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ハズレ王子 Ⅱ 〜輪廻の輪から外れた俺は転生させられて王子になる〜  作者: さつき けい


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52/65

52・そこにいること


 翌日、俺は朝から離れの居間でマルの勉強を見ている。


ツデ国からマルの侍女や使用人がこちらに到着するまで、暇だからという理由で本人に頼まれたのだ。


教師なんて柄じゃないけど、他に手が空いてる者がいなかったから、たまたまだけど。


「ギディ、交代してよ」


「今、忙しいので」


何で断られたんだろう、俺が主のはずなんだがなー。




 クオ兄とツデ国の侍女であるタリーの結婚の話は了承している。


俺は元々反対する気はなかったけど、もう少し時間がかかるとは思ってた。


「好きになっちゃったら、その、もう我慢出来なくなって」


直情型のクオ兄の事情っぽいね。


好きな相手と同じ屋根の下で暮らしてて、ずっと一緒にいると思うと分からんでもない。


うん、オトナってさ、アハハハ。


俺の口からつい乾いた笑いが漏れた。


 でも二人の結婚について、不安がないかといえば不安しかない。


「なぜ?。 二人は幸せなのじゃろう?」


あのな、マル。 いいよね、子供は無邪気でさ。


「幸せってのは長続きしないから」


恋愛ってそういうもんだ、と俺は思ってる。




 前世の俺の両親だって、きっと恋愛してた頃は幸せだったんだと思う。


どちらか一方の気持ちが大きかったとしても、それを受け止めての結婚だったはずだ。


だけど人の気持ちは変わる。


子供が産まれて、何年も一緒にいて、いや、それだからこそなのかもしれない。


冷めて行く心、荒れる家庭。


それが俺の前世での『家族』だった。




 もちろん、今の『家族』は違う、たぶんね。


長く一緒にいると恋愛感情から、徐々に家族への愛情に変わるんじゃないかと思う。


異性としての『好き』から、身内としての『好き』に。


それが出来なかったのが俺の前世の『家族』で、今の俺の『家族』は真逆だ。


最初は打算の結婚でも、子供を産み、一緒にいるうちに受け入れるのが普通になっていく。


個人差は多少あるけど、暖かく、すべてを受け入れてくれる。


「仕方ないなあ」なんて言いながら。


そう信じられる『家族』だ。




「だから、幸せってのは時と場合によって変わるってことだよ」


恋愛時の『幸せ』と、結婚してからの『幸せ』はきっと違う。


「それでも、今は幸せなら良いのではないかの」


「マルは年寄り臭いことを言うんだな」


マルはプウッと膨れ、俺は声を出して笑う。



 

