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━━━第七章・白き三ツ鱗と黒き震皇━━━ 6



          * * *


 二つの白くまばゆい光が、ついに到着した。

 ──上品で優雅な花威ばなおどしまとったこおりの 利光としみつ

 ──武骨でいかめしい緋狒ひひおどしを装着した碓氷うすいの 厳時げんとき

 かくして、白露はくろ様の遺志を継ぎし〝うろこの<もののふ>〟が、ここに揃ったのだ。


 龍のひげを切り落としたと伝わる宝刀──髭切ひげきりの太刀たちつかに手をかけつつ、

たばかってのおのが野望、ここについえた事を知るがよい……」

 ぞっとする冷たい視線を向けた利光としみつの姿が、消える。

 朝のさわやかな空気に舞い踊る紅葉を、一陣の強い寒風が切り裂いた瞬間、

「む……」

 光房みつふさもその姿を無くしていた。

 神速とも言えるスピードでの抜刀術を、容易たやすく避けられてしまったのだ。

 細かい砂利じゃりがパラパラと落ちる中、気を失って倒れた双七そうひちかたわらに、利光としみつが姿を現した。

「くひゃひゃあ、もうキミの力なんて怖くないのさァ!」

 縮地しゅくちのおかげでやいばを逃れた光房みつふさから、不敵な言葉が飛び出た。少し離れた場所に転がっていた大きめの岩に腰を下ろし、ニヤリとくちびるの端をゆがめる。

左様さようか……」

 だが、さして気に留めた様子も無く──冷ややかに彼を一瞥いちべつした利光としみつは、その顔を双七そうひちへと移して息をふぅっと吹きかける。

「うっ、お雪さん……?」

 以前にも感じた温かさ。これは確か──お雪にいやされた時の感触だ。

 しかし、安心しきって目を開けた双七そうひちは、想像以上のヤバい光景に直面する。

 このままでは──師匠のかたきに、あらゆる意味で襲われてしまう。彼は絶叫しながら、素早く転がって距離を取った。

「人の顔を見て叫ぶとは……、なんと無礼な……」

「てめぇっ! 一体……なっ、何やってんだよっ」

 お雪のような女子じょしからすれば、垂涎すいぜんまとまちがい無しのシチュエーション。眉目びもく秀麗しゅうれいの青年貴族が、うら若き少年に顔を近づけて甘い吐息をかけたのだ。誤解しない方がおかしい。

いやしの息をかけた……、何か問題でも……?」

「大有りだっ! おと……」

 顔色一つ変えずに、さらりと言った利光としみつ。感覚の相違に気付いた双七そうひちは、喉まで出掛かったツッコみを呑み込んで、

「と……っ、とにかく……、てめぇは師匠のかたきなんだぜ。なんでオレを助けるんだよ?」

 咄嗟とっさに言葉をすり替え、会話を自然な形に流した。

痴話ちわ喧嘩げんかなら後でやって下さい。震皇しんのうを倒すのが先ですよ!」

 天下の存亡を賭けた戦いの最中に何やっているんだと──厳時げんときは、彼らの私語をたしなめる。

「ちっ……、ちわって……、んな趣味はねぇ! 何言ってやがるっ」

「そうだな……、今は兄上を討つ事に集中すべきだ……」

 顔を真っ赤にして上擦うわずった声で反論する双七そうひちに、まゆ一つ動かさず冷静に肯定する利光としみつ。反応が、実に対照的な二人であった。

 厳時げんときは、これまでの経緯いきさつを簡潔に話した。その上で、師匠のかたきである利光としみつを含めた三人が力を合わせなければ、危機を乗り越えられないと主張し、

「さぁ、白露はくろ様より託されしうろこの力を、見せつけてやりましょう!」

 と──締めくくった。

強引な展開で、三つの鱗がついに揃いました(´ω`;)

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