薄明の風
前回の話を出してから少し経ってしまい申し訳ありません。なるべくなら早く書こう書こうと思ってはいるのですが、話を思い浮かんでも、それを繋げるのが大変で、後は主要人物以外の人の名前や町の名前などを考えるのが苦手でした。二話でこれならこの先どうなってしまうのか、先が思いやられる様ですが、なるべく考えない様にしたいです。今回もなるべく皆さんが見てて面白いや、続きを読みたいと思っていただける様に書いてるつもりです、なので感想、ブックマーク等をもらえると励みになり、とても喜びます。続きもどんどん書くのでぜひ読んでください、誤字脱字などがありましたらご報告よろしくお願いします。
ゴブリンは弱い魔物らしい。戦闘向けの固有スキル持ちなら十歳くらいでも討伐することができるとアスルから村を出てから聞いた。今その弱い魔物は一人の駆け出し冒険者を木に追い詰めていた。
「アスル!弱い魔物なんじゃないの!」
「弱いわよ!」
「じゃあなんでこんなに強いのさ!」
「アンタが弱すぎんのよ!」
ゴブリンに追い詰められていた駆け出し冒険者はそう、僕だ。
少しばかり時を戻そう。
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「一番近い街って言っても、馬車で半日も掛かるらしいから、徒歩なら三倍以上はかかるよね~。ご飯とかどうしよ」
「そこら辺の山菜とか動物でも狩ればいいんじゃない?」
「狩とか簡単に言うなよ。気になってたんだけどさぁ、動物と魔物の違いってなに?」
「この機に少し詳しく教えるわ」
アスルの話によると、
動物=魔力を持たなく知性が少ない生き物、敵対しない種は家畜化などに適しており、ほとんどが戦闘用の能力が無くても対処可能
魔物=魔力を持ち好戦的に他の生き物を襲う生き物、能力が戦闘用ではない人間では、束になっても勝てない場合が多い
変異種=見た目は魔物と大きく変わることはないが、レット、ブルー、グリーン、イエロー、パープル、ホワイトの六色に体や何かの色が変わっているらしい、ただ色が違うだけでなく魔物からの変異であるため、色別での特徴があるらしい。戦闘用能力の人間が束になって戦うべき存在
レット種=筋力、防御力などが上がっているが知性が低いことが多い。
ブルー種=魔力が上がっており、ほとんどの場合が魔法を使用してくるらしい。近づかれたり、魔力が減ると逃げようとすることが多い
グリーン種=生命力が高く小さな傷口なんかはすぐ直ってしまい、攻撃には毒属性が付与される事が多いらしい、素早さが遅い傾向にあるらしい。
イエロー種=視覚、聴覚、嗅覚などの索敵能力が高く、素早さも早いが防御力が弱い傾向にある。
パープル種=呪い、幻覚、精神干渉など戦闘力以前に危険が高いが、群れることはあまりなく個々で生存しており、あまり目撃されることはない
ホワイト種=知能が高く学習能力が高い、群れで行動している、他の種ともむ群れることが有り、統率を取る。回復系の魔法を使えるらしい、倒されると群れの統率が取れなくなり弱くなる
ホワイト種が居る場合を除き別々の色で群れることは無いらしい
魔獣種=変異集を超えた存在、一般的な魔物とは別格、見た目は黒くなるためブラックの名を関することが多い。村や町だと一匹の存在で滅びてしまうこともある。戦闘熟練者や騎士団で対処するべき
魔王種=魔獣種を超えた存在、特徴は解明されておらず、会話ができるという噂も、魔獣種や変異種を従えていることが有るらしい。国全体で対処するべき、
神聖種=神話やおとぎ話に出てくるような存在、世界が滅びる危険性あり、目撃情報は一件もなく、噂話に過ぎないと言われている
「こんな感じね、シグレが戦ったのは変異種レットのグリズリーね、最初がレットでよかったわね。他の種だったら、あんなのじゃすまないわよ」
「不幸中の幸いだね、、」
ガサゴソ、、、
「アスル聞こえた?」
「ええもちろん」
「風じゃないよな?」
「風が二本足で立って小さな棍棒をもって歩くならそうじゃないかしら?」
草むらの隙間から緑色の腕が伸びた、次の瞬間小柄な人影が飛び出してくる、
「アスルあれって、、」
「ゴブリンよ魔物の中でも弱くて戦闘用スキル持ちなら子供でも討伐可能よ」
「よかった~弱い魔物かぁ、」
「冒険者の入門相手ってところかしら」」
「こっち見てるけど、さっき聞いた魔物の特徴的に襲ってこないとかは無いよね、」
こちらに棍棒を振り回しながら突っ込んできた。
「来るわよ!切りなさい!」
アスルの声にビックリしながら慌てて柄を握り、刀を抜こうとする、
だがーー
ガッ。
「あれ?」
抜けない。
焦ってもう一度引く
