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「ちょっと洗濯物出しっぱなしじゃない。入れといてって言ったじゃん」
「あぁ、ごめん」
「もおー家にいるんだからやる事やってよねー」
のそっと充が腰を浮かせる様を私は少し呆れた様子で眺める。
生活していると些細な事でイライラする事がある。それは仕方のないこともあったりするのだが、結婚してからというもの充の癖というか抜けている所がどうにも気になるようになった。
お互い働いているので家事はちゃんと二人でやろうという話はしていた。しかしきっちりどちらが何をするかという分担をしているわけではなかった。自然の流れで食事や洗濯は私、充は掃除やごみ出しといった自分の出来る範囲で分けるような形になっていた。洗濯物についても明確には決まっていないが、休みの日なんかは充が片付けるのが基本的だった。
充は休日でも家でゆっくりしている事が多いので、その辺りを任せるようになっている。しかし夕方ぐらいに家に帰って来てみると、とっくに乾いている洗濯物が取り込まれていない。それぐらいの事がなんで出来ないんだろうとやはり思ってしまう。
とはいえそこまで腹が立つわけでもない。少しばかりちくっとするような苛立ちが一瞬腹を刺す程度の感覚。仕事で疲れているのだろう。そんなふうにも思う。私は基本的にほぼ毎日定時で上がれるが充は残業が当たり前で毎日2時間以上は平均して残業している。最近になって任される仕事も増えてきて帰りが遅くなる日々で、たまの休みぐらい家でゆっくりしたいだろう事も分かる。だから私も無理に一緒に休みの日に外へ連れ出そうという事はしない。
でも、せめて。そんな程度ぐらい。そう考える私も悪くないはずだ。
「ふぅー……」
息をつきながら充は洗濯物を取り込む。こうしてやってくれてるだけいいのだろう。世の中にはもっととんでもない理不尽な夫がいるという話も聞く。
寡黙ではあるが、文句も言わずに言えば動いてくれる事を評価するべきだろう。