第五章第二節
実は先週既に殆ど書きあがってたんですが、ちょっと書き換えたくなって更新が遅れました。
ちょっとストーリーを動かします。
「おーさむさむ。オイノモリ、アンタ寒かない?結構薄そうだけど、その上着」
「大丈夫ですよ、冬はこれより薄着でデモしたりしますし」
「あー見る見る。寒い冬もクソ暑い夏も白い制服で練り歩いてるよな」
ふと気づいたように龍飛崎が聞いた
「それにしても夏の炎天下やら冬の極寒でデモなんて日焼けや肌荒れの基じゃないか?痛くならない?」
「ちょっ…肌の色に関わる話をあんまり外で大声で話さないでくださいよ」
オイノモリが戸惑い、ソーシャル・ウォッチを覆った。
「気にしないさ、オイノモリが気にならないならね」
「僕は気にしませんけど、誰が聞いてるか分からないじゃないですか」
調査課や昇華課警備部が近くにいた日には自分は『団体』内で距離を置かれるのは勿論、最悪タツさんとの接触は禁止されるだろう。
「いちいち肌の色がどうとかは差別だの黒が黄色が、とか気にしてる奴は、ソイツ自身肌の色に偏見があるから気にするんだよ、ほっとけほっとけ」
笑い飛ばしてポケットに手を突っ込んで歩く龍飛崎を見て、タツさんは非進歩的というかモノの捉え方がそもそも『団体』と違うんだな、とオイノモリは思い、ため息をついた。
スーパーの中は暖房が効いていた。冷凍の品を冷やすときに発生する暖気を再利用する仕組みが開発されて以来、商業施設の消費電力量は年を追うごとに減っているらしい。
「そういえばオイノモリは何買うつもりでいたんだ?」
「野菜とか、合成肉ですね。あまり生鮮食品をオンライン上で注文する気になれなくて」
「今時スーパーで買うものなんてそのぐらいか。気持ちはわかるが」
「タツさんもデリバリーを?」
「大抵はね。せっかくだし果物でも買ってこうかな」
2台のオートカートが車輪の音をカラカラ響かせながら、入り口正面の少し早めのミカンの並ぶ棚で止まった。
「じゃ僕は先に精肉コーナーに居ますから」
『団体』農場産の野菜をカートに並べたオイノモリは、そう言ってカートの操作ボタンを押した。
「はいよ。何かあったらコレ鳴らしな」
龍飛崎はそう言ってオイノモリに、今は珍しくなったタッチパネルのついた、見慣れない電子機器を渡した。
「使い方は大体アンタらの腕時計と変わらないと思うよ」
オイノモリは「団体」産の合成肉を手にカートの中に詰めていた。微生物由来のアミノ酸で出来た合成肉は、当然ながら農薬で汚染された飼料を食べたウシなどは使われない。そもそも家畜を殺すような方法は残酷だという昔からの訴えを受けた、『団体』が進める新しい食料生産の方法だ。
「牛様肉100gでこの値段か…」
オイノモリが少し本物の牛肉よりも値が張る肉を取った時、横に誰かがいることに気が付いた。
ウェーブのかかった黒髪のその女は、人間の容姿から「美醜」という概念を抹消しようとする『団体』の人間でも思わず見入ってしまうであろう顔をオイノモリの方へ向けていた。
書き換えたのは人工的に作られた肉についての描写です。ヴィーガンってここ数年でなんか知名度が上がりましたよね。何を食べるにせよ、生き物の命を頂いてることは意識して無駄にせず食事したいです。
次回か次々回でオイノモリが気まずいことになります。




