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英雄の法  作者: 西表山cat
2章 幼い歪み
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after story    "救国の英雄"

 一人の英雄が魔物と対峙していた。

「・・・ふざけんな。はぁ・・・はぁ・・・強すぎるだろ!」

「ゴォォアアアアア!」

 出会ってからすでに半刻ほど過ぎていてお互いに満身創痍。

 見上げて存在を改めて観察する。体は鱗で覆われていて自分よりも十倍は大きいその巨躯、そこから翼が一対生えていて鋭い爪を持つ手、そして足。極めつけは・・・

「スゥー」

『来るぞ』

「わかってる!」

 魔物はその大きな口から息を深く吸い込み燃え盛る火を吹いた。"英雄"はそれを空中に飛び上がり避け、頭に剣を突き刺した。

「グギャアァァァアア!」

「っよし! これで―――ぐはっ」

 一瞬の油断―――死角から放たれた太く長い尻尾の一撃に気付くのが遅れ洞窟の壁にたたき付けられる。動けない。


『ギブアップするか?』

「しないさ・・・まだまだやれる!」

 その魔物は"あいつ"の知識の中では"ドラゴン"と呼ばれるものだった。



「ギャアォォォオォ!」

 頭に刺さっている剣の痛みに悶え苦しむドラゴンの咆哮が意識をはっきりとさせる。覚悟を決め両手に"炎"を纏い立ち上がる。

『おいおい・・・それが利かないのはもう試しただろ? 鱗がちょっと弾けるだけだったの忘れたか』

「これでいいんだ・・・見てろよ」

 飛び上がり暴れる頭に着地して両手を合わせる。

「おわりだ!」

 突き刺さっていた剣に両手を全力でぶつける。その瞬間、両手は爆発し衝撃で剣はドラゴンの頭を貫いた。

「グゥャャヤー!!」

「・・・もう・・・だめ」

 ドラゴンの頭から落下して地面に背中からぶつかる。暴れ狂うそれに幸い踏まれることも無く英雄はそのまま気絶した。




 目を覚ますと長い戦いでの体の疲れは少し癒えていたが、立ち上がろうとすると、すぐに体は悲鳴をあげた。

「あーもういやだ。だれが人助けなんかこれからするもんか」

 目の前の瞳の濁って動かないドラゴンを見て、自分がなんとか勝てたとようやく実感した。

『あっははっはっはっは。八年間も人助けぐらい"しか"してこなかったお前の口からそんな言葉が漏れるなんてな!』

 英雄・・・ケルスはその言葉に思わず苦笑いする。いつもだったら友・・・啓の言葉に表情を変えることは無いが、今は誰もいないので表情を隠すこともなく普段どおりに振舞った。


「これでしばらく近くの村で人が食い殺されることも無くなるか」

『無くなるだろ。このドラゴンは確か三千人ぐらい人を食ってるらしいからな。お手柄だぞ』

「よかった。・・・はぁ」

 また地面に倒れこむ。ただひたすら疲れていたので無言で休んだ。



 "救国の英雄"・・・学園を卒業し冒険者として八年を過ごしているうちにケルスはそう自然と呼ばれるようになっていった。家督を弟のダーディに譲る、卒業して真っ先にそれをお父さんに話したら

「それもいいだろう」

 と、特に強い反対が無かったのには驚いたものだった。学園でクラスメイトだった人は、人間はスゥイジン、獣人ならイェンフォウとそれぞれの国でほとんどが仕官した。



『本当にいやならケルスも士官すればいいだろ?』

「・・・いやなわけがないだろ。冒険者にならなきゃ今まで助けてきた人たちとも会うことはなかったんだぞ?」

『冒険者を辞めれば今日みたいにドラゴンに燃やされる心配も無いし、奴隷商に殺される危険も、魔物千匹と戦ってぼろぼろになる事もないだろうに・・・』

「ククク。よく覚えてるな。奴隷商・・・懐かしいな。でも魔物千匹はたしかほとんど啓だろ? あと千匹もいなかった。七百ぐらいだった。俺じゃどうしようも無かったからお前に頼んだの覚えてるぞ」

『そうだったかなー・・・』

「・・・・・・思い出した。間違いない、そんで啓が"雷"とか"氷"とか遠慮なく使うもんだから、あれからスゥイジンで仕官しないかって使者がひっきりなしに来たじゃないか」

『・・・気のせいだろ。四聖姫とも仲良くなれてよかっただろ? その他にも―――』

「誤魔化すな。使者に対してそっけなかったかもしれないけど啓を責めてるわけじゃない」



『そうかい。・・・ところでずいぶん家に顔を出していないがそろそろ帰ったらどうだ?』

「・・・そうだな。久しぶりに帰るのも悪くないか」

 その顔にかつての幼さは無く、その体はいくつもの争いで傷だらけになっていた。

 ずいぶん遠い所まで来てしまった。そう思いながら自分の故郷の方角を見つめる。





 ケルスはこの時まで、まだ少なくとも英雄だった。


これはアフターストーリーです。

アナザーも書こうとしたら胃が痛くなったので止めました。

あっちはあっちで楽しい話なんですが中二とか入れなきゃいけないところがあるので・・・猫の鳴き声追記じゃなくて 2 って名前で新しく投稿してます。


ここでいったん話が飛んでますが次話は次章になります。


Q 最近投稿が遅い やめるの?

A ごめんなさい・・・やる気はあるんです 続きのイメージもある

 だけど自由に使える時間が日曜日だけになってしまったんです・・・

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