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慟哭の時  作者: レクフル
第3章

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束の間の幸せ


あまりの事に、オルグは口を開けたまま、暫く何も言えずにいた。


「ルキスを知っていたのか?」


「幼い頃から、何度か見ていてな。アシュレイの精霊だったとは…」


「それは精霊と契約できる腕輪だったんだな。」


腕輪を見てディルクに聞いてみる。


「その様だな。」


「なぜ弟を連れ去った女がそれをディルクに…?」


「分からないが…この腕輪をつけられた事が、果たして良かったのか悪かったのかって事だな……」


「そうだな…」


「俺はディルクに見つけて貰えたから、アッシュを助けられたぞ!」


「ハハ、そうだな、レクス。それならあって良かったんだな!」


「そうだぞ!」


「凄まじい精霊の力でしたな…あの、すまんが、確認させて欲しいんですが……」


「はい、オルグ。」


「もう村は大丈夫と言うことでいいんでしょうか?」


「あぁ、大丈夫です。この森に入った余所者は、まず森の精霊たちによって惑わされる。それから、闇の精霊の力によって、この森自体が恐怖の対象となる。それでも突き進むなら、その者は数日間の記憶を奪われ、空間の精霊の力によって、全く別の場所へ飛ばされる事になる。しかし、村人や村人と共にいる者は問題なく森を歩けます。」


「あ、ありがとうございます!完璧です!もう何も怖いものはありません!!」


「ただ、今回の様に誰かが村を飛び出して、外に出るとなれば、それは防ぎようはありません。」


「いや、それは仕方のないことです!何も問題ありません!本当にありがとうございます!早速村の皆にも伝えます!あ、貴方達はまだ何処にも行かないで下さいよ!」


「あ、はい、分かりました。」


「じゃあ、俺達も村に一旦戻るか!って言っても、俺何にもしてないけどな!」


「レクスがいてくれるだけで、私は安心するよ。」


レクスに微笑んでそう伝える。


レクスは照れくさそうに笑う。




「アシュリー?」


ディルクがわたしの顔を覗き込む様にして聞く。


「え?あ、あぁ、私は本当はアシュリーって言うんだ。」


「そうだったのか。では、俺はこれからアシュリーって呼ぶぞ?」


その言葉に胸の鼓動が飛び上がる。


「そ、それは構わないが…私は自分を男だと装っている。今回、セルジの事もあったから、やはり女と知られない様にしなくてはいけないと思っているから……」


「セルジには何故女と知られた?」


「それはマリーがアッシュと結婚するって言ったからだぞ!」


「レクスっ!」


「だから、仕方なく女であることを言ったんだよな?アッシュ!」


「レクスの言う通りだ……」


「マリーは信じないって言うから、マリーと、マリーの母ちゃんとアッシュで温泉に行って確認して来るって。帰ってきたアッシュの女の子の姿を見てセルジが固まってたから、そん時に目をつけられたんだ!」


「いや、違うんだディルク、私の瞳には光と闇の魔力が合わさって、勝手に瞳に魅了の付与がかかっているんだ。なるべく制御はしているが、まだちゃんと制御が出来ていないようで、セルジはそれにあてられてしまったんだ。」


「でも女の子のアッシュは、スッゲー可愛くて、スッゲー綺麗だったんだぞ!」


「レ、レクス!」


「魅了が付与されているのか?」


そう言って、マジマジと私の瞳を覗き込む。


恥ずかしい!


私をじっと見つめるディルク。


心臓が煩い!


「綺麗な瞳をしてるな…けど、魅了の効果は出てないようだぞ?」


「そうなのか?私、ちゃんと制御できてたのかな…?」


「アシュリー。」


「え、あ、はい!」


「もう誰の前でも、女の姿をしない方がいい。」


「あ、うん、それは私も分かっている。」


「いや…違うな……」


「え?なにが?」


「悪い、何でもない。気にしないでくれ。」


そう言って後ろを向いて、頭を片手でワシャワシャしだした。


「ディルク、なに言ってるんだ?!」


レクスがディルクに問いただす様に聞く。


「いや、まだまだ俺もなってないな、と思ってな……」


「ん?どう言う事か分かんないぞ?」


「ディルク?」


私もよく分からなくて、ディルクの方を見る。


ディルクがレクスを見て


「レクスとセルジが羨ましいって思っちまったんだよ!」


「えっ!?」


何が羨ましいと思ったのか、さっぱり分からない。


「くそ、アイツ、一発くらい殴ってやりゃ良かったっ!」


「ディルク、どうしたんだ?!」


「アハハハハ!そっか、ディルクは焼きもちを焼いたんだな!」


「うるさいぞ!レクス!」


「え?!何?どういう事?レクス?!」


「それはー…」


「こらっ!レクス、言うな!」


2人で何やら追いかけっこみたいにはしゃぎ出した。


何やってんだか……と思いながら、それを木に寄り掛かりながら見ている自分に幸せを感じている。


追いかけられたレクスが笑って、フッと消えて何処かへ行った。


ブツブツ言いながら、ディルクが私の所まで戻ってきた。


「アシュリー。」


「あ、はい。」


まだその名前で呼ばれ慣れてなくて、つい真面目に答えてしまう。


「俺はアシュリーと今は一緒に旅は出来ないが…」


「…うん。」


「また会いたいと思っている。」


「ディルク、それは、私も……でも……」


「あぁ、別々に旅をする者同士、また会う事が出来る事は殆どない。今回会えたのが奇跡みたいなものだ。」


「そう、だな…」


「これを受け取ってくれるか?」


そう言って、ディルクは首飾りを取り出した。


「それは?」


「この首飾りは対になっている。離れると呼び合うんだ。もし俺に会いたくなったら、この首飾りの先についている石を握りしめて、俺を想ってくれないだろうか。」


「ディルク……」


「俺はいつでもアシュリーに会えるように想うよ。」


「…分かった。」


そう言うと、ディルクが首飾りを私につける為に手を首の後ろに回す。


まるで抱き締められそうな感じになって、身動きが取れなくなる。


木を背にしたまま、ただじっとしていた。


それからディルクの手が、私の頬に添えられた。



「俺の事は怖くないか?」



優しくディルクが聞いてくる。



「うん…ディルクなら大丈夫……」



優しく微笑んでから、ディルクの顔が近づいてくる。



そっと私は目を閉じた……

 








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