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ハズレ王子 Ⅱ 〜輪廻の輪から外れた俺は転生させられて王子になる〜  作者: さつき けい


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63・伝えたいこと


 晩餐会は食事だけで解散となり、あとは用がある者だけが残り、個別に話したい相手と別室での会談となる。


新郎新婦は早めに二人っきりにさせてあげないとね。


まあ父王の場合は、三人の妃と四人で会談らしいけどな。


あくまでも会談だからね?。


 離れのほうも今はクオ兄夫婦を水入らずにするため、二人を残し、残りの全員が王宮内でそれぞれ楽しんでいる。




 俺も東の部族長と次回の小赤用ガラス容器の話を詰めているところだ。


ヒセリアさんと俺の実祖父のマッカス商会長もいるが、もう一人。


「孫のザッジースが大変な無礼を働いてしまい、申し訳ございませんでした」


俺は一番の大者、イロエストの大商人に頭を下げられていた。


うわっ、この人、ザッジの祖父だったのか。


 でも話を聞くと小赤の件はやはりザッジの独断で、馬車に隠したこともこの人は知らなかったようだ。


本当かどうかは分からないけど、商売は信用第一。


下手な嘘は魔道具で看破される世界だから、下らないことはしないと思う。




 大剣の護衛さんは、俺の体型が小太りではなくなっていたので驚いている。


「あははは、ちょっと病に罹りまして」


ふう、誤魔化すのも大変だ。 でも嘘は吐いてない。


「王太子殿下だけでなく、コリルバート殿下もぜひイロエストにお越しください。


私としては、その見事な魔法で一手お手合わせをお願いしたいです」


うっ、やっぱり見た目通りの脳筋さんだったー。


「いや、ヴェルバート兄上が他国で修行の間はどこへも行く予定はないです」


ハッキリと断っておいた。


曖昧にしておくと絶対絡まれるからな。


 ブガタリア滞在中に、東の部族長の案内で温室とガラス工房への見学の許可を出しておく。


「はっきり申し上げて、小赤はまだまだ改良の余地があります。


出来ましたら研究費のご支援をいただけましたら、優先的に販売いたしますよ」


ザッジのお祖父さんがニヤリと口元を歪める。


「これはこれは、マッカス殿のお孫さんだというのは本当のようだ。


将来が楽しみになりますな。


先日のお詫びも兼ねまして、喜んで支援させていただきたく存じます」


ふう、これで俺の小遣いも安泰だな。


 


「それと」


ん?、まだ他に欲しい物があったかな。


「王太子殿下のイロエスト滞在中の費用その他、全てこちらで負担させていただきたいと思います」


へっ、なんで?。

 

「ヴェルバート殿下は、あの皇帝陛下の実孫でいらっしゃいます。


ブガタリアとしてはあまり、あちらと王太子殿下を近付けたくないのではありませんか?」


確かにイロエストに滞在するとなると、帝国から色々と手を出して来そうだ。


イロエストの大商人というクッションが間にあるだけでも兄様の負担が減る。


「それは確かに有りがたいお話です。 その件については、ぜひ国王陛下と打ち合わせをお願いいたします」


俺は都合良過ぎる話に、真剣な顔で大商人を見つめる。


「これも投資の内でございますよ、コリルバート殿下」


ふっふっふって、笑ってるよ、おい。


なんか悪代官と越後屋みたいだ。


いや、時代劇は見たことあるけど、それがこちらの世界に当て嵌まるのかは分からん。




「コリルバート殿下、ちょっとお話が」


ズキ兄が声を掛けて来たので、後は祖父じい様に任せて、俺はその場を離れる。


庭のほうに連れ出されるが、冬が目前なので陽の落ちた屋外は寒い。


「どうしたの?」


「大切なお客さんがお待ちだぜ」


暖かい毛布を渡される。


 視線の先には東屋あずまや


知ってる人影が、建物の窓からの明かりに揺れていた。


「コリル、あまり婚約者を待たせるな。


まあ、お前が相手出来ないっていうなら、僕が代わりに貰ってやっても良いよ」


そう囁いたズキ兄は、俺の肩を叩いて建物の中に戻って行く。


俺はズキ兄の背中を見送りながら、何故か胸が痛かった。




 今回、ヤーガスアにはズキ兄に迎えを頼んだ。


急な招待なので領主夫妻は来られないが、代理でピアが来ることになったのだ。


表向きは婚約者同士なので、ピアとズキ兄は二人だけで片道二日間以上、過ごしている。


何か、あったんだろうか。


「ピア」


俺は彼女の背後に回り、その身体を毛布で包み込む。

 

