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ハズレ王子 Ⅱ 〜輪廻の輪から外れた俺は転生させられて王子になる〜  作者: さつき けい


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39/65

39・再会すること


 町の近くまで降下してもらい、俺はテルーから飛び降りる。


風を巻き起こし、危なげなく着地した。


ピィー


テルーに向かって手を振る。


「さて」


エオジさんたちを探しに行こうとしていたら「殿下!」と声を掛けられた。


「おお、警備隊の」オニイサンである。


「あのぉ、あれも殿下の魔獣で?」


こわごわテルーが去った方角を指差している。


まあ、魔獣といえば魔獣かな?。


「うーん、娘だと思って雛から育てた大鷲、だね」


「娘?」と呟くオニイサンの肩に、俺は手を置く。


「そんなことより、ブガタリアの皆んなはどこかな?」


「あ、はいっ、ご案内します」


オニイサンがここに居るってことは、また国境警備隊に戻ったのかね。


俺の配下にしてくれって言ってたのに。


「隊長から必ず殿下が来るから、ここで待ってろって言われてて。


ホントに来てくださって、うれしくって」


何故かボロボロと泣き始める。


はあ、なんだそりゃ。


しっかし、このオニイサンは泣き虫だな。




 二十人残した精鋭のうち、五人がこの町に残っていた。


「殿下、どうされたんすか」


驚きながら笑顔で迎えてくれる脳筋たち。


「ヤーガスアでの用事が終わったから来たんだよ」


彼らは俺が倒れたことは知らないようだ。


「エオジ隊長は姫と一緒に王都にいらっしゃいます」


警備隊のオニイサンが俺の後ろをついて来る。


俺が不思議そうな顔で振り返ると、


「俺が、俺がっ、ご案内したいぃぃ」


なんて言い出す。


うん、分かったから。


もう何も言わないよ、だからそんなことで泣くなってば。




 時間的には夕方だったので、ここで一泊して翌朝、ツデの王都へと向かう。


泣き虫が俺の護衛みたいな顔して付いて来る。


「エオジさんたち以外は来てないの?」


「はい、後は誰も来てないです」


マル姫とエオジさんと護衛の騎士が一人。


ブガタリアの王宮の文官と医療関係者が数名、東の砦の兵士と合流してやって来たようだ。


 俺は、国境の町に居た精鋭から一体だけ騎乗用のゴゴゴを借りた。


それに泣き虫と二人乗りで沼地の端をぐるりと回る。


しばらく走ると、やがて少し大きな町が見えて来た。




 町の中は前に来た時より少し元気になった気がする。


広場に居た脳筋連中に挨拶し、ゴゴゴを預けておく。


それから、一度入ったことのある館に案内された。


建物の中はバタバタのゴタゴタだった。


かなり大勢が動き回っている。


 俺は、見覚えのある爺さんを発見して近づく。


「おや、あなたは」


「お久しぶりですね。 お邪魔します」


爺さんは俺のことはヤーガスアから来た傭兵の一人としか思っていないはずだが、丁寧に挨拶される。


この人はマルの爺やさんで、王族の侍従らしい。


俺は爺さんにお茶に誘われたが、その前にやることがある。


「ブガタリアから医療関係者が来ていると思いますが、どちらに?」


「はいはい、ご案内いたします」


以前来た時に入った建物の奥へ向かう。



  

