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8.好きな色を作ろう

「どのくらいの大きさのにするんだ?」

「たーちゃんとおんなじくらい。そうしたらたーちゃんがドランとジゼルの巣にいってもさみしくないでしょぉ?」


 実寸大となるとジゼルの想定よりも大きいガラス玉が複数必要となる。依頼を受けてもらえた時は大きい方の錬金釜で作らなければ。それに合わせて染料も量を用意して……。頭の中で必要な材料を計算していく。


「そこまで離れてないけどな。でもたーちゃんが置物作ってもらうとなるとあいつも騒ぎそうだな……。なら俺は黒いのを作るか。ただ、今のおやっさんに色付きガラスをいくつも渡すのもなぁ。ジゼルに迷惑かけたくないし……」

「迷惑がかかるとしたら私じゃなくてドワーフさんの方だよ?」

「おやっさんは一度創作意欲が湧くと歯止めが利かないタイプで、本人も自覚してるから納期はかなり余裕を持って組んでて、ジゼルが心配するようなことにはならない。代わりに伝えに行ったが最後、ドラゴンにへばりついてでもガラス玉を手に入れようとする」

「さすがにそこまでは……」

「いや、絶対する。前回は心配かけたくなかったから黙ってたけど、俺が頷くまでかなり面倒くさかったんだ」


 少し前のことを思い出し、げっそりとするドラン。

 ドワーフがやってきた日もジゼルのことを気遣ってくれたが、裏側ではもっと色々とあったようだ。だが相手は材料へのこだわりが強いドワーフ。知り合いであるという点も加われば、ドランでも勝ち目がなかったのだろう。


 彼には悪いが、普段は見せてくれない新たな表情にジゼルは少しだけ嬉しくなってしまう。自分が絡んでいることだから余計にほのぼのとしてしまうのだろう。


「ドワーフも欲しがるなんてジゼルってやっぱりすごいんだ!」

「そうだよ〜。ジゼルはすっごいんだよぉ」


 ドワーフというワードに食いつくビビアンと、ジゼルを褒めてもらえてご機嫌なたーちゃん。フェリックスはほぉっと息を呑みながらも材料をじっと見つめている。早く色作りに取り掛かりたいと目が訴えている。


「ドワーフさんには後日、手紙と一緒にサンプルのガラスも併せて送るとして、今は色作りを始めようか」


 ジゼルはパチンと両手を叩き、話を切り替える。

 細かい注意点を並べると、皆、こくりと頷いて色作りを開始した。


「黒ってどう作るんだ?」

「鉱物だけでも綺麗に出るけど、折角だからいくつか色を重ねて作るのはどうかな? 混ぜた色によって光に当てた時に見える色が違うんだ」

「なるほど」


 質問したドランはもちろん、フェリックスもなるほどと深く頷いている。そして複数の色をすり鉢に追加していった。ゴリゴリとすり潰しては、赤みを出すために唐辛子を追加している。早くも色が出来上がりつつある。


 目指す色によっては鉱物を足す必要もないかもしれない。

 ジゼルのサポートは必要なさそうだ。ビビアンも兄の手元を覗き込み、目を丸くしている。


「兄ちゃん、初めてなのになんでそんなに上手いの?」

「俺も小さい頃は錬金術師になりたくて、じいちゃんの真似してたからなぁ。錬金術師の才能はなくても色作りの才能はあったのかも」

「今からでも錬金術師目指せばいいのに」

「魔力がほとんどないから無理だ」


 フェリックスはビビアンの提案をバッサリと切り捨てる。

 だが彼自身、錬金術師への未練はほとんどないのか、思考は目の前の色作りに向いている。


「それよりビビアン。その色、おかしくないか?」

「黄色いのしか混ぜてないのに、なんか混ざっちゃうんだ……」

「レモンと花の白い部分がちゃんと取り除けてないんじゃないか? 色作りは素材のことをちゃんと見て、こっちだよって連れて行ってあげないと仲良しになれないって、たーちゃんが教えてくれただろ?」

「ええ〜難しい……」

「あ、それなら今からでも取り除けるから大丈夫だよ」


 鉱物を混ぜてしまうと周りに色が付いてしまうが、それよりも前の段階であれば調整が利く。小さい匙を手に、こうやって……と白い部分を取り除いてみせる。


 使っていた匙をそのままビビアンに渡すも、困ったように眉が寄ったまま。そのまま甘えるようにフェリックスを見つめた。


「俺が手伝ってもいいけど、ジゼルさんの弟子になれるの今日だけだぞ? 目の前で見ててくれているのに、その機会を逃してもいいのか?」

「ゔっ……自分でやる」

「たーちゃんもがんばるからびびあんもがんばろぉねぇ〜」


 ビビアンを励ましながら、たーちゃんもジゼルの手元のすり鉢に材料を追加していく。

 たーちゃんの色は『満月の湖』限定のキャンディボトルを作った時の色に似ている。あの色をベースに茶色を足していくイメージだ。そのまま四人と一匹で各々の目指す色を作っていった。


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