第八話 永正元年、約束
この作品は、歴史的な史実とは別次元の物語です。
妄想的で非常識、そして変態的な展開ではありますが、
今後ともよろしくお願いいたします。
十五歳になった。いよいよ来年は朝孝(卜伝)の武者修行まで一年を切る。
以前から京まで同行したいと伝えているので、約束した刀を二本、制作していた。
品質は上質品レベルに設定した。ここでひと悶着あったのだが、あまりにも無駄なく簡単に刀を仕上げるものだから、適当な仕事をしていると勘違いされ、文句を言いにきた者がいた。
親父に仕上がった刀を見せた。……
「(沈黙)お前。何処で。こんな……」
「何処でって、親父の仕事見て覚えたから、親父から教わった」と答えると、
「そりゃあそうだなー家から出る事なかったしなー」一瞬の静寂が訪れた。
兄も刀を見てぞっとして、いつもよりキツイ目で見られた。
嫌な予感がするが、あと数ヶ月で旅に出るし、来年には嫁に来る姉さんも頻繁に家の手伝いに来ているし、おめでたいことが待っている。そんな目で見ないでもらいたい。
親父に合格をいただいたので、そのまま卜部家の常賢様と朝孝(卜伝)の元へ、元服の前に届けた。
多少緊張したが、「全て一人で仕上げました」と伝えた。あの時の約束を果たしたことを。親父も同行したので、
「こいつ、本当に一人でやりやがった~」と付け加えてくれて、信じてもらえた。
香様は四歳の時の約束など出来ないと思っていたので、今回は本当に涙を流して喜んでくれた。
朝孝(卜伝)には、旅路には何があるかわからないからと、予備にもう一振り用意している。高級品(名刀)より少し上を制作中だ。旅に出てから渡すつもりでいる。
今回の旅は、行きは東海道を、帰りは中山道から甲州街道を通る予定だ。
以前から小田原商人の又平さんが小田原まで同行してくれることが決まっていたので、日程を調整して鹿島入りしていた。
実は半年前から、小田原に拠点を又平さんに探してもらっている。
たぶん又平さんは紐付きではないかと思っている。
まぁ~北条家(伊勢家)の支援があれば安全に暮らせると……思う!
知らないふりをするのも重要だ。
希望していた小田原の少し郊外の村を拠点にして、工房の備品を揃えていくだけだ。又平さんの話では、その村は足柄の南側で山間の小さな集落だそうだ。
村長の友蔵さんは頼りになる人物で、子供が三人いて俺と一緒だ。隣の空き家を借りる予定だ。京から帰ったら空き地に簡素な工房を建て、本格営業だ。今から工房用の木材を搬入し、重い鍛冶道具も搬入している。
鹿島は大きな山が無いため鹿とか熊とか猪とか見かけないが、足柄は期待できる。肉が歩いているはずだ。弓が必要だと思うから、今から部品製作して当日まで準備しておこう。それとパンも食べたいし、麺も食べたい。ラーメン食べたいな~ あ~腹減ってきた。
旅立ちまで数日に迫った。ここ数日は又平さんと行動を共にしている。数日前に又平さんが来た際、千葉氏の城下の店で包丁の注文をもらってきて、急遽包丁を作ることになった。数時間で刃付け前まで仕上げ、その後は仕上げ作業だ。その日三十本完成させた。今回は柄なしでの納品だった。
次の日の昼過ぎに納品して鹿島に帰ってきたので、疲れを吹き飛ばすために、鰻をふるまった。鰻と聞いてぎょっとしていたが、匂いと煙にやられて見物にやってきた。想像と違って旨そうな見た目にやられ、早くちょうだいしている犬の姿を想像してしまい、クスッと笑ってしまった。
「みんなそうなるんですよ!」と言って、出来立ての鰻を、
「精がつきますよ。お酒と一緒にいただくのもいいですよ」と言い、又平さんの前に皿とお酒を置いてすすめた。
「美味い!これ売れるよ!!!」と大絶賛だった。
前日までなんやかんやで忙しくしていたら、兄嫁がやってきて鹿島のお守りを届けてくれ、旅の無事を願ってくれた。有難くいただいた。
幼稚で語彙力が乏しいことは自覚しておりますので、
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