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五話 光と闇はバリューセット

おはよう、こんにちは、こんばんは、猫屋です。

引き続き、読んでくださりありがとうございます。


今回は熱いターン?熱いのか?どうなんでしょう。


それでは、どうぞお楽しみください。

悪神教団の絶対なる教義。

オスナの託宣。


闇は必要です。

闇があるから光が愛おしくなるのです。


光は必要です。

光があるから闇が恐ろしくなるのです。


己の闇を認め、飼い馴らしなさい。

己に光を見つけ、大切にしなさい。


闇を受け入れ、光を手に入れた時、あなたは更なる高みへと至るでしょう。



※尚、女神オスナは責任を負いません。全て自己責任でお願いします。


~~


葛谷はゲドー商会と旅路を共にしていた。

葛谷はクサレの話を聴きながら、ゆったり荷車を引いている。

エインフェリアから手伝いの申し出があったが、護衛の仕事を邪魔したくないので断った。

クサレは馬車のペースを合わせて葛谷の旅に同行してくれている。

馬車の後ろには捕縛された賊徒らが繋がれており、暗い表情で歩いていた。

賊徒がすぐ傍にいるというのは、どうにも落ち着かない。


囚われた賊徒の先行きが良いはずもなく、歩みはノロノロと遅い。

今はまだ大丈夫そうだが、隊列に賊徒がいるとエインフェリアたちも警護に専念できないだろう。

葛谷は戦闘後に吐いてしまった自分への配慮なんだろうな、と思った。


「奴隷といいましても色々ありましてな、

 私どもが取り扱っておりますのは合法の福祉奴隷というものなのですよ。

 主に借金などで食うに困った者たちが対象となっておりまして、負債を完済すれば解放される仕組みとなっております。

 私どもはその奉仕先の斡旋や仲介を取り扱っておるのです。

 クーヤ殿ならば心配ないでしょうが念のため。

 奴隷にも自由と権利がありますので、何をさせてもいいわけではございませんよ。

 また、服役奴隷という者たちもおりますが、こちらは私どもでは取り扱っておりません。

 主に犯罪を犯し刑罰として奴隷に落とされた者たちですな。元が犯罪者ですので買い手がつきにくいのです」


葛谷は、サリーさんよくしゃべるなぁと思いながらも、しっかりと聴いている。

実際にクサレが話し聴かせてくれる内容はどれも貴重な情報。

異世界初心者である葛谷にとって、これらの情報は万金の価値があるのだ。


「私どもは盗品も扱ってはおりますが、こちらは慈善事業に近いものですな。

 闇市場から流れてきた盗品を元の持ち主に適正価格で返還させていただいております。

 盗まれたものは返って来ないのが普通ですから、なかなか評判はよろしいのですよ。

 もちろん、盗品を追うのは大変ですので手数料はいただきますが」


葛谷を顧客だと見定めたクサレは、自分の商売について懇切丁寧に説明してくれる。

自分で印象を下げておいて自分で持ち上げる。誰も傷つけない、嘘の無いセールストーク。

葛谷はこの人もプロなんだなぁと思った。


「禁制品に関しては国や地域によりますな。各地の法に合わせて商売をさせていただいております。

 もしも、法に触れるような物を手にしてしまった場合には私どもに是非ご相談くだされ。

 手数料はいただきますが、適切に処分させていただきますぞ」


クサレが聞かれてもいない情報をベラベラと話すのにも理由がある。

印象を下げたままでは今後の関係に陰りが出るだろう。

葛谷との関係はこれからも続く。商人の直感がそう告げているのだ。


クサレのセールストークに区切りがついた頃合いで、葛谷は気になっていたことを尋ねる。


「サリーさんは、俺の使ってた炎のことを何も聞かないんですか?」


クサレはきょとんとした顔で答える。


「…そうですな。気にならぬと言えば嘘になります。

 しかし、クーヤ殿がその力を私どもに向けるつもりがないことを確認できましたので、深くは聞きません。

 手の内は隠しておくものですぞ。必要になった時に話せばよいのです。

