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007:師を求めて ~もうブリッチできそうな感じだね~

 無事サクラちゃんとこの世界で合流を果たせた。

 恥ずかしいPVなんてものの存在も知ってしまったわけだけど、それはもう置いておくとして。


「ところでサクラちゃんはボクが来るまでなにしてたの?」

「そりゃもちろん、師匠探しだよ? 1日で自分の師匠を決められる人はなかなかいないからね。まぁ適当に決めちゃう人もいるにはいるけど、オススメはしないかなー」


 並んで2人夜の学院を歩きながら、ボクが来るまでのこの世界の様子を聞いてみた。

 サクラちゃんの言う通りお師匠様探しはこのゲームのメインコンテンツの1つで皆慎重らしい。

 まぁ今後の自分の魔法成長にも関わることだって言われればそりゃね、ゲーム好きの人なら厳選したくなるよね。


「狙い目は一撃大火力! ……なんだけど、実はヘルエルとの再会でベータの記憶引継ぎっぽい感じするじゃんか? だからもしかしたら私のお師匠様って確定済みの可能性あるんだよにぇ」

「あぁ~確かに? ヘルエルはサクラちゃんのこと覚えてたわけだもんね。ベータのお師匠様とも感動の再会をするわけだ?」

「感動……かどうかはわからないよこころ。あの人うさ耳つけてぴょんぴょん跳ねる変人シスターだから……」


 およ?

 なんかそれはどこかで聞いたことのある人物像ですね?

 どこかでというかついさっきらっきーから聞いたような人物像。

 ははーん、さてはサクラちゃんとらっきーのお師匠様は同一人物だな?

 やっぱりサクラちゃんこの世界の結構重要なポジションにいるのでは……?


「ボクはどうしよっかなぁ。バランス型選んだから色んな魔法覚えたいところなんだけど。サクラちゃんオススメの人とか知ってる?」


 ボクの理想としてはサクラちゃんを補助する強化とか回復の魔法を覚えられたら嬉しいんだけど。

 そう思って顎に指を当ててトントン構想を練っていると、横でサクラちゃんがビタッと静止した気配を感じた。

 なんだろ? と思って振り向く。


「やっぱりこころはバランス型か~! いや悪くない、悪くないんだけどね! 結構玄人向きの型だから難しいんだよにぇ~」

「え……難しいの?」


 額に手を当ててうんうん唸るサクラちゃん。

 ぶつぶつと「先に言っておくべきだったか?」とか「いやでもバランス型ってロマンあるんだよね」とか1人呟いてる。

 バランス型がロマンあるのか。

 そういうのは大火力増し増しの型だと思ってたけど。


 ひとしきりうんうん悩んだサクラちゃんはうんと大きく頷くと、バッと顔を上げた。


「とりあえずこころ! お師匠様探しはよぅく熟考して決めるんだよ? バランス型はまぢでお師匠様次第で成長の方向性がぐるんぐるん全力回転レベルで変わるから!」

「そ、そんなに? ボクは強化と回復だけ覚えられればそれでいいかなって思ってたんだけど」

「────」


 ボクの返事に、再度サクラちゃんが上を見上げてのけぞる。

 そのままもう少しのけぞったらブリッチできそうな感じだね。

 ボクも釣られて空を見上げればやっぱり夜の星々がキラキラ綺麗だ。


 と、視線を夜空に向けてたらガッと肩を掴まれてビクッとする。


「さ、サクラちゃん……?」

「落ち着いて聞くんだこころ」

「う、うん……?」

「この世界に、回復魔法は存在しない……多分」


 ……え?

 回復魔法ないの!?

 こういうゲームではあって当然レベルのあの回復魔法が!?

 そりゃ流石のボクも予想外だってばよ。


「……あ、でも多分ってことは確定じゃない?」

「そそ、現状誰も見つけてないって話だからにぇ。なんか公式のフレーバーテキストによると、昔、命の魔法使いってチートNPCがいたらしいんだけど、何百年も前に死亡したんだって。だから今じゃ隠し魔法扱いで、誰も覚えられない不遇の型なんだよ」

「え、まじか!」


 なんてこった。

 惜しそうに語るサクラちゃんもきっとその命の魔法が残ってればって思ってるんだろう。

 でも結構重要そうな要素で、それだけの情報が伝わってるならそのうち秘伝の書とか見つかったりして。


 なーんて、そうそううまくいくはずもないし、見つかるとしてもかなり先のことだよね。


「そういうことなら仕方ないから回復は縁があれば、かな。ならボクは強化とか支援関係で魔法教えてくれそうなお師匠様を探すよ」

「ごめんにぇ。先に言っておけば物理特化のこころになれたかもしれないのに」

「それは普通に嫌だ。ゴリゴリ殴る蹴るするならボクも魔法特化にするよまだ。それにゲーム関係のネタバレを避けたのはボクのほうだしね」


 他愛ない会話で顔を見合わせたボクらはプッと吹き出す。

 そうだよ、こうしてサクラちゃんと一緒に遊べるだけで楽しんだ。

 いつもは横で見てるだけだったけど、本当はサクラちゃんが一緒にやりたがってるの知ってた。

 それが今はボクも楽しんでサクラちゃんと遊べる、これって最高だよね。


 まだ寝るまでに時間もあるし、ただ散策するだけでもサクラちゃんと一緒なら──


「ぴょんぴょんぴょーん。ウサはか弱い兎ぴょーん」


 …………。


 サクラちゃんと一緒なら──


「ぴょんぴょん。人参いずこ。人参いずこ? ぴょーん!」


 …………。


 サクラちゃんと一緒なら──!!


「おいばか弟子。ウサに人参寄越せ。1回ヘルエルに負けたくらいで脱走しやがってよぉ。再教育ぴょん!」


 サクラちゃんと一緒なら……サクラちゃん通りすがりのうさ耳シスターに連行されていきましたが?


「待って師匠! あれはベータ終わって来れなくなっただけで、別に逃げ出したわけじゃ……あぁこころ、こころぉぉぉ!」

「ぴょんぴょんぴょん! 感動の再会にウサも殺る気増し増しぴょん!」

「なんか絶対文字違うぅぅ!? くぅ、せめて……!」


 うさぎ跳びで離れていくうさ耳シスターと冗談みたいにぐわんぐわん引っ張られるサクラちゃん。

 呆然と見送るしかできないボクの視界に、ピコンッと通知が鳴った。



 〈来訪者:サクラ よりフレンド申請が来ています〉

 〈受諾しますか? YES/NO〉



 無心で「はい」をクリックする。

 フレンド欄にサクラちゃんの名前が加わった、やったね。


 ……え?

 これからどうしよ?

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