プロローグ「盗みの女神編①」
「こ、これ……おいしいです」
「だろ? なんか覚えてたんだよな……俺って前世料理人だったのかも」
「そ、そうなんですか?」
そうして控えめの笑顔でおいしそうに俺の作ったご飯を食べるパーフリィ。
良かった。
さて俺も――
「これは美味いもんだね~」
いつの間にかいたその美女は、俺の鍋から平気で片手で盗み食いをしていた。
「はぁ~……女神様ですね?」
「おや、すぐに気づくとはね……」
「そりゃそうでしょ……。なんせ、今本気で周囲に警戒の網を張ってるのにそんなところへ潜り込むように現れたら……。それで、あなたは何を司ってらっしゃるので?」
「ス、スティラ神!」
「おや、パーフリィ神。あんた、こんないい男と2人旅だってのに、まだ心を盗んでないのかい?」
「! そ、そんな心をぬす、盗むだなんて……!」
俺は2人――2柱の話を聞いて見当をつけた。
なるほど、この女神様は……。
「盗みの女神様か」
「ほう? 分かるのかい?」
盗み食いに、心を盗むなんて分かりやすいとは言わない。
「それで? 一体何の用で、俺たちの旅に割り込みを?」
「そりゃもちろん――」
そして俺は突然気絶をするのだった。
▽
「どうしたのです」
「あ、あの……スティラ神が……!」
急なパーフリィ神の呼び出しに、スファ神は状況を理解した。
「あの女神はまた……ですが、あの女神が本気を出せば我らで追うことは難しいでしょう」
「ど、どうしましょうか!」
「かの女神もまた、あのリョウタロウに惹かれし女神。悪いようにはしないでしょうから安心なさい」
「……は、はい」
そう言われても、心配は心配なパーフリィだった。
△
「う、う~ん……っと!」
急に気絶させられた俺は、周囲を伺っただが――
「目、覚めたのかい? ふふふ、寝顔もまたそそるねぇ~」
スティラ様が俺の横でどこから調達したのか、リンゴっぽい果実を食べていた。
「……それで? 俺を盗んでどうしようっていうんですか?」
「そのかたっくるしい喋り方をまずは、やめな」
そういうので、ため息をついて分かったと頷いてまた再びさっきの質問の答えを求めた。
「……ふふ、な~にただの気まぐれさ。あの園は女神だらけで嫌気が差しててね。かと言って男神がいてもあたしに体の関係を迫ってくるバカばかりでしょうもないのさ。あたしは盗むのは好きだけど、盗まれるのは好きじゃないからね~」
ゴクン……。
と、生唾を飲み込んでしまうほどのその圧倒的美貌は、まさに迫られても仕方ない美貌を感じてしまう。
「ま、あんただったら相手してもいいんだけどねぇ?」
「さすがにそれは……畏れ多いっていうか――」
「そうかい」
そう言ってチェッと、がっかりしたような表情で向こうを向いた。すると――
「おやおや? 面白い連中が向こうにいるね~」
そう言うスティラのいう方を見ると、確かに彼女にとっては面白い光景が見えた。
俺としては全く面白くはない盗賊行為の場面っていう感じだが。
本気の聴力を使って、介入も辞さずに彼らのやり取りを聞くことにした。
▽
「荷を三割渡しな! それであんたらの安全は保障する!」
「へ、へぇ~!」
そう言って囲まれたガラの悪い連中から荷を3割もらうと、彼と彼女は荷を検めた。そこにあるのは食料や街との交易で使う品々だった。
「よし、いきな! いいかい、今後もここを通る時は荷が3割だ」
「ほら、いけ!」
そう言って盗賊の連中は、彼らを解放して商人の人たちは誰一人殺されずに解放されていくのだった。
△
「全部奪うんじゃなくて、荷を3割渡せばってやつか……なんというか――」
その言葉にふふん~と楽しそうに俺を見て何かを閃いたかのようにして、俺を連れて盗賊たちの前にスティラは姿を現した。
「面白いことをやってるじゃないかい?」
「……なんだ? 旅人か? 散れ、おまえらに用はない」
「あたしらを盗賊と知って姿を現してるのか?」
そう言って険悪な空気を醸し出す2人にスティラは何でもないように言い放つ。
「まあね、あたしら村を追い出された2人モンでね。どうか仲間に入れてくれないかい?」
そうスティラは、宣ったのだった。




