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7.ドワーフにとっては深刻な問題

「ドワーフさんに渡す分の錬金飴は追加で作らないとだから、少し時間をもらってもいいかな」

「オーレルさん達が来るからって作っていた分、結構あったよな? あれがまだ残っているんじゃなかったのか?」

「今日だけでもかなりなくなっちゃって。それに持っていく分と離れている間のストック分もと考えると結構な量になるから」


 たーちゃん像とドラゴンさん像の代金は合わせて金貨七十五枚。

 材料は別とはいえ、錬金飴で換算すると千五百個分に相当する。かなりの額だ。


 とはいえ相手はドワーフ。

 材料は別とはいえ、三倍以上の値がついてもおかしくはないと思っていた。知り合い価格にしてくれたのだろう。


「ならおやっさんに渡す分の大袋か大きな錬金飴を一つだけ作ってもらえないか? 少しだけでも先に渡しておきたい」

「何度も行くの大変じゃない?」

「そんなでもない。それにジゼルも行くなら小屋の手入れをしておきたいんだ」

「あのくらいの距離、我にとっては大したことないぞ。それに心配すべきは我らより酒待ちのドワーフの方だ」

「どういうことですか?」

「おひげのおじちゃんたちがほしいの、あめじゃないのぉ?」


 ジゼルとたーちゃんは揃って首を傾げる。

 錬金飴を使った酒以外にも酒の種類はたくさんある。ドワーフの里ともなれば、王都の酒場よりも豊富な種類が取りそろえられていることだろう。


 特定の酒がなければ他の酒を飲めば良いだけ。

 そう思ったのだが、ドランとドラゴンさんは深刻な表情を浮かべている。


「シマさん特製酒に使われている錬金飴は、おやっさんが買って帰ったものなんだ。そこからシマさんとおやっさんの取り分、それからジゼルに渡す分を取って、残ったわずかな量を他の人達で分けている状態で……。里に下りた俺達が錬金飴を持っていないと知ると、なんで売る分を持ってこないのかって怒られた」


 前回ドワーフさんが宿を訪れた際、購入してくれた錬金飴は二瓶。

 うち今回使用された錬金飴は疲労回復効果があるもののみと思われる。


 お土産に持たせてくれた瓶の大きさと浮いている実の数を考えると、一回に使用する飴の個数自体は決して多くはない。


 通常の果物と氷砂糖で作るシロップと比べると、使用する飴はうんと少ない。

 それでも飲む量と人数を考えるとあっというまになくなったのだろうことは想像にたやすい。


「酒を我慢させられたドワーフが何をするか我にも分からぬ。巣作り中の坊に遠慮していたあやつらだが、一度里に足を踏み入れた後ではそんなものないに等しい」

「ジゼルのガラスに目を付けた時のおやっさんも凄かったけど、今回は里のほぼ全員だもんな」

「今の奴らなら若いドラゴンの卵すら奪えるかもしれん」


 息を呑むドラゴンさんと遠い目をするドラン。

 ドラゴンさんの例えを聞いた後では、移動の負担よりも精神的負担の方が心配になってくる。


「えっと、急ぎで大袋をそれぞれ一袋ずつ作るね」

「助かる」


 大きな飴か大袋、どちらか楽な方でとのことだったので、大袋を選ぶことにした。

 大きな飴は包む時や管理するのは楽なのだが、一つ作るごとに錬金釜一つを独占することになる。


 今後の依頼量と依頼頻度にもよるが、他の依頼分とあまり差を付けない方が楽だと考えたのである。



 大袋一袋あたり百個で、各種五袋ずつ用意するつもりだ。

 先に持っていく分は帰宅後すぐに作って、夜のうちに乾燥させてしまえば明日の朝にはドランに渡せるはずだ。


 袋は錬金飴の包み紙として使用している紙を改良すればいいだろう。

 強度を高めるためにも厚みが欲しい。底にマチも作りたいし、封をするための方法も考えないと……。


 ジゼルは頭の中でパチパチと大袋のレシピを組み立てていく。



 また今後の取り引きを考える上で、決して忘れてはいけないことがある。

 宿屋ギルドとの関係である。


 ジゼルが下宿している宿屋で店舗販売をしている分と、手紙でのやり取りをしている相手に販売する分以外は宿屋ギルドに相談することになっている。


 ステファニーがサービスとして配る分と、西の大国に売り込みに行く分は、ヴァネッサに許可を取った上での例外扱いとなっている。


 今回は手紙のやり取りと同じ括りに入れることもできるが、取り引き量が宿屋ギルドに並ぶ可能性もある。さすがに一般販売分と同列にするのは無理があるような気がするのだ。


「ガラス像の対価として渡す錬金飴に関しては、販売している価格をそのまま適用できればと思ってる。ただ、それ以降のやり取りは宿屋ギルドに相談させてもらってからでもいいかな。別の形で販売することになったら相談する約束で、これからもやり取りを続けていくようなら初めに確認しておきたくて」

「ギルドを通すのは賢い選択だと思うぞ。あの様子では、他の里のドワーフにも酒と飴の存在が伝わるのは時間の問題だからな」

「ああ、そういえばおやっさんがチラッと『量が作れればグラスとセットで自慢できるのにな……』とかなんとか言ってた気がする」

「実物がないからと酒自慢の機会を逃すドワーフなどいない。間違いなくグラスと絡めて話をするだろうな」


 なんだかジゼルが想像しているよりも大事になりそうだ。

 どのように広がり、今後どうなっていくのか。今回のきっかけは腰痛や疲労ではないだけに、全く想像ができない。


 今晩女将さんに相談した後、すぐにヴァネッサへの手紙をしたためた方がよさそうだ。


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