━━━第二章・荒ぶる湖畔のスシ屋台━━━ 6
「このワシを侮るな、コワッパァ!」
怒りに吼える道就が大地を蹴った。足跡から炎が吹き出す。
しかし、なりふり構わない特攻ほど迎撃しやすいものは無い。利光は、太刀を正眼からやや降ろし、飛ぶような軽い足取りで駆け出した。
腰をひねって急加速させた大太刀が弧を描き、有り得ないタイミングで察知した利光が羽毛の如きバックステップで避ける。
もちろん、そのような敵の動きは予想済みだ。質で劣るなら数で攻めるしかない。それこそ道就が出した結論だった。
「まだっ、まだ……、まだまだまだまだまだああああああぁぁぁ」
突きと斬り払いを織り交ぜた、息もつかせぬ連続攻撃。刃にまとわりついた炎が大きくなって狂おしく踊り出す。
されど、炎の嵐と化した道就の斬撃は全て避けられてしまった。太刀を水平に寝かせ、急所へ狙いすました平突きでトドメとするべく、必殺の構えをとった利光。
「さらばだ……」
だがしかし──。
少しの間、道就が驚きの表情を露わにした。利光はそのわずかな変化に気付いたものの、何を意味しているのかが分からない。それが両者の明暗を決定づけた。
次の瞬間、背後から地面を砕く轟音と共に多数の飛礫が襲いかかる。何事かと、振り向いてしまった利光。
白き鱗が陽の光を乱反射させ、利光の視界を一瞬だけ白く染め上げた。戦いの最中においては致命的である。まさに、千載一遇のチャンス。道就はあらんばかりの雄叫びを張り上げ、燃えさかる大太刀を横真一文字に、渾身の力で振るった。
だが、超感覚と言うべきか。利光は視覚を奪われてもなお、信じられない動きでその一撃を避けた。ただし、本当に紙一重だったので、大太刀にまとわりついた炎が白い狩衣の袖に黒い斑点を残す。
「む……」
利光がようやく見せた、ほんの刹那の隙。この難敵に打ち勝つのは今しかない。
「今じゃあ!」
大太刀を放り投げた道就は、両の手に全ての炎を集めながら地を這うように突進。敵の懐に入り込んで、この戦いを一気に畳み掛けるべく紅蓮のパンチを乱打する。
「なにっ……」
武器を捨て、素手で突っ込んでくるとは──。
完全に意表を衝かれた利光の腹部に、初撃がクリーンヒット。全身が紅に包まれた。
よろめく彼に、道就の追い打ちが容赦なく襲いかかる。
「ぬぉりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃああああああぁぁぁ」
拳が繰り出される度に、利光を覆う炎が段々と大きくなってゆく。
「これで終わりじゃあ!」
道就は地面スレスレにしゃがみ込み、カエル飛びの要領で全体重を上へ。
己の全てを込めた右アッパーが利光の顎に炸裂し、ラストを締めくくった。
仰向けに倒れた利光は、めらめらと燃え続けながらピクリとも動かない。
ひんやりとした風が火照った身体を通り過ぎ、少しだけ体温をさらっていった。