 知ってしまえば、知らなかった頃には戻れないのですよ。知らせぬことも優しさ、だと思いますぞ」


~~


葛谷たちが道を進んでいると、再び事件はやって来た。

葛谷は思った。この道どうなってんだよ、と。


道を塞ぐように集団同士がぶつかり合っていた。

一方は黒いローブをまとい、木の杖を身を守るように構えている。

一方は白い鎧を身に付け、相手に抜き身の剣を突き付けている。


葛谷たちは距離を置いて立ち止まった。

エインフェリアが指示を出し、護衛たちが守りを固める。

賊徒らを地面に伏せさせ、見張る。


二つの集団を見てクサレが説明してくれた。


「あれは…悪神教徒(あくしんきょうと)と崇光騎士団(すうこうきしだん)の連中ですな。

 彼らのこういった風景は見慣れたものではありますが、往来では少々邪魔ですなぁ。

 …クーヤ殿は知らぬご様子ですな、説明いたしましょう。

 黒いローブの方々は悪神教の信徒たちですな。彼らは悪神の一柱、オスナの信仰者のようです。

 簡単に言えば心の闇と戦いながら光を探し求める…言わば『自分探し集団』です。

 白い鎧の方々は騎士団を自称しておりますが、実態は女神信徒を装った破落戸(ごろつき)ですな。

 女神の教えを都合よく抜き出し恐喝されるので私どもの困り事にもなっておりますよ。

 特に『ゲドー商会』を名乗っている私どもにとっては厄介な者たちです。ユーモアに欠けております。

 彼らには商人や異教徒が恰好の獲物に見えるのでしょうねぇ」


~~


悪神教団。

その名の通り、悪神と呼ばれる女神を信仰する教徒たちが集まる組織である。

悪神とは呼ばれているが、女神であることは変わりなく、

その権能は不可欠なものでもあり、悪い面ばかりではなく良い面も多く持っている。

例えば、葛谷たちが遭遇した彼らの信仰対象、享楽の女神オスナ・オスナ。

かの女神は享楽すなわち遊びへの誘惑という表の性質を司ると共に、その裏となる笑いと幸福も司っている。

限りある人の生を存分に楽しむことを許し、信仰者の悲しみや不幸を退けてくれるという。

また、女神の中で唯一、自身の名を略して呼ぶことを許した、大変フランクな女神でもあった。

彼女は、チューニ病患者や創造を愛するクリエイター、コレクターなど庶民貴族問わず多くの人々から熱烈な信仰を集めている。

余談であるが、毎年二回オスナ教徒が中心となって開催するドージン祭りは全国から人々が集まる大人気のイベントだ。


~~


オスナ教徒の一派『夢追い同志会』の代表を務める女の名は、オレハ・マオウ。

彼女とその仲間たちは今、苦境に立たされていた。


立ち塞がる白い鎧の騎士たち。

先頭に立つ男が一歩前に出てくる。

腰の鞘から剣を抜き放ち、その切っ先がオスナ教徒たちへと向けられた。


「我らは崇光騎士団!三柱の女神の忠実なる僕(しもべ)である!

 私の名はユシア・タスケイル!

 そなたらは悪神教徒だな。怪しい装いをしている。

 この先へは何用で向かうのか、何かを企んでいるのではないか?答えよ!」


ユシアと名乗った騎士は自分に酔っているかのようにポーズを決める。

背後の騎士たちも彼に合わせるように思い思いのポーズを見せつけてきた。

オレハは思った。なんなのこの人たち。


「私はオレハといいます。オスナ教『夢追い同志会』の代表をさせていただいています。

 私たちは町を経由して王都へ向かっているところです。それではこれで…」


オレハたちは急ぎの用があったので手短に話し、彼らを迂回しようと動き出す。


「待て待て!何を急いでいる、本当に怪しいやつらだ。

 もっと詳しく話せ、町で悪さをされてはかなわんからな!」


決めポーズに満足した騎士たちは各々武器を収めようとしていたが、

ユシアたちは違和感を覚え、回り込んで引き止める。

もしや、本当に犯罪者を見つけてしまったのではないか。


逃げるような素振りを見せ始めるオスナ教徒。

実際には迂回しようとしていて、逃げるならば反転あるいは散開してもよいはず。

しかし、正義の執行というシチュエーションに浮かれた彼らは気付かない。


「騎士といえども私たちの行く手を阻む権利などありません!

