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〈祈りの塔〉を出た神子は、本当の世界を知らない  作者: うなぎ
砂漠の村編

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1/11

プロローグ


 ――六十年。


 あれから、六十年の月日が流れた。


 僕はずっと旅をしていた。砂漠で、森で、そして湖で、様々な大自然を見て……自由な過去に思いを馳せていたママのように、見果てぬ夢を見ていたかった。話だけだったその景色を、一目見てみたかった。


 だから僕は、旅をしたんだ。

 旅先ではいろいろな出来事があった。セシリー、リリアン、マリリン、そして多くの人々との出会いと別れが、僕にこれまでなかった経験と感動を与えてくれた。

 本当に、すごい経験だった。僕は塔の外に出たことなかったから、それはあまりにも鮮烈で劇的で、僕の人生や考え方をすべて変えてしまうような、大きな出来事だった。


 それは出会いの物語であり、戦いの物語であり、そして別れの物語。

 旅の中で辛いこと、苦しいことがなかったとは言わない。けれど僕は本当に楽しかったんだ。こうしてよかったんだって、塔を飛び出したことが正しかったんだって強く思えた。


 でも、その結果が、これ。

 すべてを終えた僕は、塔に連れ戻されてしまったのだろうか? 激しい絶望と悲しみを抱えたまま、すべての希望を失い……戻ってきたんだろうか?


 ああ……僕は、なんて愚かだったんだろう。なんて無知だったのだろう。何も知らず、子供のようにわがままを言って、望んでいなかった最悪の結果を招いてしまったんだ。どうすれば良かったのだろう? 何を言って何を成せば良かったのだろう? そんなことができないのは分かってたけど、頭の中で後悔と懺悔がぐるぐると回っている。


 まるでつい最近のように思い出せるあの光景を、もう、二度と見ることができないだなんて。僕は本当に悲しくて切なくて、頭がおかしくなってしまいそうだった。


 こぼれ落ちた涙が、ふわりと宙に浮いている。


 これは現実ではなく、夢。夢の中。


 微睡から現実へと引き戻される刹那、混濁した記憶の整理を行っているだけ。無限の時間、無限の後悔。


 こんなことなら、夢なんて見るんじゃなかった。我儘なんて言うんじゃなかった。

 僕は……旅をしなければ良かったんだ。


 絶望した僕は、ゆっくりとこれまでの思い出を……振り返っていくことにした。


投稿は一年と四か月ぶりか……。


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