その12 冠詞について ~"a"と"the"の使い分けがよく分からないんですけど~
今回のテーマは冠詞です。
冠詞というのは、インド・ヨーロッパ語族に特徴的な品詞で、基本的には日本語に存在しないものです。
※ハンガリー語・アラビア語など、インド・ヨーロッパ語族以外の一部にも冠詞が存在します。
インド・ヨーロッパ語族の中でも英語は冠詞の種類が少ない言語であり、以下の3つしかありません。
a/an ⇒ 不定冠詞
the ⇒ 定冠詞
不定冠詞が付く前提条件として、まず単数の可算名詞の前という条件があります。
ただし、単数の可算名詞の前であれば必ず不定冠詞が付く訳ではありません。
単数の可算名詞の前であっても、定冠詞が付く場合と不定冠詞が付く場合があります。
それについては、後で説明します。
可算名詞とは、簡単に言えば数を数えられる名詞の事です。
例えば "book" は可算名詞ですが、"water" は数えられないので非可算名詞です。
また名詞の前に形容詞が付く場合「冠詞+形容詞+名詞」の語順になります。
具体的には、以下の例文のようになります。
a big dog
次に "a"と"an"の使い分けですが、可算名詞の発音が母音で始まる場合は、不定冠詞として "an" を使いますが、それ以外では "a" を使います。
では「冠詞+形容詞+名詞」の場合は、どうなるのでしょうか?
この場合、名詞の発音は関係無くなります。
その代わり、形容詞の発音が母音で始まる場合に不定冠詞として "an" を使い、それ以外では "a" を使います。
つまり冠詞の直後に配置された単語の発音が母音で始まるかどうかで "a"と"an"を使い分けるのだと覚えて頂ければ結構です。
それでは次に、不定冠詞と定冠詞の使い分けについて、以下の例文をご覧ください。
主人公の青年が海を漂流中に一隻の船を発見したとします。
その場合の例文は下記のようになります。
He finds a ship.
次に船を発見した主人公が船に手を振ったとします。
その場合の英文は下記のようになります。
He waves his hand to the ship.
これが定冠詞と不定冠詞の一番基本的な使い分けになります。
主人公が船を発見した段階では、物語上、その船は初めて登場した事になります。
このように、初めて登場した物・人に対しては不定冠詞を付けます。
しかし主人公が船に手を振った段階では、船は既に登場済であり、読者はそれが青年が発見した船である事を理解(特定)しているため、付けるのは定冠詞に変化するわけです。
つまり、読者や話し相手が対象となる名詞を特定できる場合、定冠詞を付けます。
逆に、初めて登場した物・人に対しては、特定が出来ないため、不定冠詞を付ける事になります。
英文法には存在しない表現ですが、特定冠詞・不特定冠詞と言い換えた方が、イメージしやすいかもしれません。
別の説明をさせて頂くとすれば、辞書で「the」を調べた場合、「その」が代表的な日本語訳になりますが、小説の中で「その船」と表現するには、対象となる船について、説明文であれば作者と読者、会話文であれば話している相手同士が、その船が何なのか認識していないと、「その船」と表現する事は出来ません。
読者や話し相手が「ああ、その船の事を言っているんですね」という認識がある場合に、冠詞として「the」を使います。
このように、対象となる名詞について作者と読者、あるいは話している相手同士に共通認識がある事が、定冠詞「the」を使う条件になります。
次に不定冠詞については、不定冠詞を付ける事によって「それそのもの」という意味を持つ場合があります。
以下の例文では、"a"と"the"が異なるだけですが、意味がかなり違ってくるのが分かります。
He aims to be the taxi driver.
彼は(誰か特定の)タクシードライバーを目指しています。
He aims to be a taxi driver.
彼はタクシードライバー(そのもの)を目指しています。
同じように、"a soldier" であれば、「兵士そのもの」つまり「軍人」あるいは「陸軍軍人」という意味になります。
定冠詞の用法は少し複雑で、可算名詞と非可算名詞の両方で、定冠詞が付く場合があります。
また共通認識を持つ名詞以外でも、"The earth" のように、唯一無二の存在である名詞に対しては定冠詞が付く場合が多いです。
もっとも"The earth"の場合は、共通認識も存在しますが・・・
また the greatest hits や Lupin The Third のように最上級表現や、1番目・2番目といった序数の前にも定冠詞が付きます。
定冠詞を付けるパターンは、これ以外にも色々あります。
詳しくは辞書サービスで "the" を検索すると用法が出てきますので、参考にして下さい。
一方で、国名や地名・企業名・特定の人名・映画や本のタイトル・Monday/Tuesday等の曜日・breakfast/lunch/dinner・God 等には、名詞であっても原則冠詞は付きません。
spring/summer等の季節については冠詞が付かない場合が多いですが、一部については定冠詞が付く表現もあります。
また手段を表す前置詞である "by" の後ろの名詞には、基本的には以下のように冠詞を付けません。
by train
by car
それから "in"や"to"のような前置詞に続く特定の名詞にも冠詞が付かない場合があります。
I went to bed.
I went to school.
I came home.
つまり名詞には、不定冠詞が付く場合・定冠詞が付く場合・冠詞が全く付かない場合の3パターンが存在します。
その中で、どのパターンを選択すれば正しいのかについては、説明させて頂いた原則・条件以外にも色々な条件が存在するため、完璧に修正するのは簡単ではありません。
今の自分の実力の範囲内で、出来るだけ修正してみて下さい。
文法知識が向上するにつれて、さらに正しい表現が可能となります。
このように冠詞一つにしても、突き詰めていくと奥が深いのですが、まずは"a"と"the"の使い分けが出来るようになるところから始めて頂ければよろしいかと思います。
次回は単数形と複数形についてご案内します。




