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大木に付いている扉を開くと5年前にも来た白い部屋にママと、髪が白と黒に分かれていて、顔の半分が包帯に巻かれている男の人が待っていた。
「ママ!」
「おかえりなさい」
寂しくはなかったけど、会えるのは嬉しい。ママに抱きつこうと走ったけど男の人が手を出して止めてきた。
「はじめまして、帰る前に検査だけ受けてもらいたいんだ」
「検査?」
「ああ構わないかな? すぐに済むよ」
「検査を受けるから、お願い聞いてくれる?」
なんの検査か分からないのを受けてあげるんだからお願いも聞いて欲しい。
言ってみたら男の人は片方しか見えない口の端っこを上げて笑ってくれた。
「ああ、分かった。私に聞けることならね」
ママには外で待ってもらうことになってあたしは検査室に行く。
検査室は白い部屋のすぐ隣で、そこも白かったから、ここはすごく白が好きな所なんだねきっと。
「では検査を始めるよ」
検査と言ってもあたしは何もしないでただベッドに寝てるだけ。
男の人が機械を弄ると白い部屋が青になったり赤になったりする。
その間男の人は書き物をしていて、検査はほんの少しの時間で終わった。
「ねえおじさんは、ここの偉い人?」
「まあ少しは偉いかな。ああ、お願い事があるんだったね」
検査室を出て外に出る扉の前で男の人に確認してみたらすぐに分かってくれた。
「それで、お願いごとは何かな?」
「アーベントとノイテをね外に出してあげてほしいの!」
「あーべんと、のいて? 外に?」
知らないんだ二人のこと。二人はここの人たちのこと怖がってたりしてたのに。
まあでも、知らないんだったら誰かに伝えてくれればいい。
「二人は大事な友だちだからね、また会いたいの!」
「すぐには無理じゃないかな」
「すぐじゃなくてもいいよ!」
「ふむ……その間に二人のことを忘れていくかもしれないのに?」
そんなに待たされるの? それじゃあ……
『それじゃあ、あたしが二人を外に出してあげる!』
だめだめ。二人に勝手に約束したのはあたしだもん。
「忘れてもきっと思い出せるから大丈夫」
特別で、大切な二人のことをそんな簡単に忘れられるわけがない。
もし忘れても……思い出せるよね。きっと。
「そうか。わかった。ほかでもない君からのお願いだ。なるべく早く、二人を外に出すことを約束するよ」
「ありがとう!」
男の人にお礼を言って外に出ると前のほうでママがわたしを待ってくれている。ママの所まで行く前にもう一度だけ大きな建物を振り返った。
長い時間を過ごした大切な友達に
「だいすきだよ」
聞こえることはないと思うけど言い残しておきたかった。
それからすぐにアーベントの手でも、ノイテの手でもない。ママの手を握ってあたしは町に帰ろうとしたその時、朱い羽が舞い降りて、藍色の羽が落ちてきた。




