表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
79/105

━━━第七章・白き三ツ鱗と黒き震皇━━━ 2


 彼の言う念願が叶ったとは、かつて全国を恐怖におとしいれた伝説の<もののふ>・震皇しんのうったとしか思い当たらない。しかし──外見上の変化は乏しく、もっとおどろおどろしい姿を想像していた双七そうひちとしては、拍子抜けもいいとこだった。

「ど……、どんな化けモンかと思えば……、ナマズのヒゲを付けただけじゃねぇか。びびって損しちまったぜ……」

 肌の色は前と同じで、にょろんと伸びたヒゲだけが目立つ。

 黒い狩衣かりぎぬがボロボロに破れて上半身はほとんど露出しているが、牡丹ぼたん色のはかますねてなどの下半身をおお装束しょうぞくは、靴を除いて無事に残っている。

 そのような格好をした光房みつふさが、今気付いたかのように不気味な視線を向けた──が、すぐに天をあおぎ見ながら恍惚こうこつの表情を浮かべる。コキッと首の骨が鳴った。

「シカトしてんじゃねぇよ!」

 怒りの声を発した双七そうひちが、あかく光った足爪を地面に刺し込み、爆風ではやさを上乗せした突進をかける。続けて、師匠のおお太刀だちを左後方へ大きく引き、遠心力を充分に加えての横薙ぎ。

 敵は動かない、まともに決まる──はずだった。

「うそ……だろ?」

 双七そうひちの顔がひきつった。

 あまりにも突然の出来事だった。光房みつふさの姿を、当たる寸前までしっかりと見ていたが、いきなり消えたのだ。ナマズのひげがにょろにょろ波打っていたのが印象に強い。果たして、空吉そらきちのように超高速走行を行ったのだろうか。

 いや、違う──。

「どこだ、どこ行きやがったぁ!」

 きょろきょろと見回しながら警戒する双七そうひち。近くに人が潜んでいる気配は全く無い。それについては絶対の自信があった。

「やァ、今帰ったよ。ただいまァ」

 空白の時間は一分ぐらい。背後からの声に振り向けば、そこには光房みつふさの姿。

 先程と違って今は気配もある。脳裏をかすめた底知れぬ恐怖を打ち払うべく、

「はぁ? 意味分かんねぇよっ」

 堂々とした態度かつ強気な発言で双七そうひちみ付いた。一筋の冷や汗が、ほほを流れ落ちる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