 私たちに後ろ暗いことは…多少はありますし、

 やましいこと…も多少はありますし、

 悪いことは考えて…多少は考えてはいますが、けして悪人ではありません!女神オスナ様に誓います!」


悪神教徒の多くは自らの行いに対してはとてもストイックである。

良くも悪くも素直なのだ。

そして今回は悪い方向へと作用した。

享楽の女神は好奇の目でオスナ教徒たちを眺めていることだろう。


「おいおい、聞き間違いか?色々白状しちゃってるじゃないか!

 素直過ぎて怪しい、というかなんか怖い!あと、オスナ様は悪神ではないか、信用できんわ!」


ユシアたちは再び武器を抜き放つ。


「女神オスナ様はおっしゃった!闇を受け入れ、光を探し、高みを目指せと!

 私たちの邪魔をしないで!ホントに急いでるの!!」


オレハたちも杖を構える。

早く現地入りしたい。

ドージン祭りの下準備で忙しいのだ。


「思い出したぞ!

 オスナ教徒といえば、最近巷を荒らし回って民衆に被害を出してるらしいじゃないか!

 確か…『厄介悪徒』とか呼ばれていたな!お前たちのことではあるまいな!?」


騎士の一人が発した言葉がオレハたちの逆鱗に触れる。


「奴らはオスナ教徒ではないっ!!

 聞き捨てならない!あんな奴らと一緒にするな!

