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英雄の法  作者: 西表山cat
2章 幼い歪み
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第3話     試験結果、その後

"法技"・・・ルールに戦い方は自由と書かれていたならば、本来一番最初に思い当たらなければいけない純粋に間違いなく使えば有利になるはずだった技だ。学園で習っていない技術で、個人個人が持っている独特な魔力への干渉、使えば初撃はほぼ見破られる事なく相手に動揺を与えることが出来る。なぜ思い当たらなかったのか・・・自分の考えの浅さにケルスは深く後悔する。ただ、それはどうしようもなかった。学園に入ってからの魔闘試験で使うことも無く過ごしていたので、どこかで使ってはいけないと思っていた。開始直後にあまり多くの人の戦い方を見る事も無かったので、それが誤解に拍車をかけた。




『ケルス、大丈夫か?』

『あぁ、うまく消せた。さっき久々に水を出してるあの子をみてなきゃダメだったかもしれなかったな・・・』

 樹上にいたところを強襲され、絡みついた炎を消すために一旦、地面に降りて樹に背中を預け、周囲を警戒しながら瞬時に水を出して消火する。試験開始直後の水を纏った子に小さな感謝をする。心の準備が無くあの攻撃を食らっていたら水属性を思い出せずに、もがき、そのスキを敵に付かれていたかもしれないからだ。普通に考えればすぐに水で消すと思い出せそうなものだが法技は予想外すぎた。それにしても攻撃が当たってからすぐにこちらに来ない相手を考えると思ったよりも、もがいていない自分を警戒しているのかもしれない。

『啓、相手の法技って――――――』

『"絡む"・・・みたいなもんかな。法技だとしたらだが・・・大丈夫だ、まだこちらの法技を見せてない。次はそれで・・・』

 しばらく声を潜めて待つが物音一つしない。

『・・・』

『・・・・・・あれ? 相手こないな』

 恐る恐る樹から顔を出して向こう側を覗いてみると―――――




「は?」

「は?」

 そこにいたのは、まったく無防備ですぐそこまで歩いてくるディスチェの姿があった。あまりにも、無防備すぎるその姿をみて、お互いに一瞬硬直する。だが先に動き始めたのは・・・

「・・・! は!」

「あ・・・・・・」

 そこに空しく試験石の砕ける小さな音が鳴る。ディスチェのではなく自分のが・・・である。最初の少女をあっさり葬った時と同じように、掛け声と共に自分が反応するよりはやくディスチェが火球を纏った手で貫いたようだ。

「・・・あ、つい」

「・・・ディスチェ、反応速すぎ」

「まぁそれは・・・というか! ケルスなんで樹の後ろに隠れていたのに攻撃してこなかったんだ!!」

「いやいやいや・・・ディスチェを倒すために樹に隠れていたわけじゃないんだよ」

 と黙って右手を見せる。

「・・・なんだ、これは?」

「ディスチェじゃなかったのかよ・・・いや法技を使われてね。このざまだよ」

「なんで法技が!・・・ん? あぁなるほど、ルール上問題ないんだったな」

「そうそう、食らってから思い出してね。んで相手の姿を確認しようとして顔出したらディスチェがいたってわけ」

「・・・なるほど。法技か、警戒しなければな」

「残りの人数も少ないと思うから頑張って俺の仇をうってくれよ?」

「知った事か! 私は一位を目指すだけだ」

「あぁ、がんばれ。"可愛い"ディスチェなら一位を間違いなく取れるさ」

 つい啓と会話をしてるときのように冗談を思わず言ってしまう。

「ば! ・・・何を言ってるんだ! 一位なんて当たり前だ。今度そんな変な事を言ったら殴るからな」

 そういってディスチェは少し照れて、森の中へと駆けていった。

『ケルス、この反応だとディスチェは脈ありかもしれないぞ?』

『啓・・・なにを言ってるんだ。何かの冗談だと思うが、俺はそこまでお前の知識をまだみてないぞ?』

『そうか。残念だ、それにしてもディスチェ・・・。ば! って叫んでたけどなんていうつもりだったんだろうな』

『馬鹿・・・だろうな』

 敗者はたださりゆくのみ。おとなしく森の外へと足を運ぶ。

『・・・そういえばさ』

『なんだよ』

『ケルス・・・一人も倒してないな』

『・・・・・・』




 自分が森を出て、しばらくしてジェンヤ先生から試験の終わりが告げられた。大分長く掛かったが最後まで残ったのは、ディスチェだった。・・・学年首席だから当たり前か、みたいな空気になっていたがディスチェに聞いてみると、

