希望と絶望と希望
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アルプスは大急ぎで町に戻った。
喜びの元に集まる精霊たちの方向へ走り、この時代では珍しいくらいの良いことが起きているんだと期待に胸を膨らませる。
その中心地は町の広場だった。
人々が集まり、何かに大喜びしている。
そこに姉のクララもいて、感動にむせび泣いていた。
鬱ぎ込んでいたクララがここまで喜んでいるとは、きっと何かすごい奇跡でも起きたのだろう。
アルプスも自然と笑顔になって、クララに話しかけた。
「お姉ちゃん、何があったの?」
「アルプス……聞いてよ……奇跡が起きたの……。マルコとイザベラが帰ってきたの!!」
「……え?」
マルコとイザベルは死んだはずだ。
クララと一緒に戦って、トンボ型のモンスターに真っ二つにされていた。
その無残な死体も、そのまま土に埋葬されるところも見た。
クララが指差す先――そこにはたしかにマルコとイザベラが笑顔で立って、人々に手を振っていた。
「なんで……」
二人だけではない、死んだはずの見覚えある冒険者たちも大勢いる。
「夫が帰ってきたわ!!」
「やっぱりお前が死んだなんて嘘だったんだ!!」
「おぉ……神よ感謝します……」
各自の思い人たちが黄泉の国から戻ってきて、大喜びする民衆たちには良い感情を好む精霊たちが近付いてきているのが精霊眼で見えた。
しかし、同時に黄泉の国から戻ってきた者たちには――良くないモノを好む精霊たちが群がっていたのだ。
死体に群がるハエのように、大量に。
精霊眼の力を使って注視すると、生者では無く、腐りかけの死体が歩いていた。
「うっ」
あまりの陰惨すぎる光景にアルプスは吐き気を覚えてしまう。
誰も気が付いていないが、臭いも酷い。
それらの奥にいるのは、魔術師の格好をした骨――モンスターであるリッチだ。
その存在に対しても、不思議と誰も気付いていない。
「おや、アナタには見えてしまうのですか?」
突然、横から男が話しかけてきた。
背の高い美丈夫だが、身体中に縫い跡がある。
「おっと、吾輩を不審者とお思いか? その通り! 吾輩の名前はディストール・ツィオーネっ! 不死魔国からの使者でございます」
男――ディストールは帽子扱うが如く首を取り外してから、優雅にお辞儀をしてきた。
外見はフランケンシュタインのようだが、貴族のような仕草だ。
アルプスは絞り出すような声で問い掛けた。
「こんな酷いこと……何が目的なのよ……」
「何と言われましても? 吾輩はただ、愛しき人間たちの、一番愛しい瞬間を見たいだけでございます」
「何を言って……」
「人間という美しいモノが、物理的にも、精神的にも壊れる瞬間が最大級に美しい。ぜんっぜん死なないアンデッドだらけの不死魔国では楽しめない愉悦ですよ」
「趣味が悪すぎる……」
「おぉ、正しき美しい心の持ち主よ、あなたと出会えたことを光栄に思います」
アルプスは、このディストールと話していても無駄だと察した。
今はこの場からみんなを避難させなければならない。
「みんな! 聞いて!! ここにいるのは死者たち!! 本当はただの死体なの!!」
アルプスが大声で注意を促すと、一斉に住人たちの視線が向いた。
グリンッと首が動き、異物を睨み付けるような虚ろな眼。
「何を言っているんだ」
「みんな生きて帰ってきた」
「そんなに死んだことにしたいのか」
「お前の方がおかしい」
「アルプス、あなた何か変よ……?」
実の姉まで正気ではないのか、疑いの目を向けてきている。
アルプスは動揺してしまう。
「み、見えるの私には!! だから本当にモンスターが――」
横にいたディストールは、極上の獲物を見つけたかのように無邪気な笑顔を見せた。
そして、アルプスの顔半分を覆っていたローブを取り去った。
「あっ」
「見てください、この少女の眼!! こんな眼の人間は見たことが無い!! 不気味に輝いている!! こちらの少女の方こそ、真のモンスターなのではないでしょうか!?」
「ち、ちがっ」
住人たちの眼は蔑みに変わった。
「人間に化けたモンスターめ」「オレたちを騙そうとした」「不気味な眼」「悪いモンスター」「早く誰か殺せ」「その眼をえぐり出せ」「骨を折れ」「磔にしろ」「脚をノコギリで」「腕を犬に食わせろ」「首を引っこ抜け」「燃やせ」「殺せ」「ちぎれ」「斬れ」「潰せ」
悪意ある言葉。
殺意だけの言葉。
「いや、止めて……そんなこと言わないで……。文字からなる言葉というのは、もっと綺麗で……」
迫り来る民衆を前に腰を抜かして倒れ込んで動けないアルプス、その横でディストールが耳元で楽しそうに囁く。
「現実は本のように美しくありませんからねぇ。それゆえに、美しくないからこそ吾輩的には、美しい光景が見られるということです。一緒に楽しみましょうよ、極上のリアルを……」
上機嫌のディストールだったが、この世界では珍しい懐中時計を取り出して残念そうにした。
「……おっと、もう私は行かなければなりません。本当は最後までこの最高の光景を見ていたかったのですが……。さようならですよ、アルプスさん。そして愛すべき人類」
ディストールは数歩進むと霧のように消えてしまった。
残されたのはアルプスと、そこに殺意を向けている民衆たちだ。
伸びてくる手、ナイフ、ノコギリ、包丁。
アルプスは現実に絶望し、その虹色の精霊眼から光が消えそうになったが――。
「えっ?」
身体がフワッとしたと思ったら、宙に浮いていた。
いや、正確には後ろから抱き締められて、空を飛んで連れ去られていたのだ。
「お婆ちゃんが言っていました。『多勢に無勢は良くない』って」
「ウリエルさん!?」
面白い!
続きが気になる……。
作者がんばれー。
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<(_ _)>ぺこり




