エピローグ「続く新たな試練」
投獄された島を出た俺は、ゼン伯爵とともに王都を目指すこととなった。
馬車を勧められたが、俺としては貴族には悪い印象しか持ってないので、走って行くと拒否させてもらった。
では何で向かっているのかと言えば――
「ふっふっふっふ……」
走ってである。
さすがに女神様が作られた体は、常識外れでこうして並走もできるほどは丈夫だった。ゼン伯爵が窓を開けてあんぐりしてたのは面白かった。
「貴様のその身体能力は一体――」
「まぁ、女神様たちの恩恵ってやつですよ」
「そ、そうか」
その言葉に反応したのは、園にいる幾柱かの女神たちだった。
俺はそのことに全然気づいていないのだが。
「ちなみにあの美人の奴隷さんは」
「……。そうか、安心しろ、今は寝ているそうだ」
そっか。
それはよかった。
ちなみになぜゼン伯爵が一瞬黙り誰かとやり取りをしていたかと言えば、そういう魔法があるということだ。
それでゼン伯爵とは別の馬車に乗っているメイドさんがいる馬車にて今は休息を取りながら、移動しているのだ。
「それにしても、俺を王都になんて連れていっていいんですか?」
「どういう意味だ」
「俺の武力は知っているはず。であるならば、王都になんていかせたらどんな危険が待っているのか分かるような……違います?」
「ふん、私を舐めるな。貴様はこの国においては褒賞を与えられることを2度に渡って行っている。……何より他の囚人同様に逃げ出さずにそのまま投獄されていたということで私としては信用性に足りると思っている」
信"用"性ね。
いやまぁ、投獄のほうは懲罰の女神様が目の前にいたからですけどね。
とは俺も言わずそうですかと言って走りながら周囲の景色を楽しむことにした。
あのアルビノの子を助けられなかったことを思い出してしまうからだ。
どうにも、あの時の彼女の死にたくないが胸の奥にズクンと響いてしまっている。
だめだ、思い出しちゃ。
彼女の来世が出来る限りよくなるように考えなきゃいけない。
そんなことを考えながら強引に振り切って、前を見ながら走っていた。
ようやくというときのことだった。
何やら王都の城門で騒ぎが起こっているのが聞こえてきた。
無論、護衛を含めて伯爵さん等には聞こえていないので、窓をコンコンと叩いて伯爵さんを呼ぶ。
「どうした?」
「もうすぐ王都らしいんですが、何やら騒ぎがあるみたいで」
「……止めろ」
俺と馬で並走していた護衛長の人にそう言うと、隊列はその言葉で止まった。
「なんとかできるか?」
「はい。これも国に恩を売れるならですけどね」
しれっとそう言うと伯爵さんはため息とともに、掛け合おうと言ったので俺はじゃあここで待っててくださいと言って駆け足から走りに切り替えてその場へと飛ぶように移動した。
「……さっきまでのは本気の走りではなかったのか」
そんな言葉は俺の耳には入らず。
王都が見えてくると、そこには大きなモノが城壁に何やら攻撃を仕掛けていた。
(あれは、魔物か?)
大きな翼に大きな体躯、竜を連想させるその姿に俺はかの魔物が吐くブレスで城壁にいる兵士たちが焼かれていくのをまじかに見てしまった。
こんがり焼けた彼らは城壁から落ちていき、またその下にいるおそらく検問待ちの人たちは右往左往して大混乱に陥っていた。
そこで俺は――
「よっと!」
ある程度の石を拾って、魔物の翼に向けて思いっきり投げることにした。
すると魔物はバランスが崩れたのか、俺の投げた石の衝撃によってきりもみしながら城壁とは逆側に墜落した。
丁度骨のところを狙ったのが功を奏した。
そして俺が駆けつけて、魔物の顔辺りを踏みつけ蹴り倒し、掴むと――
「言葉は通じるか?」
と、問いかけた。
だがまぁグァァとしか言わないのでなるほどと納得して、俺は奴の顎にアッパーカットを決めて昏倒させることにした。
やがて周囲に沈黙が訪れるが、わーっと魔物が倒されたことに喜ぶ周囲の歓声みたいなのが響き渡る。
「さて、それじゃ合流しよう」
獄中であの激重鎖でスクワットしたのをこんなところで実感するというのも、あれだがとりあえずゼン伯爵への報告のために王都には入らず戻ることにした。
▽
「ああ、リョウタロウがかっこいいわ」
「鮮やかね」
「さすがは私たちの見込んだ魂を持つリョウタロウだわ」
園ではその活躍に女神たちはメロメロだった。
だが――
「温い」
そういうと剣を肩にかけたボーイッシュな女神がじっと彼を見て言い放つ。
「あら、戦神ウォーロ神。温いって何が温いのよ」
「奴の動きだ。全くもって温い。私ならば――」
と言っていかに戦いがどうたらこうたらという話をそこにいる女神たちに激しく話し始めた。
「相変わらず、戦いになると話が長くなるわね。眠いという人の子の感情が今だけは分かる気がするわ」
「ウォーロ神」
「なんだ? アブソリューナ神」
そこへ現れたのは心配性のアブソリューナ神だった。
「……介入はしてはいけません。あくまで彼の祈りによること、それが――」
「分かっている。だが――」
そう言って不気味に笑う彼女は、一息置くと言い放つ。
「……奴は巻き込まれるだろう。これはオレが引き寄せてるわけじゃない」
そんなことをいうウォーロ神にアブソリューナ神は、運命の女神に聞こうかどうか迷うのだった。




