プロローグ
――六十年。
あれから、六十年の月日が流れた。
僕はずっと旅をしていた。砂漠で、森で、そして湖で、様々な大自然を見て……自由な過去に思いを馳せていたママのように、見果てぬ夢を見ていたかった。話だけだったその景色を、一目見てみたかった。
だから僕は、旅をしたんだ。
旅先ではいろいろな出来事があった。セシリー、リリアン、マリリン、そして多くの人々との出会いと別れが、僕にこれまでなかった経験と感動を与えてくれた。
本当に、すごい経験だった。僕は塔の外に出たことなかったから、それはあまりにも鮮烈で劇的で、僕の人生や考え方をすべて変えてしまうような、大きな出来事だった。
それは出会いの物語であり、戦いの物語であり、そして別れの物語。
旅の中で辛いこと、苦しいことがなかったとは言わない。けれど僕は本当に楽しかったんだ。こうしてよかったんだって、塔を飛び出したことが正しかったんだって強く思えた。
でも、その結果が、これ。
すべてを終えた僕は、塔に連れ戻されてしまったのだろうか? 激しい絶望と悲しみを抱えたまま、すべての希望を失い……戻ってきたんだろうか?
ああ……僕は、なんて愚かだったんだろう。なんて無知だったのだろう。何も知らず、子供のようにわがままを言って、望んでいなかった最悪の結果を招いてしまったんだ。どうすれば良かったのだろう? 何を言って何を成せば良かったのだろう? そんなことができないのは分かってたけど、頭の中で後悔と懺悔がぐるぐると回っている。
まるでつい最近のように思い出せるあの光景を、もう、二度と見ることができないだなんて。僕は本当に悲しくて切なくて、頭がおかしくなってしまいそうだった。
こぼれ落ちた涙が、ふわりと宙に浮いている。
これは現実ではなく、夢。夢の中。
微睡から現実へと引き戻される刹那、混濁した記憶の整理を行っているだけ。無限の時間、無限の後悔。
こんなことなら、夢なんて見るんじゃなかった。我儘なんて言うんじゃなかった。
僕は……旅をしなければ良かったんだ。
絶望した僕は、ゆっくりとこれまでの思い出を……振り返っていくことにした。
投稿は一年と四か月ぶりか……。




