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狭間の街の創造者達   作者: 紅屋 酒桜
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狭間の街の創造者達


「はい、お電話ありがとうございます。ハザマクリエイトカンパニーです」


そう電話に出た声は、落ち着いた女性の声だった。繋がったことにまずは驚いたが、これが最後のチャンス。落ち着いてその声にこたえる。


「あ、あの。突然のお電話申し訳ありません。お忙しい中、出ていただきありがとうございます。大変失礼なことをお聞きしますが、現在御社では求人の募集などはしていらっしゃるでしょうか?」


「嗚呼、弊社の面接希望の方でしたか!お電話ありがとうございます。はい、弊社では現在働いていただける人材を募集しております……ちなみに、弊社のことはどのような形でお知りになりましたか?」


「あ、え、えっと……」


電話の相手にそう問われ、私は思わず言いよどむ。ネットで調べた記憶もないし、実際のところどのような仕事をしている会社なのかもわからない。ただ、あのメモ帳に書かれていたならば、自分のやると決めた内容の仕事であることに間違いはないはずなのだが……すると、電話の相手は思わぬことを言い出した。


「ああいえ、失礼いたしました。弊社は通常の募集を出していないものでして。例えば、誰かの紹介ですとか、町中に張られたチラシを見た、とか、『メモ帳にメモしたはずのない会社名と電話番号がかけてみた』とか……」


「えっ!?な、なぜそれを??」


「ふふ、いえ。あくまで一例です。それでは、もしご都合がよろしければ面接の日程を決めたいと思うのですが……あら、失礼いたしました。貴女様のお名前をお聞きしてもよいでしょうか?」


「あっ、た、大変失礼いたしました!! 私は華菱 文 と申します。面接の日程は御社のご都合の良い時で大丈夫です。履歴書なども用意できてます」


「かしこまりました。それではそうですね……華菱様は、本日のご予定はいかがでしょうか?」


「今日ですか? は、はい。今日は特に何もありませんので、今日でも大丈夫です」


「それはよかった。それでは本日、さっそく面接をさせていただきたいと思いますので、弊社にお越しいただいてもよろしいでしょうか?」


「は、はい!あ、あの、住所とかをお聞きしても──」


「嗚呼、それには及びません。少々お待ちを……いま『繋げますので』」




気づけば、私は見知らぬ部屋にいた。






「…………へ?」




あたりを見回す。先ほどまでいたファストフードの店内は……見る影もない。本棚に囲まれたその部屋は、壁に掛けられた時計の音だけが響いている。

広めの部屋には、窓際に据えられた大きな机と、その上に積まれた紙の山。よく見ればそれはコピー用紙などと違う茶色のもので、古ぼけた印象を受けた。そしてその机のほかに設えられたローテーブルと5名掛け程の大きなソファが1対。一体全体何が起こっているのだろうか。


「夢でも見てる……?」



余りの連敗続きに白昼夢でも見ているのだろうか。それにしては嫌に質感がリアルというか、雰囲気が現実で感じるそのものというか、夢と言うには余りにもリアルすぎた。


何が起きたかよくわからないまま、しばらく呆然と部屋を見渡す。すると、私の後ろにあったドアが、コンコンッと軽くノックされる。



「お待たせいたしました、華菱 文様……あら、ふふ。驚かせてしまって申し訳ありません」


そう言いながら部屋に入ってきたのは一人の眼鏡をかけた女性。青く見えるほどきれいな黒髪を結い上げた、電話の声の持ち主。


「さ、どうぞこちらの席におかけくださいな。もうじき上の者が参りますので」



「あ、あの……これは何がどうなって……」


「ふふ、そのことに関しましても追って説明いたします。さ、どうぞおかけになってください」


「は、はぁ……」


女性に促されるまま、ソファに腰掛ける。座り心地の良いソファは、なんだか本当に現実ではないのだろうかと思うばかりで、しかしその感触がこれは現実なのだと再認識させる。


「お茶でもいかがですか?それとも珈琲のほうがよろしいです?」


「あ、お、おかまいなく!!」


そう言うと、少しの後に目の前にティーカップが置かれる。中に入った琥珀色の液体からはとても芳醇な紅茶の香りが漂い、緊張していたものが少しだけ落ち着く。


「さて、では上の者が来る前に、少しだけお話するお時間をいただいてもよろしいですか?」


「は、はい!!」


紅茶をちびりちびりと飲みながら待っていると、眼鏡の女性が自分の向かい側のソファに腰掛ける。手には黒い大判の手帳と万年筆だろうか、それを持ち、こちらニコリと微笑んでいた。


「では改めて、私は綾ヶ世と申します。弊社……ハザマクリエイトカンパニーの秘書のようなものを務めております」


「は、はい。私は華菱 文と申します。え、えと……就活のために地元から上京してきたばかりです……」


「そうでしたか、それでは先ほどから疑問に思っているでしょう事にお答えしましょう。ここは──」


「それは儂から説明するとしよう」


再び聞こえる別の声、ドアが開きだれかが部屋へと入ってくる……くる……え……


「え…………えええええええええええええ!!??」



「何じゃ、騒々しいのう」



思わずソファから跳ね上がる。部屋に入ってきたのは全身を赤い鱗で覆われた、長い尻尾を持つ、金色の瞳をした



「ど、ドラゴン…………?」



そこには、本やアニメの中でしか見たことのない存在がいた。


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