ペア解消
レディーナ視点
「レディーナ、準備出来てる?」
放課後、アルバートが迎えに来てくれた。
ダンステストまで1ヶ月をきった為、私達は今日から毎日放課後、空いている教室を借りて練習する事にした。
実の所、私はあまりダンスが得意ではない。
リズムを掴むのが苦手でアルバートにリードしてもらって何とか踊っているのが常だ。
「いち、にー、さん、いち、にー、さん…」
模擬舞踏会ではワルツの他、タンゴやルンバ等数種類の中からランダムで曲が始まる。
只今ワルツの練習中だ。リズムを口ずさみながら体を動かす。
「毎年ながら・・・ホント、ダンスが苦手だな。」
クツクツと笑いながらリードするアルバートをむっと睨んだ。
(こっちは真剣なのにっ!)
「失礼する」
ガラッと扉の開く音と共に声が聞こえ、心臓が飛び出る程驚いた。
「ビート!?」
扉から生徒会長でもあり、同級生のビートが教師を連れて私達がいる教室内へ入ってきた。
「何の用かな?」
すいっと私を後ろに庇う様に、前に一歩アルバートが進み出る。
「相変わらずだな…」
ビートは苦笑いしながらアルバートの正面に立った。
「実は相談…と言うかお願いしたいことがあってだな」
そう切り出したビートが、共に来た教師に先をと促す。
「アルバートさん、ディーさんの事はご存知かしら?」
(あぁ…)
「あぁ…」
同じ様なトーンで私の心とアルバートの声がシンクロした。
「彼女、転入したばかりだからダンスの経験が無い上に、パートナーが見付からなくて…そこでダンスが上手な貴方に、ディーさんのパートナーをお願いできないかしら、と…」
「お言葉ですが、先生…」
アルバートがすっと目を細めた
「僕のパートナーはレディーナです。そう、先生達にもご報告致しましたよね?」
湛える微笑みの裏に、否とは言わせまい。とした意志を感じる。
私はハラハラと先生とアルバートを交互に見た。
「まぁ、そう言うな。」
先生とアルバートの間にビートがまぁまぁ、と割り込んだ。
「それで、そうなったとしてレディーナのパートナーはどうするつもりだ?まさかお前だとか言うんじゃないよなっ!?」
今度はビートを射抜く様にアルバートが睨む。
「そうしたい所だが、私は今年も役員の仕事で忙しくてな。ま、レディーナに頼まれたなら喜んで引き受けるが?」
「冗談が上手くなったね、ビート」
「おや、冗談に聞こえてしまったか?」
もうアルバートの表情は怒りを隠す事をしていない。
「レディーナには、役員の仕事を手伝って貰おうと思っている。前から細かな事にも気を回せる人がいたら…と思っていたんだ。レディーナなら適任だ。」
アルバートの射抜きから潜り抜けビートが私ににっこりと笑む。
「レディーナ、嫌なら断りなさい。」
アルバートはまだビートを睨みつけている。
「レディーナさん、貴女は頷いてくれるわよね?」
先生の視線は私に助けを求めていた。
(うぅ…)
「それに、僕達はもう打ち合わせも済んで、衣装を作っている最中です。今更変更なんて出来ません!」
(それは…っ!)
これがトドメだ!とばかりにアルバートが勝利を確信し断言した一方、私は背を丸める事となった。
「ちなみにどんな衣装にしたんだ?」
片方の眉を上げてビートがアルバートに問いかけた。
「僕のは黒だ。レディーナがシャンパンゴールドのドレスにしたからな。」
その言葉を聞き満足そうにビートが頷く。
「それはちょうど良かった。ディーもシャンパンゴールドのドレスにしたそうだ」
俯いた私の後頭部にアルバートの視線を感じた。