「馬鹿いうな、残ったみんなして法技を使ってきたんだぞ? ケルスは楽勝だと思うか?」

「・・・それは苦戦するな」

「でしょ?」






 それから試験の結果を見て先生達がそれぞれ何かを相談していたが学生はそのまま寮に帰された。

『啓、お前法技は見た目であまり分からなかったんじゃないのか?』

『ん、そんな事いったっけ?』

『・・・言ってなかったっけ? まぁいいや、それより以前魔力が見えるみたいな事、言ってたけどどういう風に見てるんだ?』

『俺には普通に薄い紫の空気のように見えてるよ?』

『・・・紫の空気?』

『あぁ、んで例えば火球とか魔法が放たれる一瞬前に放たれる方向に向かって魔力が伸びるから推察できるんだよ』

『紫の空気って・・・どうやってみるんだ?』

『出来ないの? 自分で魔力、腕から出して見ようとしてみなよ』

 ケルスはしばらく腕から魔力を出したり、火球を腕に纏わせてみたが、一向に出来る気配が無かった。

『啓は始めにどうやって、魔力を見始めたんだ?』

『へ? 最初から見れたよ?』

『・・・なんでだよ。てか啓は俺の目から魔力を見てるんだよな?』

『もちろんだ。』

『感覚とかなにか分からないのかよ?』

 啓はしばらく自分なりに考えてみたが、しばらく考えて結論に達した。

『例えばさ、生まれてきてから手が3本ある人が、手2本しかない人に感覚を教える事って出来ないよな』

『何が言いたい?』

『教える事ってやっぱり無理』

 しばらく沈黙が訪れる。もはや二人きりの会話でのこの沈黙にさえなれた。




『・・・じゃぁそれはいいや。法技を使っていたのはどうやって見破った?』

『ほら、魔力が見えるからさ。ケルスが法技を使うとき魔力に干渉するだろ? それから魔法を具現化して放ったり、纏わせたりするけど』

『あぁ』

『んで、その干渉された魔力って結構分かりやすいんだよ。例えばケルスの法技"爆散"は見た目、複雑に編まれたパズルみたいに見える。あくまでもイメージな? んで、あの"絡む"炎は魔力が柔らかそうにうにゃうにゃしていたって感じだな』

『どのみち俺にはわからなさそうだな』

 それから試験結果を不安に思いながらケルスは眠りについた。



―――――――――――――――――――――――――――――――――――




 翌日、学園の前にはクラス分けをされた紙が張り出されていた。どうやら成績上位の人と下位の人で分けたらしく、自分の分けられたクラスにはディスチェがいなかった。ファークはいたが・・・。一年隣にいたディスチェと分かれるのも中々寂しいものがあるなと思いながら、新しい教室に入る。

ちなみに新しい教室はこんな感じ↓(イメージ図)


獣人■ 人間□ 自分○


    先生

□  □  □  □  □

■  ■  ■  ■  ■

□  □  □  ○  □

■  ■  ■  ■  ■



 前と後ろに違う種族がいるのは変わらなかったが、担任がジェンヤ先生に変わったことで席の配置が少し変化した。先生曰く

「獣人は例え後ろでも前方の字がはっきり見えるが、人間は目が獣人と比べてそれほど良くないので多少、配置を変えている」

 との事だった。

『隣の人、どっかで見なかったっけ?』



 啓の話を聞き流しながら、決まったばかりの席で二年になってからの初めての授業が始まる。



  

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