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第1章 第3話 悲業の鬼 ⓪

子が大成したら親は子と共に喜ぶものだし、逆に落ちこぼれたら子と共に悩むものだ。しかし、子が大成してもそれは親の手柄ではないし、子が落ちこぼれてもそれは親の責任ではない。

子の人生は子のもの。親がするのはその保護であって支配ではない。

とはいうもののやはり、大成すれば子は親に感謝すべきだし、落ちこぼれれば親は責任を感じるべきだと僕は思う。

これは誰もが当然のようにわきまえるべき理屈なのだが、これを親が子の前で口にしてしまうとたちどころに理屈の価値が失われてしまうというのがこの理屈の難しいところだ。

そう考えるとこれは「まともな人は自分のことをまともとは言わない」という理屈に通じる所がある。誰かが言わなければ、誰かに気付かされなければ、いつまで経ってもこのことに気付かない子供もいるというのに。かつての僕がそうであったように。

僕の話をすれば、僕が感謝すべきは五年前に死別した育ての親と五年前に僕を救ってくれた第二の育ての親ということになるのか。

そして残念ながら僕はまだたったの一度もお礼らしきお礼を言えていない。

僕はまだ大成なんてしていない。志半ばだ。と言ってしまえばそれまでなのだが。

幸い、僕の親は二人ともそんな僕の言い訳を笑って受け入れてくれる人だった。

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