 私たちは他者に迷惑をかけないっ!」


双方が睨み合い、一触即発の空気が流れ始めた。


~~


葛谷たちはタイミングが良いのか悪いのか。

図らずも、この悪神教徒と崇光騎士団のやりとりを始まりから鑑賞することとなった。

遭遇したこと自体は悪いのだが、事情を知るには絶妙ではある。


「サリーさんの話にあった自称騎士の人たち、思ってたよりは悪質ではなさそうですね。

 思い込みや偏見が過ぎるようには感じますけど」


葛谷の感想を聴き、クサレは言葉を返す。


「そうですな。私の言葉が過ぎましたな。彼らにも色々とおるのでしょう。

 しかし、その『自称騎士』というのが問題なのですよ。そして何より『見る目』が欠けている。

 彼らは騎士を名乗りながら、人を見ておりません。『自身の姿を見せる』ことが第一目的なのです」


葛谷はうなずく。レイヤーみたいなもんか。


「それから『夢追い同志会』の人たち。なんか謎の親近感がありますね。

 悪くない人たちなのは確かなんでしょうが、言葉が色々と足りていない気がします」


クサレは擁護するように解説する。


「そうですな。彼らの活動は私どもも僅かばかりですが支援させていただいております。

 彼らの創作物は人々に活力を与えてくれますぞ。なんとなくですがクーヤ殿にも似た匂いを感じますな。

 そろそろドージン祭りの時期ですからな。彼らも気が立っておるのでしょう」


悪神教徒と崇光騎士団、双方の間に緊迫した空気が流れ始める。

葛谷は思った。まだまだ話はこじれそうだな、と。


自分たちは足止めされている。

悪神教徒は焦って余計に怪しいし、自称騎士団は正義に酔っていて『見えてない』。

ちらりと捕縛された賊徒の方を見る。あれもどうにかしたい。


「サリーさん、ちょっといいですか?こんな提案があるんですが…」


葛谷は思いつきをクサレに相談してみることにした。


~~


一触即発な両者の間に葛谷は割って入る。

あえて空気は読まない。


「あー、取り込み中のところをすみません。道を通りたいのですが…」


揉めていた両者の空気が止まった。

葛谷は自称騎士団に聞こえるように、やや大げさに言葉を続ける。


「…おや、もしやオスナ教徒の方ですか?そろそろドージン祭りの時期ですねぇ、いつも楽しみにしています!」


急に話を振られたオレハは、こんな空気の中でよく割って入れるなと思った。

気持ち的に余裕は無いが、祭りのファンに変な対応は取れない。


「…う、うん。ありがとう」


ちらりと様子を盗み見れば、察したらしいユシアが気まずそうな表情を浮かべていた。

このオスナ教徒たちが無害であるらしいことが伝わったらしい。


これなら…いける。


「やや!こちらは騎士の皆さんですか?!」


葛谷はユシアたちへと向きを変え話しかける。


「…う、うむ。いかにも」


ユシアも戸惑いつつも、一般市民らしき男(葛谷)に対して迂闊な言動を取れない。

騎士らしく応じてくれる。


葛谷は畳み掛ける。


「丁度良いところでした!実は道中、『盗賊』に襲われまして…」


「なに!『盗賊』だと?!」


野盗というワードに食い気味に反応を見せるユシア。


「はい!幸い返り討ったはいいのですが、

 このように引き連れている状態でして…歩みを妨げられて困っているんですよ」


合図を出すとクサレ一行が賊徒を引き連れて来てくれる。


「貴様、女神シラン・ケド様のお言葉を忘れたのか?!」


葛谷たちの行動が気に障ったらしい。

それまでの自称騎士団な雰囲気が変わり、葛谷を睨みつけた。

葛谷の頬を冷たい汗が伝う。


「殺せばいいだろう。盗賊は殺せ、そうしなかったのは何故だ?何故生かしている?

 更生を期待しているのか?こいつらに恩情を掛けて市民に被害が出たらどう責任を取るのだ?

 盗賊は殺せ。慈悲をかけるな。これは迷いを無くすための女神様の愛だ。決して忘れるな!!」


ユシアの目から光が消えている。

背後に控える自称騎士団の面々も表情が消え、冷徹な眼差しを葛谷へと向けている。


えー、この人らってただの破落戸(ごろつき)じゃなかったの。

狂信的な雰囲気あるんだけど。

葛谷は気付かないふりをして言葉を続ける。


「奴隷に落とすつもりで引き連れて来たんですが、

 生かして捕らえてしまった手前、いざとなると気が進まず…」


「何をやってるんだ!盗賊はすぐに殺せ!いや、いい、我らが引き受けよう。引き渡せ!

 悪神教徒ども、今回は見逃してやる。去るといい」


ユシアは郎党を引き連れてクサレ一行と野盗引き渡しの話を始めるようだ。

悪神教徒たちを一瞥し、離れていく。


野盗絶対許さないマンたちが纏う殺気に引く葛谷。


「…ありがとう、助かったよ。あのままでは私たちが死んでいたかも知れない」


オレハは葛谷に礼を言う。

礼を受け取り、一言だけ忠告をしておこうと思った。


「余計な世話かもしれないけど…

 最初に『何をしに行くのか』要点を話してしまった方が色々楽だと思うよ。

 例えば『ドージン祭りの準備があるので』とか」


ポリポリと頬をかきながら苦言を呈す葛谷にオレハは恥じる。


「あれ、言ってなかったっけ?しまったな。

 全くその通りだよ。急いていたとはいえ肝心なところが抜けてた。

 忠告痛み入るよ、ありがとう。道も塞いでしまってごめんね」


葛谷とオレハが話していると、野盗を引き渡して身軽になったクサレ一行がやって来た。

一行の背後で何やら野盗の命乞いと断末魔が聞こえる気がするが、葛谷は気付かなかったことにする。

気にした所で幸せにはなれない。

そして自分の精神衛生上もよろしくない。よし、聞こえない。よし、忘れた。


「お疲れ様でしたな、クーヤ殿。三方良しの見事な結果です。

 そちらは夢追い同志会の方々ですな?今期の祭りも楽しみにしておりますぞ。

 どうやらお急ぎの様子。幸いにも丁度身軽になりましたし、ご一緒されますかな?」


クサレがオレハたちと話し始める。


葛谷は思った。

この世界は命軽すぎる。

暮らしに困っても決して賊には落ちるまい。

お疲れ様です。

読了ありがとうございます。


満足いただけましたでしょうか。


盗賊が可哀そう?はい、そういう見方もありますね?

次はようやく町に到着です。新しい町では新しい出会いが…


ご感想やお気づきの点などがありましたら、どうぞコメントにて教えていただけると嬉しいです。


※本作は制作過程において、AIから文章の添削や創作上の助言を受けています。

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