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魔王様のお嫁様  作者: 紫月 京


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最終話.魔王様のお嫁様


魔王様のエスコートで大広間へ足を踏み入れたミサキ様を見て、会場がどよめいた。

美しく着飾り、セレスリーアの国宝を身につけたその姿が初めて晒された。そして、とろけそうな笑顔を浮かべて自分を見つめる魔王様と微笑み合うその様子は、これまで人族の娘と侮ってきた者たちにとって、衝撃的なものだっただろう。


大広間に入る扉の前で着飾ったミサキ様を見た魔王様は、たっぷりと固まった後でミサキ様を抱え上げて寝室へ戻ろうとなさった。僕とカフカで必死に止めた。カイダル様がお腹を抱えて爆笑していたけど、僕たちの力じゃ魔王様には敵わないんだから、助けてくれたってよかったんじゃないかな。

ミサキ様に、「貴方の妻だと紹介してくれないの?」と拗ねたように言われて、慌てて表情を引き締めていた。


最奥に設置された玉座の前まで二人並んで歩き、一段上がって振り返った魔王様は、集まった魔族たちを静かに見渡した。

「ここに、シュヴァンダル・セレスリーアの唯一の妃にして最愛の妻である、エバー王国の王女の披露目を開催する」

ミサキ様の手をすくい取り、その指先にそっと魔王様が口づける。ざわり、と会場の空気が揺れた。

「ユーティリア・ヴィ・エバーレンチェルに、人族の言葉で『美しく咲き誇る』を意味するミサキの名を贈る。これより、我が王妃はユーティリア・ミサキ・セレスリーアを名乗ることとなる」

魔王様に優しく見つめられて、ミサキ様が頷いて微笑んだ。その表情に、また少し場がざわめく。

「ユーティリア・ミサキ・セレスリーアとして、シュヴァンダル・セレスリーア陛下の隣に立ち、魔族と人族の友好の証として務めを果たして参りたいと存じます」

その場で跪いたミサキ様の頭上に、魔王様の手で王妃の冠が乗せられた。

立ち上がったミサキ様が、ゆっくりと会場に視線を移す。

黒曜の瞳で見つめられて頬を染める魔族たちに、魔王様が威嚇の視線を投げている。大人げない。

「これより、宴に移る。我が王妃の美しさ聡明さと、セレスリーアの明るい未来に乾杯し、幸福の美酒に酔うがいい」

おおぉーっと歓声が答えた。


無礼講となった宴は朝まで続き、お披露目の余韻で一週間ほどは国中がお祭り騒ぎに浮かれる。

そんな喧騒をさっさと抜け出して、魔王様がミサキ様と寝室へ入られた。

藍色のドレスを身に纏ったジフジ様が、カイダル様の逞しい腕に手を添えながら、微笑んで見送っていた。

夜のお支度のために控えていたメイドたちを、魔王様が追い出す。お披露目の夜は特別誂えの夜着が用意してあったのに、お召し替えの時間すら待てないというように魔王様がミサキ様を抱きしめている。

呆れたように笑うミサキ様が、魔王様の腕の中で頬を染めて囁いた。

「ね、シュヴァンダル。あたし、貴方を愛しているわ」

「っ!!」

「最初はね、こんなワケのわからないところで目が覚めて、あぁ、悪夢を見てるんだって思ってたの」

魔王様の腕に手を添わせながら、ミサキ様が続ける。

「魔法なんて、角の生えた魔族なんて、そんなのあたしがいたところにはなかったから」

「……」

「夢なら早く覚めてって、そればっかり考えてた」

腕の中で、ミサキ様が魔王様を見上げた。濡れた瞳が、細められる。

「でも、貴方が優しくしてくれて。ジフジちゃんやリカちゃんっていうお友達もできて」

「……」

僕は侍従なんだけど……。

「あたし、ここで生きていけるかもしれないって思った」

「ミサキ」

「恋なんてするのは怖かった。突然ここに来たのなら、また突然いなくなるかもしれない」

ミサキ様を抱く魔王様の腕に力が入ったのがわかる。

「それでも、ここで貴方の傍にいたいって、自然にそう思うようになったわ」

ふふっと笑って、ミサキ様が目を閉じる。

「死んで生まれ変わるってよく言うけど。本当にそうなるなんて思わなかった」

「元の体に、戻りたいか……?」

魔王様の言葉に目を開けたミサキ様が、いいえと首を横に振る。

「薄情なのかもしれないけど、子供のことを忘れてこちらで過ごすなんて、無責任だって叱られるかもしれないけど。でも、あたしにできる精一杯で愛を伝えてきた」

「……」

「思い出して泣くこともあるかもしれない。でもその時は、シュヴァンダルが慰めてくれるでしょう?」

「当然だ」

ミサキ様が嬉しそうに笑った。

「だから、あたしはここで、貴方の傍で生きていこうって思えた。あたしをあたしとして見てくれた、愛する貴方の傍で」

ミサキ様の手が、魔王様の頬に伸ばされる。

「不束者ですが、これからも、よろしくお願いします」

ミサキ様の言葉が終わるのを待ちきれないというように、魔王様が深く口づけた。


ご夫婦の秘めた会話を聞いてしまった僕は、必死に存在感を消して寝室から外へ出た。

魔王様が許されたということは、ここまでは聞いても大丈夫な話だったはずだ。消し炭にされなくてよかった。

きっちり扉を閉めて、待機するために隣の小部屋へ移った。

これからのセレスリーアでは、魔王様の横に美しく聡明なミサキ様が並び立たれる。

時に「オカン」としてたくましく動き回り、魔王様を振り回すミサキ様が、国中を明るく照らしてくださるだろう。

生涯お仕えしたいと心から願う、最強で最高の、魔王様のお嫁様だった。


end.




最後までお読みいただき、ありがとうございました。



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