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5話 夜の花畑

翌日


「ねえねえ森の奥には何があると思う!?」

「何もない」

「あるよー!」

「しんどくなる道だけがあるんだよ」

「そんなことないよねアーベント」

「それを探しに行くんだろう? 迷子にならないようにね」


 アーベントに頭を撫でられて気持ち良くなってたらノイテが先に外に出ていた。


「待ってよノイテ!」

「……変だな」

「何が?」


 ノイテは空を見上げてぽつりと呟いていた。あたしも空を見るけど何もおかしなところはない。


 あ、そういえばとノイテはずっと雷が落ちるって言ってたからそのことをまだ気にしてるのかな。


「昨日も雷なんかなかったよ? こんなにいいお天気に雷なんて落ちないよ」

「……今はな。ほら行くぞ」

「わ、待ってよ!」


 むすっとしてる顔をそっぽに向けてノイテが先に森のほうに歩いて行く。


 なんだろう、わがまま王子様みたいに見える。


 そんなことを考えながらノイテの後ろについて歩いて行く。森の奥には何があるのかうきうきしてた。


 だけど、森に入ったらうきうきしてた気分はどっかにいった。


「ノイテ、待って、わわっ!」


 ノイテはすんなり進んでいるけど、あたしは違って草が絡まったりして転びそうになる。


 最初は気にしなかったけど、進んでいくうちにその回数も増えてきて嫌になってきた。


「早く来いよ」

「行きたいけど、わっ!」


 走ろうとしたら転んでしまった。


 うぶって変な声も出て顔が痛い。


 どうしよう、痛くて涙が……


「っ……くくっ、何してんだよ」

「え?」


 ノイテの声が上から聞こえてきて顔を上げると


「はは、っへんな、かお」

「のいて……」


 ノイテが笑ってた。


 むすっとした顔じゃなくて、アーベントみたいに優しい笑顔でもなくて、本当に楽しそうに笑ってた。


「ほら、手」

「あ、ありがとう」


 笑顔のノイテを見ていたら涙なんて引っ込んでいて、手を繋いでノイテが立ち上がらせてくれる。


「ノイテって笑えるんだね」

「……別に笑ってない」


 笑えることをバカにしたわけじゃないのにノイテはむすっとした顔に戻ってまた先に行ってしまう。


 笑ってたほうが楽しいのに。


「ノイテ、あたしバカにしたわけじゃ……わっ!」


 また笑顔になってほしくて追いかけようとしたらまた転んでしまう。


 二回も転んだら笑うよりも怒られちゃうよね。


「っ、ごめ」


 今度は自分で立ち上がる。


 謝ろうとしたらノイテは顔に手を当ててぴくぴく震えてた。


「のい……」

「っくくく、笑かすなって、っははは! そんな顔で見るなよ、土が、っくく、付いてる」


 ノイテはまた笑ってくれた。それに今度は自分で笑ってるって言った。


 それよりもどこに土が付いたんだろう。


「ここ」


 土の付いてそうな服をごしごししていたらノイテはあたしのほっぺたをごしごし擦ってきた。


 顔に付いてたんだ。


 その後も何度か転んで、そのたびにノイテが笑う。最初は笑ってくれるのが嬉しかったけど、何回も笑われたら悔しくなってきた。


「もう、転びそうになったら助けてよ」

「転んだほうが面白いだろ」

「じゃああたしもノイテのこと助けないよ」

「オレはオマエみたいに転ばないから大丈夫だよ」


 でもね、ノイテ。


 あたしのほうを向きながら歩いているから木とぶつかりそうになってるんだよ。

気づくのかな。


「痛いんだよ」

「オレは痛くな……だっ!」

「あはははは!」


 気づかなかった。


 ノイテは後ろにあった木にぶつかって頭を押さえていて、それがとても面白い。


「ってぇ……オマエな、言えよ」

「助けないって言ったもん。痛い?」

「痛くないわけがない」

「じゃあ助けてくれる?」


 ノイテに手を出してみる。


「そうだな、助け合いだな」


 ノイテはあたしの手を握ってくれた。その手はあたしより少しだけ冷たかった。

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