━━━第七章・白き三ツ鱗と黒き震皇━━━ 6
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二つの白くまばゆい光が、ついに到着した。
──上品で優雅な六ツ花威を纏った評 利光。
──武骨でいかめしい緋狒威を装着した碓氷 厳時。
かくして、白露様の遺志を継ぎし〝三ツ鱗の<もののふ>〟が、ここに揃ったのだ。
龍の髭を切り落としたと伝わる宝刀──髭切太刀の柄に手をかけつつ、
「予を謀っての己が野望、ここに潰えた事を知るがよい……」
ぞっとする冷たい視線を向けた利光の姿が、消える。
朝の爽やかな空気に舞い踊る紅葉を、一陣の強い寒風が切り裂いた瞬間、
「む……」
光房もその姿を無くしていた。
神速とも言えるスピードでの抜刀術を、容易く避けられてしまったのだ。
細かい砂利がパラパラと落ちる中、気を失って倒れた双七の傍らに、利光が姿を現した。
「くひゃひゃあ、もうキミの力なんて怖くないのさァ!」
縮地のおかげで刃を逃れた光房から、不敵な言葉が飛び出た。少し離れた場所に転がっていた大きめの岩に腰を下ろし、ニヤリと唇の端を歪める。
「左様か……」
だが、さして気に留めた様子も無く──冷ややかに彼を一瞥した利光は、その顔を双七へと移して息をふぅっと吹きかける。
「うっ、お雪さん……?」
以前にも感じた温かさ。これは確か──お雪に癒された時の感触だ。
しかし、安心しきって目を開けた双七は、想像以上のヤバい光景に直面する。
このままでは──師匠の仇に、あらゆる意味で襲われてしまう。彼は絶叫しながら、素早く転がって距離を取った。
「人の顔を見て叫ぶとは……、なんと無礼な……」
「てめぇっ! 一体……なっ、何やってんだよっ」
お雪のような腐女子からすれば、垂涎の的まちがい無しのシチュエーション。眉目秀麗の青年貴族が、うら若き少年に顔を近づけて甘い吐息をかけたのだ。誤解しない方がおかしい。
「癒しの息をかけた……、何か問題でも……?」
「大有りだっ! おと……」
顔色一つ変えずに、さらりと言った利光。感覚の相違に気付いた双七は、喉まで出掛かったツッコみを呑み込んで、
「と……っ、とにかく……、てめぇは師匠の仇なんだぜ。なんでオレを助けるんだよ?」
咄嗟に言葉をすり替え、会話を自然な形に流した。
「痴話喧嘩なら後でやって下さい。震皇を倒すのが先ですよ!」
天下の存亡を賭けた戦いの最中に何やっているんだと──厳時は、彼らの私語を窘める。
「ちっ……、ちわって……、んな趣味はねぇ! 何言ってやがるっ」
「そうだな……、今は兄上を討つ事に集中すべきだ……」
顔を真っ赤にして上擦った声で反論する双七に、眉一つ動かさず冷静に肯定する利光。反応が、実に対照的な二人であった。
厳時は、これまでの経緯を簡潔に話した。その上で、師匠の仇である利光を含めた三人が力を合わせなければ、危機を乗り越えられないと主張し、
「さぁ、白露様より託されし三ツ鱗の力を、見せつけてやりましょう!」
と──締めくくった。
強引な展開で、三つの鱗がついに揃いました(´ω`;)