 不要の紙をノートのように綴った帳面を作って渡した。


マルが何かを書き込んでいるので、それに目を落とす。


「マル、その答えは違うと思うぞ」


「え、どこが?」


初歩の算術をやらせているんだが、俺はこの世界での考え方がよく分からない。


前世での九九くくとか独特過ぎて他人にうまく説明が出来ないんだ。


その考え方をそのまま教えて良いのかも分からないしね。


かといって、俺の教師だったデッタロさんに訊きたいけど、彼はすでに平民学校の校長になっているので個人的に呼べないし、マルを平民の学校へやることも出来ない。


せめて、もう少しブガタリアに慣れてからじゃないとな。




「あ、そうだ」


俺は立ち上がる。


「もう勉強は終わりか?」


うれしそうにマルも立ち上がる。


「いや、ちょっと待ってろ」


そう言って、俺はパルレイクさんの部屋へ向かった。


扉を叩くと奥さんのヒセリアさんが顔を出す。


「はい、あら殿下、どうされました?」


「ちょっと訊きたいことがあって」


彼女はどうやら二人目を妊娠中らしく、最近は部屋にいることが多い。


「息子さんの勉強は誰がみてるんですか?」


パルレイクさんとヒセリアさん夫婦には、マルの一つ年下の男の子がいる。


一緒にマルの勉強を頼めないか訊いてみようと思ったんだ。


「あら、うちの子の勉強はセマちゃんたちと一緒に王宮ですわ」


あっ、それは盲点だった。


「ありがとうございます」


俺は礼を言ってマルのところに戻る。




 俺はギディに声を掛けて、マルを連れて王宮へ向かう。


「わらわの世話係はコリルバートさまではないのか?」


「ああ、違うね。 マルはヴェルバート兄の客人になるからな」


だから、俺が勝手に決められないんだよ。


 まずはヴェルバート兄の執務室だ。


警備兵に確認してもらおうとしたら、中から扉が開いた。


「どうしました?、マルマーリア姫」


うおっ、兄様が出て来るとは思わず、俺は一歩後ずさる。


「ちょっとお願いがありまして」


「とにかく中へ」


兄様はニッコリと笑い、執務室で椅子を勧められて座る。


「妹たちの授業にマルマーリア姫も一緒に参加させてもらえないかと思いまして」


「ああ、なるほど」


ヴェルバート兄の側近から、妹たちの勉強の予定表みたいなのを渡される。


 それをマルと二人で見ていたら、ギディがタリーを連れて入って来た。


「失礼いたします」


二人はきちんと礼を取り、部屋の隅に並んで立つ。


どうやらギディはタリーを早く一人前の侍女にするために忙しいようだな。


「侍女の立ち位置はだいたい扉のこちら側になります」


「はい」


付きっきりで教えている。


そりゃ忙しいな。


しかし、男性と女性では違うこともあるだろう。


あとでカリマ母さんに一言お願いして交代させたほうが良さそうだ。


ギディは結構、厳しいからね。




「そういえば、彼女のご両親はどうされているか、知ってるかい?」


指導されているタリーを目の端で見ていたら、兄様が小さな声で訊いた。


「心当たりがあるんですか?」


ヴェルバート兄は静かに頷いた。


 王都の東端にヤーガスア難民が固まって住んでいる地区がある。


以前通った滝がある辺りだ。


あそこなら観光地なので頻繁に行商が通るし、凍らない滝のお蔭で雪もそんなに積もらない。


「なるほど、行ってみます」


季節はすでに冬に近く、早めに行かないと雪が降り出すと動けなくなる。


「マル、俺はしばらく出掛ける。 ヴェルバート様の言うことをちゃんと聞くんだぞ」


「う、うむ。 分かったのじゃ」


ヴェルバート兄を見るマルの頬が少し赤い。


キラッキラの王子様だからなあ。


そんな兄様にじっと見られたら俺でもドキドキする。


マルもまだ落ち着かないだろうが、ゆっくり慣れてくれ。




 俺はマルを兄様に預けて席を立ち、ギディとタリーを呼んで一緒に部屋を出る。


そのまま侍女の控室に向かい母さんを探す。


妹たちは勉強の時間だったから、ここにいるはずなんだ。 あ、いた。


「あら、コリル。 珍しいわね」


「うん、母さんにお願いがあって」


頭を掻きながら侍女教育をお願いする。


「まあ、そうだったわね。 気が付かなくてごめんなさいね、ギディ」


「いえ、とんでもございません、カリマ様」


勝手に頼んじゃったけど、良かったのかな。


横目でギディを見ると少しホッとした顔をしてたから、大丈夫みたいだ。


「では、タリーをお預かりするわね」


「はい、よろしくお願いします」


俺とギディは揃って礼を取った。




 俺は厩舎に向かいながら、先ほどの話をギディにした。


「タリーのご両親がいらっしゃるのですか?」


「いや、そこはまだ分からないけど」


諜報部隊のラカーシャルさんなら知っている気はする。


「分かりました。 私は離れでラカーシャルさんから話を聞いて来ます。


コリル様は先に厩舎のほうへ」


「うん、分かった」


俺はクオ兄に弁当を頼むように言って、厩舎へ回る。


グルッグルルルゥ


「おい、やめろー」


絶賛、グロンに嘗め回され中である。


ゼフもノソリと出て来て参加しやがった。


「ぐああ、あははは」


久しぶりに弟たちとガチで戯れていると、入り口にソミが顔を覗かせた。


「あ、ソミ、すまん。 大丈夫だよ、じゃれてるだけだから」


ウィンクして手を振っておく。


うん?、何故かソミが赤くなった。




「コリル様、それらしい人物はいるようです。


それと荷物も鞄に入れてあります。 五日ほどの日程でよろしいでしょうか」


「うん、ありがとう」


あれ?、ギディが何となくソミに冷たいぞ。


何かあった?。



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― 新着の感想 ―
[一言] 重い服着て無いから刺されると大ダメージやぞ(目反らし
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