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レディーナ様との出会い

マリア視点

思えばあたしは幼少期より、絵本の話で見る『お姫様』が大好きだった。

スカートをヒラヒラとはためかせ踊る舞踏会を想像し胸を躍らせたものだ。

(まぁ、所詮絵本の中の物語よね)

どこか冷めた子供であったあたしは、現実と夢を混同させる程バカでは無かった。

(あたしの周りにいる大人は絵本のお姫様と全然違う。)

穿いてるのはヒラヒラでは無く、機能的で地味なスカート、言葉使いも「ですわ」なんて言わない。優雅な微笑みなんてもっての他である。


「えっと、次は野菜屋さんか…」

そんなお姫様とは程遠いお母さんにおつかいを頼まれ大通りを歩いていた時、あたしは運命の出会いを果たす。

「お嬢様、この先まっすぐ行ったところにストレイジ学園がございます。」

年老いた男の人の声と『お嬢様』と言う言葉に反射的に顔を向けたそこには、絵本の中で見た『お姫様』が居たのである。


その日からあたしは渋る両親を説得し、必死に受験勉強してやっと『ストレイジ学園』に入学する事が出来た。

そんなあたしとレディーナ様の出会いはこの学園で同じ教室になれた事から始まる。


入学して初めて踏み入れた教室はまさに夢見た通りだった。

キラキラと装飾された紺のベストを着ている男子生徒とヒラヒラと青色鮮やかに広がるスカートを穿いた女生徒達が優雅な笑みを浮かべながら談笑していたのである。

(まるで絵本の世界だ!)

それがあたしの学園における第一印象だった。

次に実感させられたのは「住む世界が違う!」だった。

やっぱり貴族は貴族と。庶民は庶民とつるむもので、接点がまったく無かった。

そう現実を実感して4年が経ち、5年生になった。

クラス替えがあったとしても、もう夢は見ない。気にするのは庶民の友達が何人いるか?と言う事だけだ。

新しい教室内に入って自分の席に座る。ちなみに右の廊下側が庶民、左の窓側は貴族となっている。窓ガラスはもちろんUVカット加工してある。


「レディーナ、隣のクラスだよ。」


その時廊下から笑顔を見せた人物を見てあたしは驚愕し、教室内が歓喜の悲鳴で溢れた。

見目麗しい事で有名なアルバート様がいらしたのだ。

(アルバート様が声を掛けたという事は!?)

あたしは教室後方左側に目当ての人を見つけ目を見張った。

(レディーナ様だ!!)


「マリアさん…だったわよね?ここ教えていただけるかしら?」

「レディーナ様!?」

ある日の計算の授業後、まさかのレディーナ様から声が掛かりあたしの胸が高鳴った。

先程の授業中教師が出した少し難しい問題を、たまたま指名されたあたしは解けたのだ。

「失礼、隣に座っても宜しいかしら?」

レディーナ様は戸惑う事なく庶民の席に座ってあたしに柔らかな笑みを向けてくれた。


レディーナ様の笑顔はとても素敵だ。

太陽の様に暖かく、包み込む様な柔らかい笑みは、目元の黒子によって少しだけ大人っぽくも見える。

(いけない!見惚れてしまった!)

他の貴族と違って真面目に授業を受けているレディーナ様は、使う公式と簡単な説明で難なく先程の問題を解いて見せた。


「良く分かりましたわ。ありがとうございました。」

これまた当然の様に頭を下げて感謝の言葉を掛けてくれた。

「そんな!あたしなんかに頭を下げちゃいけませんっ!」

「…?どうして?感謝したら誰にだって下げる物だわ」

何が悪いの?とでも言う様に澄んだ瞳で見詰められてあたしは言葉に詰まってしまった。


それがあたしとレディーナ様の出会いだった。


それから少しずつ、授業の事や先生の事をお話しする様になり1年が過ぎた。

いつの間にか友達だと言って下さる様になり、次の学年でも一緒のクラスになれた。


あたしにとっては今でも夢見ている気分だ。


そんな友人、レディーナ様に頼まれては演劇だって断れない。

(あたしは全然興味ないけど。)

実家を睨みあげ、両親を説得する為に意気込んでドアノブを握ろうとしたその時

「僕にもお手伝いさせて貰えないかな?」

後ろからまさかな声が掛かり慌てて振り返るとアルバート様が立っていた。


アルバート様はにっこり微笑むとあたしの隣に立って力強く頷いてくれた。

頷き、ガチャリッと強くドアノブを回す。

「お父さん!お母さん!お話がありますっ!」

(この勢いが衰えぬ内に押し切ってしまおう!)

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