5.ドランの心配事
残されたジゼル達。
最初に口を開いたのはドランだった。深く頭を下げる。
「ジゼル、リドリーが迷惑かけたみたいでごめん」
「ううん、大丈夫だよ」
「それでその……」
ドランは言いにくそうに視線を彷徨わせる。
リドリー本人にはスルーされてしまったが、彼の様子が心配なのだろう。
先程まではどう断るか悩んでいたジゼルだが、ドランが気になっているなら話は別。
今度はジゼルがドランの背中を押す番だ。
「よかったらこの後、持っていくプレゼントを一緒に考えてもらえない? 私、『お嬢』って子のことよく知らなくて。どんな物を贈ったら喜んでもらえるかな」
「いいのか!?」
「うん。たーちゃんも楽しみにしているみたいだから」
「おさかなたべるっ!」
ジゼルのフォローに、たーちゃんが元気よく同意する。口元にはうっすらとよだれが伝っていた。
「ごめん……。でも、ありがとう。お嬢――ロアちゃんは手作りの物を贈ったら喜ぶと思う」
「手作りの物?」
「あ、別に手が込んだ物じゃなくていいんだ。手作りのクッキーとかジャムとか。そういうちょっとした物の方が喜ぶ。逆に高級品や珍しい品は、リドリーや周りの大人達が普段からプレゼントしまくってるから反応がかなり薄い」
「なるほど。年はいくつなの?」
「明後日で八歳になる」
今日明日ではあまり大したものは用意できないと思ったが、クッキーやジャムくらいなら今からでも十分間に合う。
たーちゃんのレモネードは親父さんに頼むとして。
さすがにそれだけでは寂しいから、何か一品付け足すことにしよう。
例えばジャムを入れる瓶。
瓶なら部屋に材料があるし、さほど時間はかからずに作れるはずだ。
どんなデザインがいいか。
女の子なら可愛らしいデザインがいいかも。八歳なら少し大人っぽい要素を入れてみるのもいいかもしれない。
一体どんな子なのだろうと思いを馳せる。
「俺も聞いておきたいことがあるんだが、リドリーと会った時、あいつ何か箱とか袋とか持ってなかったか?」
「なにももってなかったよぉ〜」
「私もリドリーさんの持ち物は木製スプーンしか見てないよ」
たーちゃんとジゼルが続けて答える。
するとドランは再び思案モードに入った。
「つまりロアちゃんのプレゼントを買うついでじゃなくて、本当にジゼルとたーちゃんを誘うためだけに来たのか? でもこの前会った時はジゼルの名前すら出さなかったのに……」
「リドリーさんが港を離れるのってそんなに珍しいの?」
ジゼルは疑問を投げかける。
ドランは先程、連絡を受けたから急いで帰ってきたと話していた。つまりドランにリドリーの話をした人物がいるということだ。
レヴィ海運は配達をメインとしたギルドだ。
そこに所属するリドリーが生活している場所を離れたとしても、特段気にすることはないように思う。
「他の月なら気にしないんだが、リドリーは今までロアちゃんの誕生日が近くなると港から離れようとしなかったんだ。冒険者時代から付き合いがある相手からの仕事ですら断るって、運送系ギルドや海で仕事をする人達の間では結構有名な話でさ。今日もそのことを知る人達が『何かあったのかもしれない……』って、俺のところに連絡を寄越したんだ」
「リドリーさんにとって特別な日なんだね」
「……特別、だと思う」
なんだか歯切れが悪い返事だ。
ただ誕生日の準備に取り掛かるため、というわけではなさそうだ。ドランは何か訳を知っていて、心配しているのだろう。
「驚いたけど、一緒にいたのがジゼル達でよかった。いつも通り、アイスも食ってたし、ただの思いつきだといいんだが……」
ポリポリと頭を掻きながら呟く。
「ドランにおいしいおさかないっしょにとろ〜っていいたかったのかなぁ〜」
「捕獲を手伝ってほしかったってことか? クイーン個体は捕獲難易度も高いって言ってたし、俺も補充役とか上空からの探索くらいなら力になれるけど……。でもなぁ」
ドランはまだ納得がいかないようだ。グルグルと考え始めてしまう。それほどリドリーとは親しい間柄なのだろう。
「たーちゃん、ジュース飲む?」
「のむぅ」
「ちょっとそこのドリンクスタンドで買ってくるから、ドランと一緒に待っててくれる?」
「わかったぁ〜」
ジゼルは足早にドリンクスタンドに向かう。
オレンジジュースを三人分購入し、戻ってくる。そしてドランにカップを差し出した。
「ドラン、よかったらこれ」
「え、いつのまに」
ドランはジゼルが席を外していたことに気づいていなかったらしい。驚いてカップとドリンクスタンドとを見比べる。
「ありがとう。喉乾いてたんだ」
小さく笑い、ドランはオレンジジュースを飲み干したのだった。
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