 病人がいる部屋に入るとブガタリアの医術者の姿が見えた。


俺がケガした時にお世話になった治癒師のオジサンである。


「殿下、お身体の具合はいかがですか?」


さっそく首に手を当てられた。


「大丈夫だよ。 それより現在の状況を知りたい」


俺の身体をペタペタ触る手を振り解けず、好きにさせる。


心配してくれてるのは分かるからな。


「では、こちらへ」


一緒に廊下へ出る。


「すみません、どこの部屋も埋まってますので」


「構わない」


建物の外に出て、二人でベンチのような固い椅子に腰掛けた。


泣き虫が俺の後ろに立つ。




「殿下が医療関係者を連れて来いと言われたのは正解でしたね」


俺はツデを出る前に、東の砦に戻る連中に王宮宛の伝言を頼んでいる。


それがちょうどヴェルバート兄からの連絡と重なり、国交の準備に向かう文官と同時に出発となったみたいだ。


「それで、お願いした件は?」


俺は声を抑える。


「はい、女王陛下、並びに王女殿下お二人とも無事に回復に向かっております」


俺は安堵のため息を吐く。




 命に貴賤きせんはないのは分かっているけど、俺は王族だから国の指導者が変わるのは困る。


優先順位は自然に決まっていく。


マルの身内だから助けたかった訳じゃない。 ないったらない。


 建物内は以前来た時より清潔になっていた。


医療関係者の指示で大勢の人たちが清掃に走り回っている。


「殿下が秘伝の薬を惜し気もなく全て置いて行ったと伺いました」


まずは俺の薬を重篤な患者に飲ませ、他の者には希釈して与えながら治療していたそうだ。


俺から薬を預かっていた兵士長が、


「わしらでは病の判断なんて出来んからな」


と、医療関係者が到着した時点で渡したらしい。


何せ、患者の数が多過ぎる。


治癒師のオジサンは基礎体力を向上させる回復魔法より、外傷や病気の治療が得意な医術者だが、それでも魔法だけでは到底救い切れない数だった。


だから薬の併用は必要だったのである。


俺としては兵士たちで使ってもらっても良かったんだが、さすがブガタリアの男だな。




 俺は庭を見回し、ギュッと手を握り込む。


やはり、墓である土盛りが増えている。


 あの時、もし俺が王族じゃなくただの兵士で、ここに残っていられたら。


いや、どうせ俺には誰も救えない。


分かってた。


「文官は誰が?」


俺が訊ねると治癒師のオジサンが黙ってしまった。


まあ、名前を聞いても俺が分かるかどうかは微妙なんだけどね。


王宮で働いてる者は百人近くいるし、高位文官でも名前と顔が一致してるのは極一部だけだ。


「そういえばエオジさんは?」


俺の気配を察知したら飛んで来そうなんだが。


「その、国交樹立の立ち会いに出ておられるかと」


は?。


「なんで?、マルマーリア王女の護衛はここに到着したら終わりでしょ?」


ここはツデ国の王族の館らしいので、ちゃんと警備隊がいるはずだよな。


しかも『樹立』?。


打ち合わせも終わっていないだろうに。


治癒師はまた黙り込む。




「そうだ。 俺、高熱が出たんだけど、ここの人たちと同じ病だと思うんだよ。


それが治ったってことは、抗体?、ってのが出来てるはず」


俺は治癒師に向かって治癒魔法を使う。


「えっ、な、なんですって?」


魔法を浴びたオジサンが目を閉じて考え込む。


「なるほど、分かりました。 いけると思います」


そう言って立ち上がり、俺に一礼して病人のところに戻って行った。


 ポカンとしていた泣き虫が首を傾げる。


「今のは何ですか?」


「ああ、あれか」


さて、俺も椅子から立ち上がる。


「治癒の魔法を伝授したんだよ」


ブガタリアでは身体で魔法を覚える。


自分が得意とする属性のうち、体感した魔法はより早く習得出来るのだ。


俺は医術系魔法はあの人から教わった。


「一度、病に罹ると体内にその病に対抗する魔力が出来る」


その魔力をオジサンに魔法として渡した。


「えーっと、よく分かりません」


「ふふ、いいよ、分からなくても。 ただ、これからはこの病に罹る人は少なくなるってことさ」


「それなら良かったっす!」


俺たちは笑いながら移動する。




 途中でゾロゾロと歩く一団に出会う。


「あ、トカゲ王子!」


「あん?」


マルが俺に気付いて駆けて来る。


近寄る前に足元にツンツンを出す。


「きゃあああ」


ん?、なんか前とは叫び方が少し変わったか?。


 よく見ると、一緒にエオジさんやブガタリアの文官たちがいた。


見慣れない顔はツデ国の官僚たちだろうか。


そして。


「え?」


「コリルバート、ご苦労様」


俺は急いで正式な礼を取る。


「ヴェズリア妃殿下、な、何故ここに」


「ふふふ」なんて笑ってるけど、俺が知る限り、ヴェズリア様がブガタリアを出たことは一度もない。


「外交官として、女王陛下のお見舞いに来ました」


いやいや、そんなうれしそうな顔されてもね。


そういえば、ゴゴゴを預けに行ったとき、いやに立派なのがゴロゴロいるなぁ、とは思ったけども。


先に誰か教えてよ!。



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