に戻ってきてから、顔色も悪い。まるであんたがあんたでなくなるみたいだ」


ヒロトの少し硬い手のひらが、皐の頬を撫でる。


「!」

「…少し痩せた気がするな」

「ヒ、ヒロト…?」

「ん?どうした?」

「や、別に…」


皐がヒロトから顔をそらす。


「…っところでさ、愛、どうしてるか…分かる?」

「ああ…相変わらず神官長に連れられて、色々と忙しそうにしている。だが、不便はしていない…と思う」

「思う、なんだ…だよね、ヒロトは私の護衛続けさせられてるんだもんね」

「…やらされているとは、もう思わないが。あの旅のおかげで、俺はあんたが近くにいないと落ち着かない」

「?!いやいやいや、私に言うセリフじゃないよそれ!」

「何でだ?俺が護衛をしている相手はあんたであって、神子であるマナじゃない。何も間違ってなどいないだろう?」

「いや、そうなんだけど、そうなんだけどさ!」


どう言っていいのか。

今まで我武者羅に過ごしてきたから忘れていたが、ここは皐がやっていたゲームによく似た世界。

つまり、愛がヒロインで、皐はサブキャラ。

サブキャラは決して攻略対象と結ばれることはない。


あるとすれば、ヒロインの恋敵として、障害として立ちはだかる存在になった時だけだ。


ということは。


(愛は、ヒロトが好きになった、ってこと…?)


「サツキ?」


(嫌だ、なぁ…)


「……」

「いだっ!」

バチィ、と額に強い電撃が走り、皐が声を上げた。



「!す、すまない、こんな威力になるとは思っていなくて…!」

「これ…最初の時に使われた、気付けの…?」

「そのはずなんだが…大丈夫か?痛かったんだろう?」

「だ、大丈夫…」

ヒロトが皐の前髪をかきあげて額を見る。


「…大丈夫じゃない。火傷になっている…治療の道具を持ってくるから、待っていてくれ」


ヒロトが部屋を出て行くと同時に走る足音。


《やっと、一人になってくれた》


「?!」


《ねぇ、キミは、こんな歪んだ世界、終わらせた方がいいと思わない?》


「歪んだ世界…?一体どういう…」


《ふふ。これから教えてあげるのは、世界のヒミツ。神子のオマケのキミには、耐えられるか分かんないけどね》


「なにを…?」


謎の声が笑ったかと思うと、皐の目の前が閃光で満たされる。


そして、光が消え、次に皐が目を開くと。


「!ここは…?!」

暗く冷たい牢獄に、淡い光が一つだけある場所に浮かんでいた。


《ここは、この世界の中心であり源だよ》


「…中心?源?」


《もう少し、光に近づけてあげる》


「え?」


皐の身体が、あの淡い光に近づけられていく。


「え…これって…」

発光する白い繭に包まれているのは、皐と同い年くらいの少女だった。


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