ダンスの誘い
ディー視点
「やぁ、ディー。こんにちは」
いつもの様にアルバートがわたしに声を掛けた。
いつもと違うのはここが生徒会室なのと、隣にビートが居る事だ。
「君のダンスのパートナーだ。」
満足な展開にわたしは心の中でガッツポーズを決めた。が、ゲームのイベントではこうである。
「え!?本当に?宜しいんですか?」
頷いたのはゲームと違い、アルバートではなくビートだったが…
場所を空き教室に移すと、『後は頼む』とアルバートの肩を叩いてビートが出て行った。
「よろしくね。まずは何から始めようか…」
テレビの中で見たままの笑顔につい見惚れてしまう。
「え、えっと…、ワルツから?」
「いや、タンゴからにしよう!」
そう言ってアルバートは更にニコッと笑みを強めた。
ぐいっと背に腕を回され、伸びる背筋。見上げればアルバートの精悍な顔。目が合うと優しく笑みを返してくれた。
独特なリズムに合わせ、アルバートの腕に預ける様に身を任せて踊る。
(すごく楽しい!)
ダンスがこんなに楽しいものとは知らなった。
一曲踊り終わり、上がった息を落ち着ける。
「上手だね。とっても踊りやすかったよ。この分ならテストも大丈夫だ。」
そう言ってアルバートが、水を差し出してくれた。
それから衣装も打ち合わせた。
「わたし、シャンパンゴールドのこんなドレスなんです。」
そう簡単にドレスがスケッチされている紙を取り出す。
レディーナにライバル宣言をした次の日から、わたしは舞踏会で着るドレスを探した。
庶民にオーダーメイドのドレスなんて、高すぎて無理だった。
かと言って、ゲームで主人公が着ていたドレス以外、着る気もない。
だからお店を回った。貸衣装屋を隅から隅まで。毎日。
そしてようやく見付けたのだ。ゲームのドレスそっくりのシャンパンゴールドのドレスを。
「本当、びっくりする位ちょうど良すぎるよね…」
そう自嘲的なアルバートの笑みに首を傾げた。
「僕も黒のタキシードにしたから、ちょうど良いって言ったんだ」
傾げたわたしの頭をアルバートが戻して、当日の段取り等も決めた。
その日から毎日、放課後のわたしは作る事なく笑顔でいられた。




