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ゼムナ戦記 ストレイドッグホープ  作者: 八波草三郎
期待されて困る二人

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地上でアルバイト(4)

 二人が話している間にもセレクションは続いている。脱落者も増えてきつつあるが時間を経るごとにエキサイトもしている。よろしくない傾向だとロゾーは思う。


(この娘に時間をやれんのか、こいつらは)


 彼らには知ったことではないとわかっていても不快に感じてしまう。考えていることがなんとなく察せられてしまうからだ。


(少々羽目を外したってジャッジがなんとかしてくれると思ってやがるな。いい大人が若い娘にウザ絡みするんじゃない)


 双方、二十を割ってくると激突も激しくなってきた。今日調子のいい、それなりの腕を持つ者に絞られてきているのである。


「そろそろヤバそう。話してる暇ないかな。ありがとね、ロゾー」

「まあ、のんびりしとけ。そこでサブの仕事でも見守ってくれてたらいい」

「え、行く気? 待って。アル・リヴェレはあのガルドワが本気で開発したコンセプトマシンなんだから、そのへんの一品物とは格が……」


 パイロットシートを格納させてブレストプレートが閉じるか閉じないかのタイミングで飛び立つ。初めて本気で飛ばせると重力波(グラビティ)フィンの利点ばかりが身体に伝わってくる。


「つけあがってんじゃねえぞ! ダラカッツ風情がこのハンク組に逆らうな!」

「ちょっとばかり古参だからって偉そうにすんな! 俺のメガトンパンチで魂までぶっ飛ばしてやるぜ!」

「ぶっ飛ばされんのはお前らのほうだ」


 もぎ取ったリタイヤ機の腕を鈍器のように振りまわしている二機。明らかに度を過ぎた破壊行為に及んでいた。


「なんだ、てめぇ! 出しゃばるんじゃねえ!」

「小娘んとこの居候なんぞに出番はないぜ!」

「ほほう、面白いこと言うな。遠慮は無用ってわけか」


 振りおろされる腕のパーツ。その手首を手刀で打つと飛んでいく。反対の手でそのまま腕を取りながら巻き込み、足元を払うだけで相手は簡単に浮いた。

 あとは巻き込んだ腕を地面に向けて下ろすだけ。引っ張られたボディは円弧を描いて背中から叩きつけられる。地響きを立てて打ち付けられた衝撃はコクピットに十分伝わっている。


「この!」

「甘い」


 後ろから掴み掛かってきた相手の鳩尾に後ろ向きに肘を入れる。ショックで固まったところに旋回して喉輪を掛ける。踏み込んで膝裏に踵を入れながら押してやるだけで背中から打ち付けられた。

 バウンドしたボディの足を掴んで振りまわす。横ざまにパンチを入れようとしてきた機体に叩きつけると手を離した。絡み合って転がっていく。


「マズ!」


 忍び寄りつつ持っていた腕を横薙ぎにしようとしていたもう一機。気づいていたロゾーはアル・リヴェレを懐に入り込ませている。クロスチョップを決めつつ膝を胸元に当てて浴びせ倒した。二機分の重量の乗った衝撃がコクピットに達するとパイロットは失神する。


「マジか……」


 その間、わずか十秒足らず。エキサイトしていた四機がいとも簡単にリタイヤさせられている。しかも、一機たりとて損傷していない。周囲にいたアームドスキンのパイロットは絶句して固まっていた。


「羽目を外していいと思ってんならオレが相手になろう」

「ひぃ……」

「その小娘に甘えてるような輩は痛い目に遭ってもいいよな?」


 純白のボディに腕組みをさせて見まわす。全員が腰が引けている様子だった。


「そ、そんなことは」

「じゃあ、もっと行儀よく喧嘩しろ。ここで見守っててやるから」

「はい……」


 そこからは熱が入らない感じで大人しくなった。数のバランスも崩れてきていたのでハンク組が優勢を奪っている。


「旦那、勝負は決まったみたいなんで今日はここまでにしときやす」

「おいおい、まだどっちも十機以上残ってるじゃないか。頑張ってみろ」

「ですが、これ以上となるとなかなか勝負がつきませんて。旦那のお手を煩わせるようなことになっちゃいけませんので手打ちということで」

「まあ、いいが。これからもレニーを煩わせるんじゃないぞ? わかったな?」

「わかっておりやす」


 様子を窺っていたミレニティがジャッジを下す。今回のセレクションはハンク組の勝利となったが、彼らも喜んでいいのか悲しめばいいのかわからない風情で撤収していった。


「ほらな」

「ほらなじゃないでしょ」

 彼女はケラケラと笑っている。

「ドン引きだったよ? 誰も勝った気になれてないんじゃないかな。強いていえばロゾーに一人負けしたみたい」

「おかしな話だ。一機も壊してないはずだが」

「余計にビビるから」

 再び笑いの発作に襲われていた。

「どんな感触だった?」

「ん? アル・リヴェレならすごくいいアームドスキンだぞ?」

「よかった。ロシュおじさまに感謝のメッセ入れとく」


 静かになった荒野に主星の光が降り注ぎ、強めの風がアームドスキンに踏み荒らされた大地を元の砂紋に戻していく。荒々しいようで、今日も平和なベッフェルベリだった。ひと働きした頃合いで腹時計が昼を知らせてくる。


「帰るか。そろそろメーダ食堂のランチタイムも終わってるだろう」

「今日からは大手を振って注文していいから」


 ロゾーはシートを機体に飲み込ませると指で上昇の合図を送った。

次はエピソード『彼の生い立ちに涙する彼女』 10月更新予定です。

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更新有り難うございます。 レフリー乱入で没収試合?
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