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異世界日本史  作者: 齋藤
19/21

1923年   関東大震災 

                       海軍省



 海軍省の一室で二人の男が言い争っているのを数人の軍人達が遠巻きに眺めていた。




「古鷹型は7500tの偵察用の巡洋艦案で良いだろ!!。わざわざこれ以上大きくする必要は無い!!。」


「い~や。古鷹型は除籍させる一等巡洋艦の代わりに運用するんだ。9000tの案が良いに決まってる!!。そもそも偵察は天龍型や球磨型にやらせればいいだろ。大量に建造したんだからな。」


「天龍や球磨じゃオマハ型やエメラルド型に苦戦するだろうが!!。」


「別に9000tでも偵察はできるだろうが。8隻の予算は出るんだから大型の艦を作っておくんだよ。」


「貴様!!そんなに俺の案が気に入らないのか!!。」


「そうだ、気に入らん。」


「何を!!!。」


「やるか!?。」


「ここまで言われて引き下がれるか!!。」



















「はぁ......」


「あいつらまだ言い争ってるのか......。」


「どうせ9000t案になるってのにな。」


「言ってやるなよ?。暴れ出すぞ。」


「砲塔にも装甲を設けたいからな。7500tじゃ足りんよな。」


「大戦で酷い目にあったからな。武装より重装甲。移住性より重装甲だ。」


「沈んでしまったら代わりは無いし直ぐには建造できないからな。装甲が重要だよな。」


「魚雷を外すことも検討したがな.......。まぁ無理だったが。」


「用兵側からの要求が過大すぎるんだ。もう少し我慢してほしいもんだ。」


「本当だよ。あれやこれやしてたら重量が増えすぎて戦う前に沈んじまうぞ。」


「まぁ巡洋艦に規制は無いんだ。好きにつくれるからな。どんどん載せたくなるのは分かるよ。」


「好きに作れるって言っても二等巡洋艦は作りすぎて暫くは建造する必要は無いがな。」


「天龍型は2隻に止めてもっと球磨型を建造すればよかったのに。4隻も建造するから。」


「球磨型だって8隻も建造しただろ?。それに長良型だって4隻もある。これ以上は作ると大蔵省がうるさいからな。」


「あ~いやだいやだ。もっと好きにやらせてほしいよ。」


「どっちにしろ暫くはこのままだよ。」


「旧式の一等巡洋艦も前弩級もあと数年で解体だ。寂しいもんだよ。」


「栄光の敷島型も朝日と三笠を除いて解体か.....。」


「残っても練習艦だ。これで使える戦艦は本当に10隻だけだな。」


「予算が出るって言ってもぽんぽん作り出すわけではないしなぁ....。」


「急に減らしたら元には戻せないってのに。」


「もっと戦艦が欲しいよ。」


「戦艦が駄目なら戦艦の代わりになる物を作ればいいじゃないか。」


「戦艦の代わり?。」


「そうだ。戦艦の代わりに戦艦を撃沈できる物だ。」


「例えば?。」


「駆逐艦はどうだ?。伊太利亜は魚雷艇で戦艦を沈めていたし駆逐艦なら.....。」


「駆逐艦でも魚雷を積めば撃沈できるがそれではなぁ......。」


「駆逐艦では抑止力にはならんぞ。」


「そもそも補助戦力を主力にするのは情けないぞ......。」


「なら潜水艦はどうだ?。」


「潜水艦はもう少し性能が良ければいけるかもしれんが代わりにはならんと思うぞ。速度が遅すぎる。戦場に到着するころには戦闘は終わっているよ。」


「第一魚雷の値段がな......。」


「お前ら古い!!古すぎるぞ!!。潜水艦も駆逐艦も古い!!。これからは航空機だ!!。我が日本海軍にも航空母艦があるではないか!!。」


「航空機に撃沈なんて流石に無理だろ.......。」


「遅いし飛ぶ距離も短いし現実的じゃないな。」


「い、今は無理でもこれから先どうなるかわからないぞ!!。」


「今は無理って認めてるじゃないか。」


「それは....。」


「.........」


「無理......だな......。」


「「「はぁ.......。」」」


















                       外務省



「また仏蘭西が独逸のルール地方に派兵したぞ。」


「おいおいまたかよ.......。20年に何個か都市を占領した時に英吉利と不和になって懲りたと思っていたんだが.......。仏蘭西も飽きないもんだな。」


「英吉利はカンカンだよ。これは軍事侵略であり許されるものではないだとさ。」


「軍事侵略!?。そこまで言い切るか?。英吉利は本気だな。」


「仏蘭西も少しくらい待ってやればいいのにな。誰がどう見たって独逸に賠償金を支払う余裕があるとは思えないぞ。」


「仏蘭西も債務で余裕が無いのさ。例えボロボロでも独逸は魅力的に見えるんだろうさ。」


「だからって自分から金のなる木を切り倒しに行くんだからな.......。笑えんな。」


「独逸からルールを占領したらより一層賠償金が遠のくと少し考えれば分かるもんだと思うんだがな......。」


「間接的に日本に対する賠償金も減るんだからやめてほしいもんだよ。」


「おかげでボロボロだった独逸の経済はもっと悪化するな。えぇっと......今のマルクのレートって1ドルいくらだ?。」


「確か.......。1ドルが1万7000マルクくらいだったな。」


「1ドル2円だから1円で34000マルクか.......。」


