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3

「……」


 何で、ノイテが泣きそうになってるの。


 泣きたいのはあたしだよ。どうしてって聞きたいのに。


「……っは」


 息をするのに必死で声が出せない。そうしてる間にもノイテはあたしから遠くなっていく。


 待って、待ってよ!


 逃げようとするノイテの服を出せる力を目一杯使って掴む。


「なんだよ! 帰りかたなら分かるだろ!」


 ゆっくり息をしたら、だんだんと息ができるようになってくる。


「わか、ない……」


 でも話すのはまだ難しい。


 もう少し、もう少し。


「来た道を戻るだ……」

「わからない!」

「は?」


 あ、声が出るようになった。


 普通に息ができるあたしを見てノイテが驚いて見てる。


 けど息ができるできないなんてどうでもよかった。


 服を掴む手を離してもう逃げてほしくないからノイテの手を握った。


「なんでノイテが泣きそうになるのか分からない! あたしが何かしたの?」

「オマエは何もしてないよ。ていうかオレのこと怖いだろ? あんま近づかないほうが……」


 ノイテは何を言ってるんだろう。


 怖がったのはノイテであたしは近づきたいのに


 ノイテは分かってないのかな。あたしの握ってる手のこと。


「あたし、ノイテのこと怖くないよ。ノイテがあたしを怖がったんじゃない」

「オレがいつ……」

「手がふるえてる」


 あたしが手を握ったときからずっと震えるノイテの手。


 何が怖いんだろう。あたしみたいに一人になることが怖いのかな。


 それだったら


「大丈夫だよ」

「何が」

「あたしはノイテを一人にしない。ごめんまちがえた。できない」

「何が、言いたいんだよ」


 あたしがしないんじゃなくて、あたしはできないんだ。


 ノイテを一人にしたら、あたしも一人になる。


「ノイテが一人で帰ったら、あたしは一人で帰れない」

「だから、来た道を……」

「来た道を戻るだけだけど、来た道なんて憶えてない。あたしにはノイテが必要なんだよ」

「オマエ……」


 恥ずかしいけど本当のことだった。今だけじゃない。


 昨日泣いている時にノイテを見つけた時から、ノイテはあたしにとって必要な人になったんだ。


「オレにもオマエが……ソリスが必要かもな」


 あれ、ノイテが名前呼んでくれた。


 それに必要って……嬉しい。


「いじめがいのある奴はいなきゃダメだよな」

「嬉しくない」


 やっぱりノイテはノイテみたい。


 だけど、笑顔になってくれたからいいかな。



★



 それから手を繋いだまま来た道を戻って家に着いた。

家に入ったらアーベントが夕食を作って待ってくれていて。





「おかえり」

「は?」

「は? って何? ソリス、おかえり」

「ただいま!」

「こうだよノイテ」

「……は?」



 上機嫌なアーベントに驚いてるノイテ。


 アーベントはノイテにただいまを言わせるまでご飯を抜きにしていた。


 照れてるノイテは見ていておかしかった。




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