表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王様には蒼いリボンをつけて  作者: なっつ
Episode 4:眠り姫の受難
74/626

19 【忠誠の証・6】

著作者:なっつ

Copyright © 2014 なっつ All Rights Reserved.

掲載元URL:http://syosetu.com/

無断転載禁止。(小説家になろう、taskey、novelist、アルファポリス、著作者個人サイト”月の鳥籠”以外は全て【無断転載】です)


这项工作的版权属于我《なっつ》。

The copyright of this work belongs to me《NattU》。Do not reprint without my permission!


挿絵(By みてみん)




「面白い」


 青藍はくつくつと笑う。


「余程この魔王がお気に入りと見える」

「……ええ」


 執事はゆっくりと間合いを詰める。少しずつ、それとわからないくらいにゆっくりと。


「しかし、守るべき主はもう何処(どこ)にもいない」

「います。私の目の前に」

「”俺”は、お前の主ではないのだろう? 矛盾してはいないか? 忠犬」



 その瞬間、キィン、と空気が鳴った。

 今まで冷たいながらもまとわりつくだけだった部屋の空気が、ここにきて一気に凍りつく。

 頬に針のような痛みが走った、とルチナリスが思ったまさにその時、振り返ったグラウスがその肩を押した。



 へ?



 ルチナリスの視界が反転した。

 執事と義兄(あに)の姿が一瞬で消え失せる。

 壁に埋め込まれた石造りのレリーフがするすると下りて来て、すぐに見えなくなる。

 代わりに見えたのは、キィ、キィ、と危なげな音を立ててぶら下がるシャンデリアと、半分ほど崩れ落ち、夜空にその座を明け渡している天井。

 そして、宙に浮かんだ自分の爪先。



 ああ、こんな景色前に見たわ。

 あれは確か5歳の頃。後ろ手に持っていたドアノブがドアごと引かれた拍子にひっくり返っ……




「ぎゃああああああああああああ!!」


 ルチナリスは階段を転がり落ちた。




                挿絵(By みてみん)




 あたし、死んじゃったのかな。


 ルチナリスがぼんやりとそんなことを思ったのは、それからどれくらい経った頃だろう。

 つい数十分前にも同じことを思った気がするが、今回は輪をかけて異世界感が強い。

 身体がふわふわと中途半端に宙に浮いているような奇妙な感覚は、先ほどまでは感じなかったもの。それも綿に乗っているような柔らかいものではなく、枯木に引っ掛かってぶら下がっているような不安感を煽り立ててくる。



 ――ルゥ~チャ~ン。



 どこからか自分の名前を呼ぶ声がする。

 優しい女性の声ではない、ゴツゴツとかザラザラとか表現するしかない声。

 これは天使様の声じゃない。聖女様の声でもない。いや、本当はどっちも聞いたことは無いけれど、イメージが違うと言うか。

 そう、まるで枯木が喋っているような。



 ――ル~ゥ~チャ~~ン。



 そうだ。

 ルチナリスの脳裏におぼろげだった記憶が戻って来る。


 あたしは執事に階段から突き落とされたんだった。

 途中の踊り場からだから半階分だけど、打ち所が悪かったらあの世行きは免れない。打撲の痛みが何処(どこ)にもないのがとっても怪しい。


 なによ。味方だって言ったくせに階段を突き落とすなんて、やっぱりあいつは信用できない。

 でも、もう何を言っても無駄なのかな。死んじゃってたら声なんか届きやしない。



 ――ル~~~~ゥ~~~~チャ~~~~~~~~~~~~~


 さっきからうるさいのよ!!

 今取り込み中なんだから後にして!


 ええと、そうよ。泣き寝入りはしないわ。化けて出てやる!



「るぅチャン!」



 ばちっ、と目が覚めた。

 自分を取り囲んでいる目。目。目。

 何だ此処(ここ)は。地獄の底か!? いやそんなはずないでしょ、こんなに清楚で清らかで可愛い乙女が地獄なんぞに行くわけな、


「るぅチャンが目を覚ましたっす!」

「大丈夫っすか? 怪我はないすか!?」


 ルチナリスの周囲をガーゴイルが取り囲んでいる。神輿(みこし)でも(かつ)ぎあげるように両手足を持ち上げられている。


「ぎ……」


 枯木みたいだと思ったのは彼らの手だったのか。

 と言うか、あたし何で……。



「ぎゃあああああああああああ!!」



 再び悲鳴がホールに響き渡った。

 なんで!? なんでこいつらが!!



「酷いっすねー。るぅチャンが落ちて来るの受け止めてあげたってぇのに」


 ルチナリスの体を支える骨ばった手。

 腕を、足を、背中を、あらゆる箇所をその手が支えている。どうやら階段に打ちつけられるより前に彼らが支えてくれたらしい。打撲がないのはそのせいか。

 さらにこの短時間でセクハラまで考慮してくれたのだろう、危ういところには全く手が無い。そのせいで何処(どこ)か落っこちそうな中途半端な支え方になっているのだが、一応は女性として見られている、と思えば文句を言うわけにもいかない。

 枯木に引っ掛かっているような宙ぶらりんな不安を感じたのはこのせいか。



 しかし、こいつらにお姫様だっこ(ちょっと違う)される日が来るとは。

 これだったら床まで転がり落ちたほうがましだっ……いや、そんな失礼なこと言ったら次は放置される。胴上げの後でさっと手を引かれて地べたにベシャッ! と叩きつけられるみたいに。

 それによく考えてみれば、夜な夜な執事の枕元に立ったところであの男が幽霊を怖がるとは思えないし、あたしの扱いの酷さを悔い改めるはずもない。

 それどころか邪魔がいなくなったからって義兄にべったりと貼り付いて、あたしの「お世話係」までぶん取って。

 わかる。

 「あの娘よりずっと満足させてみせますよ」とかなんとか言っちゃって手取り足取り……ええい! 満足ってなんだ! 貴様(キサマ)は寂れた温泉宿に呼ばれた自称・マッサージ師か!! って違ぁう!


「青藍様は!?」


 そんなことを考えている場合じゃなかった。

 上に向かって顎をしゃくったガーゴイルに合わせるように、ルチナリスも階段を見上げる。さっきまでいた踊り場から数段にかけてが真っ白に凍りついている。


「いったい上で何があったっすか?」


 遠くから見ているだけでは状況を把握しきれなかったのだろう。ガーゴイルがそんな間が抜けた問いを投げかけてくる。



 なにが?

 義兄(あに)は?

 そうだ、執事は!?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。


image.jpg

小説家になろう 勝手にランキング
に参加しています。

◆◇◆

お読み下さいましてありがとうございます。
『魔王様には蒼いリボンをつけて』設定資料集
も、あわせてどうぞ。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