「コリル」


うれしそうに微笑む彼女の手に触れると、冷たい。


テーブルに置いてある茶器やポットも冷めてしまっている。


俺はすぐに結界を発動して、東屋だけを隔離した。


空間を暖め、ポットに付いている魔道具でゆっくりとお茶の温度を上げる。


片腕でピアの肩をずっと抱いたままで。




「ごめん、寒かったね」


羽織った上着の襟元を掻き寄せ、ピアは首を横に振る。


「いいえ、私が勝手に待っていただけだから」


俺の会談が終わるのを見計らって、誰かにピアがここにいると知らせる予定だったのだろう。


だけど、俺の相手が大物過ぎて誰も声を掛けられずに時間が経ってしまったようだ。


 温め直したお茶をカップに注ぐ。


「ピア、これを飲んで身体を温めて」


「ありがとう」


俺はピアがお茶を飲む様子をじっと見ていた。


 頭の中をさっきのズキ兄の言葉がぐるぐるする。


『僕が代わりに貰ってやっても良いよ』


あれはきっとズキ兄の本心だ。


俺はズキ兄に特定の女性がいないことに甘えて、ずっとピアの相手を強要していた。


こんな素敵な女性が側にいたら好きになっても仕方ない。


婚約者がいると分かっていても、余計に燃える?、のかな。


でもそれを考えること自体が、ピアにもズキ兄にも失礼だって分かってる。




 俺はピアの手を両手で包み込む。


黙って暖めているとピアが口を開く。


「今日の花嫁、とても素敵だったわね」


「うん」


俺はただ視線を落としたまま答えた。


「コリル、私たちも」


「ピア」


彼女の言葉を遮る。


顔を上げ、彼女の目をじっと見つめた。


「ごめん、俺、キミにまだ言ってないことがある」


ピアは頬を染めてじっと俺を見返す。


あー、これはプロポーズ待ちの顔か。


ま、不味い。




「ピア、笑わないで聞いて欲しい」


そう言いながら、俺は目を逸らす。


「はい」


「どんなに変でおかしくて、まるで現実的じゃなくても」


「え、ええ」


可愛らしく首を傾げるピア。


俺の心臓がドクドクと激しく波打つ。




「ピアは神様を信じる?」


俺は返事を聞きたい訳じゃなかったので話し続ける。


「俺は二度、神様に会ったことがある」


ピアは黙ってカップにお茶を淹れてくれた。


俺はそれを喉に流し込む。


「俺の魂というか、中身は、違う世界で産まれて、死んだ」


カップを置く。


「俺はその時に神様に拾われて、この世界で産まれ直した。


だから、俺には以前生きていた違う世界での記憶があるんだ。


それが、俺が『変わり者』だって言われる理由だ」


「コリル」


「そして、三年前の暴動に巻き込まれて、俺はまた死んだ。


いや、本当は前の世界で死んだ時と同じ分しか用意されていなかったから、死んだのは寿命だったんだ」


今度はピアがカップに口を付ける。


「あの時、俺が死んだことで神様にとって不都合が起きたため、もう一度、神様から命を与えられたんだ」


俺は戸惑うピアの顔を見て、苦笑を浮かべる。




「信じられないよね。 でも俺が偏食なのは、前の世界とは食べ物が違い過ぎるからなんだ」


分かり易い例だと思うけど、やっぱり無理があるかな?。


「そうね、信じるかどうかはまだ分からないけど、コリルの常識が私たちと違う理由が分かった気がするわ」


ピアが微笑む。


「それで?」


首を傾げるピアは、きっと分かってるはずだ。


「俺はキミと一緒になって良いのかな」


身体はこの世界のものだから、肉体的には子作りも可能だと思う。


だけど。


「前の世界で平民だった俺は、この世界で王族として生まれてしまった。


でも俺は王族として生きることが出来ない。


だって、分からないんだ、どうやって生きていけばいいのか」


「だから。 平民になりたかったのね」


ピアはそっと俺を抱き締めた。



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― 新着の感想 ―
[一言] 転生者な事話したのか、自意識の年齢まで考えると ヴェリルとは違った方向のロリコンな事を、別名光源氏(明後日の方を見ながら
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