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【閑話】ビビアンとリュカ①

 オーレルがジゼルと再会して早十数日。

 今日は王宮錬金術師特別顧問としての初出勤日だ。


 リュカとの約束通り、孫のビビアンも一緒に城へとやってきた。


 先日、ジゼルの元を訪問した際にも持っていった錬金道具一式はもちろん、今回は『ガーコ』も一緒である。


『ガーコ』は先日、ビビアンがたーちゃんと一緒に作ったアヒルの貯金箱のことだ。

 帰ってからすぐに名前を付け、四六時中一緒にいる。ベッドの中にも風呂場にも持ち込み、本当に生きているかのように世話をしている。


 まだ幼いビビアンでも持ち歩けるほどの重さではあるものの、いつも持ち歩いているせいで手が埋まってしまう。足元は見えづらくなり、とっさに何かあった時の反応が遅れてしまう。


 見かねたビビアンの母が錬金術で『ショルダー式のガーコ用ハーネス』を作った。

 輪っかの部分はガーコの胴にピッタリとはまっており、バックルを外さない限りは抜けることがない。ショルダーの長さは、ビビアンが肩から提げた時にガーコが腰に来るくらい。


 転ぶと危ない点はまだ変わらない。

 だが『いきなり走るとガーコがビックリするからね!』と言い聞かせた甲斐あって、外でよさそうな素材を見つけても走り出すことが減ったという。すでに立派な相棒である。


「じいちゃんは他の部屋でお話があるけど、リュカや他の錬金術師達の言うことを聞いて、ガーコと一緒にいい子にしてるんだぞ?」

「大丈夫だって。じいちゃんは心配しすぎだよ」

「そうだぞ、オーレルさん。坊主ももうそんなに小さくないんだから大丈夫だって」

「ビビアン君は我々がしっかり見ておく」

「ああ、すでにもてなす準備もできている」


 ケラケラと笑うビビアン。

 だがオーレルの心配はビビアン本人ではなく、ビビアンの後ろにいる大人達だ。左右からビビアンの肩に手を置く彼らを見て、次第に頭が痛くなる。


 三人いるうちの一人はいいのだ。

 一人はオーレルが少し前までギルドマスターを務めていた錬金ギルド『精霊の釜』に所属していた錬金術師。


 幼い子供がいる彼は、精霊の釜に所属していた頃からリュカを気にしていた。リュカは迷惑そうな顔をしていたが、王宮錬金術師に就任してからも仲良くやっているのだろう。今もリュカの隣にいる。


 リュカと同様に、ビビアンの面倒を見てくれるつもりでいるようだ。彼の気遣いは素直にありがたい。

 これから順番に王宮錬金術師達の面談を行っていくのだが、互いによく知った仲だ。彼の面談が手間取ることはないだろう。そちらの面でも安心である。



 残りの二人――王宮錬金術師長とサミュエル王子こそ、オーレルに不安を抱かせる原因だった。

 不安の原因が別々の方向に伸びているからなおのこと。頭だけでなく、胃も痛くなる。



 前回オーレルが王都に来たのは、挨拶を兼ねてこれからの流れを確認するため。

 その際、オーレルが王宮錬金術師全員と面談をすることが決まった。王宮錬金術師長も同席するという話だったのだが、今の彼は完全にビビアンをもてなす側にいる。


 代わりに、分厚いノートを持った副錬金術師長がオーレル側に立っていた。すでに役割交代は済んでいるのなら、オーレルが強く言う必要はないのだろう。


 いや、言っても無駄だと早々に察したと言った方が正しいか。

 なんでも彼は、王宮錬金術師採用試験で出会ったビビアンのことをとても気に入ったらしい。


 今日もビビアンがやってくることをリュカから聞き、新たにビビアン用の錬金道具一式を用意したほど。先日オーレルが話を聞きに来た時よりも、今日のビビアンの方が歓迎されている。以前から顔見知り程度ではあったとはいえ、明らかに待遇が違いすぎる。


 子供の身長に合わせた高さの調合台の横には、最新式の素材保管ボックスが置かれている。

 以前、商人がオーレルの元に売り込みに来たため、よく覚えている。内容量が多く、素材の劣化が抑えられることが売りのアイテムで、購入をやや躊躇するくらいの値段がする。前回の訪問時にはなかったアイテムだが、新たに買い足したのだろうか。


 一つしかないアイテムの置き場が気になるが、ビビアンのためだけではないはずだ。そう信じたい。オーレルが気持ちの整理を付けている間にも、古株の錬金術師が作業場からぞろぞろと出てくる。


「我らの癒やしが来たぞ」

「お礼のお手紙をくれた子だ」

「肩から提げているのも錬金アイテムか?」

「是非お話したい」


 口々にそう唱えている。

 どうやらビビアンを気に入ったのは、錬金術師長一人ではなかったようだ。オーレルの背中に冷や汗が伝う。だがリュカが彼らの前に立ちふさがる。


「出勤したばかりなのにもう休む気か」

「少しだけ」

「いい大人なんだからちゃんと働け」


 冷ややかにそう放つと、しょんぼりと肩を落として持ち場に戻っていった。彼らの背中から悲壮感が漂っている。まぁ休憩時間になったらまた戻ってくるのだろうが。


 彼らがビビアンをここまで気に入っているのはもちろんだが、古株が揃って疲弊しているのも気になった。新しい錬金術師達は聞いていたよりも濃いメンバーが揃っているのかもしれない。


 想像しているよりも長い面談になりそうだ。

 オーレルは一層気を引き締める。



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