第27話『――はただ静かに暮らしたい』
魔法使いは魔力を放出したまま、気絶及び死亡した場合。
帰るべき場所を失った魔力は『暴走』し、出力を上昇させ続けその場にとどまる。
『魔力暴走による終焉シナリオ』そう書かれた表紙を表にし、ゆっくりと本棚に差す。
「興味深い論文だな」そう思いながら、ティーセットを準備してテラスに出る。
木々に囲まれたテーブルにそっとカップとケーキの乗った皿を置く。
小動物たちが机の上に群がり始め、俺のケーキを物欲しそうに見つめる。
「残念だが、これは俺のだ。お前たちにやる分はない」動物たちにそう言うが、俺の言葉を理解していない様子でジッとケーキを見つめている。
つぶらな瞳をした小動物を前に、そっとカットした苺を置く。
「今回だけだぞ。次に俺のティータイムの邪魔をしたらただじゃおかない」そう言って、カップを口にする。
爽やかな匂いに、ちょうど良い苦味が混ざり口の中に『味』を残す。
フォークを手にして、そっとケーキを一口分にカットして、そのケーキを口元に運ぶ。
ケーキが口に入った瞬間、コーヒーの苦味とケーキの甘味が最高にマッチし、至福の時間に突入する。
「……幸せ」誰もいない森に、ただ感情に任せて口を開く。
誰にも邪魔されずに、平穏に暮らせることほど、俺にとっての幸せはない。
そう確信したのは、ティータイムの最中だった。
ふと、森の入り口に視線を向けると、人影が見えて、徐々に近づいてくることに気づく。
嫌な予感に襲われながらも、その先にいるであろう人の顔を見ようと目を凝らすと、口が開いたのが見えた。
「お〜、人間だ〜!」