「酷いな......。去年は1ドル500マルクだったのにな......。」


「独逸の経済を弱らせたら元も子も無いと言うのに。」


「仏蘭西はいつまで占領する気なんだ。」


「元を取るまでいそうだが....。まぁ取れるとは思わないな。」


「これは長引くな.......。」


「さっさと撤退してほしいよ。」


















                     航空母艦 鳳翔



日本初の航空母艦にて着艦試験が行われていた。既にウィリアムジョルダンという英国人が着艦を成功させていたが日本人は未だ行っていなかった。



「ウィリアムジョルダンばっかじゃないか。他に誰か着艦できないのか?。」


「陸に着陸するのとは訳が違うからな.......。そう簡単にはな.......。」


「そうか。はぁ.....。」


「早く自前で訓練できるようにしたいが.......。」


「いつまでも英吉利人に大金を払い続けるのは嫌だからな。」


「あいつ嫌味ったらしいからな。苦手だよああいう奴。」


「1万も払うんだ。もう少し真面目にやってほしいもんだ。」




話をしている将校の視線の先では一〇式艦上戦闘機が危なげも無く着艦していた。



「おぉ~やるなぁ~。」


「やっぱり良い腕だな。」


「偉そうな事を言うだけはあるな.......。それにしても航空機が船から飛ぶようになるとはな。」


「人が空を飛べるようになってまだ10年そこらだ。進歩が早すぎて着いて行けんよ。」


「その内、空のもっと向こうまで飛べるようになるかもな。」


「なんとも夢のある話だ。死ぬ前に見てみたいもんだ.......。んん?。なんだ?。」


「搭乗員の1人が着艦を行うらしい。大丈夫なのか?。」


「あれは俊一大尉じゃないか?。そういえば陸で着艦の訓練をしてたな.......。」


「や、やるのか?。大丈夫なんだろうな?。」




吉良俊一大尉の一〇式艦上戦闘機は鳳翔の周囲を何回か旋回し後方から着艦を試みた。


距離が足りず何度も失敗を繰り返していたがようやく成功できたと思われた瞬間、一〇式艦上戦闘機は波で揺れる鳳翔から滑り海に落下してしまう。


周囲が大騒ぎの中奇跡的に無事だった吉良俊一大尉はもう一度着艦を行うよう意見を具申。誰しもが静かに見守る中もう一度着艦試験は行われた。今度は念入りに鳳翔の周囲を旋回し甲板を往復している。そしてそのまま一回目の着陸で成功させた。




まさに日本人が始めて着艦を成功させた瞬間だった。




吉良俊一大尉が発艦と着艦を繰り返す中ウィリアムジョルダンは姿を消していた。



















                    帝都 陸軍省



「あ~腹減った。昼だってのに仕事仕事。はぁ.....嫌になる。」


「口じゃなくて手を動かせ。手を。予算申請の書類はまだまだあるんだ。そんなんじゃ終わらんぞ。」


「申請してもどうせ認可されるわけないっていうのによ.......。」


「いいから黙って書け。これが終わったら支那そば奢ってやるからさっさと終わらせろ。」


「お?良いのか?悪いな~。」


「たく......。」


「支那そばか、たまらんな......んん?。」


「今度はなんだ....さっさと書けとさっきから......ん?。」


「......揺れてないか?。」


「......揺れてるな.....。結構強いな.....。」


「「うわぁ!!」」





 振動が大きくなり轟音が聞こえ出したと思ったその瞬間、今までに感じた事のない大きな揺れが関東を襲った。多くの建物が倒壊し昼時であった事も重なり東京はあたり一面火の海となっていた。

そして殆どの住宅が木造だったため被害はどんどん拡大していく。





「嘘だろ......」


「町が燃えてるぞ.....。」


「いったいどうなっちまうんだ........」







この大地震によって死者は10万を超え、30万以上の住宅が全壊もしくは焼失した。

























                     帝都 官邸



「えらい事になったな。」


「復興にいったいいくらの予算が必要になる事やら......。」


「あまり考えたくないな........。」


「ですが批判無く東京の区画整理をできると考えれば.......。」


「そうだな......再開発もこの際やってしまうか。」


「遷都する事も選択肢の一つですが。」


「そこまで酷いわけではない。東京を復興すれば済む話だ。」


「遷都するにもなぁ.....。」


「それより予算だ。予算。」


「米国や英国が支援と国債の購入をしてくれるそうだ。復興は予算に糸目をつけず行うべきだな。」


「帝都の近代化はいつかは行うべきだったが......地震がきっかけになるとはな.....。」


「今東京じゃどこも火災に死体ばかりだ。早く復興させなければ.......。」


「国債を買ってもらえるからと言っても足りんな......。とりあえずいらない予算を削るべきだな。」


「軍の予算ですね。」


「軍の予算だな。」


「軍の予算だろうな。」


「まぁ仕方あるまい。」


「仕方ないな。」


「あとは......。外地の開発予算も少し減らすか。」


「満州の投資も減らすしかないな......。」


「はぁ......。」





遅くなって申し訳ありません。

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