保護色には成り得ない色
白い毛って保護色になるのは雪のあると頃くらいですよね……。
昆布がユラユラ揺れる水底から今日わ。アザラシ赤ちゃん名前はまだない。こと、私です。
白って見立つ色ですよね~…海の隠れ家ベスト10に入るであろう海草の群生に隠れてもチラチラとこの私のカワユイ体が見えてしまうのです。野生で白い毛が生き残れない理由に保護色にはならない為に狙われやすいと言う理由があった気がする。
何が言いたいかと言うと……捕まりました……ハハハ……(汗)
右前足でお腹辺りをパタパタと叩いてか~ら~の~ゴロゴロ……今日も私は元気です。
「こいつ喰えんの?」
「見た目脂肪しか無さそうだな……よく燃えそうだ」
それはあれかい? 脂肪が多目だからよく燃えそうだって言いたいの?
失敬な! 確かに脂肪多目かもしれんがなぁ……それは極寒の地でも生きていくための大切な……ここ寒くないからむしろ要らない?orz
てか、アザラシ食べないでぇぇ。私まだ小さいから、もっと大人になった方が食べごたえ……って何言ってんだ私ぃぃ!!
「でもさ兄さん……こいつ喰えないなら逃がしてやろうよ……」
「鈍臭そうだから逃がしても死にそうだな……ま、いいか。」
自分があの保護された小さな海底の町からどれ程離れられたのか分からないが、この人魚の兄弟が私を知らないのなら相当遠くに来ているのだろう。
よくもまぁ遠くまで泳いだもんだ私。こんなフワモコな体で頑張った……
だからさぁ……
逆さ釣りはいい加減離してくれないかな?
食べられるのも嫌だけど……
海の中だから頭に血がのぼる事は無いけど気分としては最悪だし。
いい加減離してくださいよお兄さん。アザラシ虐待で訴えるよ~。出るとこ出るよ?今のあなたに勝ち目内よ?
・・・だから離してよ~!!
人魚の兄弟に食糧として捕まった私は弟の憐れむ視線、一方兄の方は逆さ釣りに意義を唱えクネクネ動いていた私に口許を緩めていた事にこの時気が付かなかった。
ちょっと!イケメンだから何でも許されると思うなよ!!動物虐待反対!待遇の改善を求むぅぅ!!
ドナドナな気分で連れていかれた私と彼との今生のアザラシ生を左右する出会いであった。
うん、色んな伏線を張り巡らせるのは良いけど、いい加減マトモに運んでくれないだろうか?
おい兄(仮)!イケメンだからって私はこの行いを赦さんぞ!私はイケメンが嫌いなんだぁぁ!!フツメン最高!
面倒事が少ないから(女絡みのいざこざとか)
一個上の先輩がよくちょっかい出してきて何れだけ恨まれたことか……イケメンマジ自重しろ。私が何をした。そうだよ……あのイケメン先輩が放っといてくれたら……
――――死なずに済んだのに――――
「ねぇ、いい加減小脇に抱えるとかしてやりなよ兄さん……その子泣いてるよ?」
「………あぁ、すっかり忘れてた(楽しかったからつい放置してた)」
チキショ!そんな申し訳なさそうな顔してもダメだから。もう騙されるものかぁっ!!顔がいいからって許されるのは小学校低学年までだ!
グズン……
「きゅふぅ……きゅふぅきゅふぅ……」
あぁ、泣けてきた。アザラシ赤ちゃんが泣いているなんてさぞかし可愛いだろう。けど、その赤ちゃんは現在私なんだよね……あぁ、誰得だよ。せめて私以外の純粋な子が成れば良かったのに。
私は見れないんだぞ!
「きゅーーー!…きゅふぅ……きゅぁーんきゅーん」
チキショー……虚しい
「ほら、もう少し優しく扱いなよ!」
「う~ん…」
王子様みたいな弟(仮)とちょっと近寄りがたいイケメンの兄(仮)の如何に私が繊細そうに見えるか、兄(仮)が何れだけ虐待的な扱いを私にしているか。弟君は兄(仮)に説いているが、私の扱いは改善されることはなかった。
あれから何だかんだあってあの兄弟の所にお世話になっている。
今は落ち着いている私だが、いつ食べられるのかと戦々恐々していた。漸く一週間が過ぎて漸く昨日辺りからこの兄弟を信用できるようにホンの少しなってきた気がする。
まだ心から信用してませんが何か?
「おいブラン……また食べてないのか……」
「ブランまた残してるの?」
「きゅふぅ!」
食べたくないの……太ったから。
そうですよ。この一週間またあのゴロゴロしている生活に戻ったもんだから太ったのさ。首のクビレ何処よ?な体型になってます。見ため衣過剰な短い海老フライだよ。
寒いところで生きてかないといけない野生のアザラシとは違って暖かいからね私の居る場所。それに食べないのに太るってドユコト?
あれか?何時も魔力吸収体質の所為か?そうなのか?
それともただ単に運動不足?
「怒ってるけど……どうしたの?」
「コイツの機嫌は海より複雑だな」
それと、初めてアザラシ赤ちゃんになってから名前をつけられた。ブランだそうです。どっかの言葉で白って意味らしい。何かお菓子についてそうな名前だね……あぁ、今切実にチョコレートが食べたい。今喰ったら確実に死ぬかもしれんけど。
※動物にチョコレートは毒です。特に犬猫には与えないでください。死にます。無闇に動物に人間の食べ物を与えないようにしましょう。それが動物の為です。
ま、食べられないだろうけどね……ここ異世界だし、海のなかだし……忘れよう。うん。それが身のため。
あの二人よりも私に対する扱い(食べ物関連)は誉めてあげよう。上から目線なのは気にしないで。私の声は聞こえないんだから。
この兄弟は新鮮な小魚(多分鯵等)を私は食べないのに……何時も新鮮な物に替えてくれる……ちょっと罪悪感が。
「コイツ……どっか悪いのか?」
「ん~……医者に見せた方が良いのかなぁ…でもブランみたいな生き物見たこと無いよ? 下手な奴に見せたら……どうなるか分からないよ?」
「それもそうか……最悪どこぞのマッドな研究者に生物兵器実験にされるかもな」
「・・・あー…っと、兄さんの事はたまに分からなくなるよ…うん。」
「要するに、あまり外に出さない方が良いって事だ」
今の兄の方の言葉にどこか心のどこかで「いや、それどこの製薬会社だよ。」とか「いやいや、私が生物兵器になったところでどうするよ」とか。
どうも私はバイオレンスなゾンビ(途中からゾンビじゃなくなった)ゲームにご執心だったもよう。
あれだね、現実での鬱憤をゲームで銃をぶっ放す事で解消してたんだよきっと。
疲れてたのかなぁ…前世の私。癒しが欲しくて行き過ぎて自分が癒しそのものアザラシ赤ちゃんになったんだったら…うん。
お疲れ様です前世の私。
でもあらかじめいっておくけど私中2な病は発症しておりません。何度も言います。発症しておりません。
そんな事を心の中で必死に言い訳している私が無意識の内にゴロゴロして兄弟を和ませていたのは知るよしもなかった。
白地に黒い目は最強の可愛さだと叫びたい。
シロクマ然り、パンダ然り……勿論アザラシ赤ちゃんもね。