ガッ。
「なんで!?」
「落ち着きなさい!変な角度で引っ張ってるのよ!」
「今落ち着けるわけないだろ!」
こちらが慌てているのなんかお構いなしにゴブリンは地面を蹴った
「うわぁ!?」
やっと刀が抜けた頃にはゴブリンは目の前に迫っていた、咄嗟に刀を振るう。
アスルの切れ味なら当たりさえすれば終わる。
だが剣術など習ったこともない。
振った刀は大きく空を切った。
「避けられた!?」
「当たり前でしょ!アンタ今、目をつぶって振ったじゃない!」
ゴブリンの蹴りが腹に入り、僕は情けなく尻もちをついた。
「痛っ、、、!」
「立ちなさい!」
「だって、、!」
ゴブリンを見る。汚れてはいるが人に似た顔。
二本の腕。
二本の脚。
手には武器。
魔物だとは頭では分かっている。
分かっているはずなのに。
「本当に斬っていいのか、、、?」
「はぁ?」
「だって人みたいじゃないかぁ!」
「アンタを殺そうとしてる相手よ!?」
「それでも、、!」
迷った瞬間だった。ゴブリンが飛びかかって来る。
気づいたころには木に背中を打ち付けていた。
呼吸が止まる。
刀を握る手が震える。
ゴブリンが地面を蹴った。
反射的に刀を構える。
だが体は思うようには動かない。
怖い。
目の前の魔物が怖い。
殺されることが怖い。
そして何より。
自分の手で何かを殺すのが怖かった。
「シグレ!」
咄嗟にアスルを振る。
偶然だった。
本当に偶然だった。
剣術なんて知らない。
ただ恐怖のままに振っただけだ。
だがアスルの切っ先がゴブリンの腕を掠めた。
ゴブリンの右腕が宙を舞う。
「ギァアアアアアアッ!?」
「だから言ったでしょ。当たりさえすればッて」
腕を失ったゴブリンは苦しそうに地面を転げ回る。
その姿を見て。
僕は動けなくなった。
血が出ていた。
大量の血が。
洞窟で嗅いだ匂いと同じ。
生臭い匂い。
「終わらせなさい」
「でも、、」
「アンタを殺そうとした相手よ」
「分かってる」
分かっている。
分かっているのに。
足が動かない。
その隙だった。
ゴブリンの黄色い目がこちらを睨む。
怒りと憎しみを宿した目。
次の瞬間。
残った左手で地面の石をつかみ投げつけてきた。
「ぶっ!?」
額に直撃した、視界が揺れる。
ゴブリンはその隙を見逃さなかった。
雄たけびを上げながら飛びかかって来る。
「しまっーー」
避けられない。
そう思った瞬間だった。
体が動いた。
横へ転がる。
ゴブリンの棍棒が地面を殴る。
「今のは!?」
「死にまくったおかげじゃない?」
アスルが楽しそうに言う。
「ギフトで反応速度が上がってるわよ。」
そう言われて初めて気が付く。
以前なら反応すらできなかった。
少しだけ。
本当に少しだけ、強くなっている。
「だったら、、、」
震える足に力を入れる。
立ち上がる。
ゴブリンも立ち上がる。
互いに満身創痍。
だが
向こうは腕が一本
こちらは両手が使える。
「ごめんな」
誰に向けた言葉かわからない。
自分か。
ゴブリンか。
それとも両方か。
僕は一歩踏み出した。
ゴブリンに向けてアスルを一振り。
一閃にはほど遠い。
だがアスルの切れ味の前ではそれで充分。
ゴブリンの右肩から左腰までを半分に、豆腐のように刀が触れるとともに解けるように斬れていく。
「ウギァァ」
ゴブリンが断末魔を上げるとその体の端から段々と紫色の灰のようなものにかわり、逃げ場を失うようにその体の中心へと集まり指先ほどの小さくだが、透き通っており、中からは力を感じる緑色の宝石のような見た目になった。
「宝石が二つ?」
「それは魔石という物、魔力の塊、魔物の討伐の証と言ってもいいわ。本来なら魔石を斬るなんて素人ができるはず無いんだけどね!」
「なんでドヤってるんだ?」
「それはそうでしょう。シグレみたいなへなちょこでも、魔石を真っ二つにできるくらいの武器なのよ?」
「どんだけ僕の評価低いんだよ、」
「当たり前でしょ、ゴブリンごときに苦戦してたんだから。ちなみに魔石は売ると結構高いわよ。」
「じぁあ!これも?」
「ゴブリンみたいな弱い魔物のしかも割れてる魔石なんて買い取ってもらえるかもわからないわ。」
「ちぇー、、ん?ってことは昨日倒したレットグリズリーは?」
「もちろん高額買い取り間違いないでしょうね。売れたら、私のこと手入れしてよね♪」
「、、、」
「何、どうしたの急に黙って、」
「拾ってきてない。」
「え?」
「仕方ないだろ、魔石の事なんか知らなかったんだし、それどころじゃなかったんだから。」
「あれが有れば、お腹いっぱい食べ、ふかふかのベットで眠って、服だって買い替えられたのに!」
「それは、僕が一番思ってる事なんだから、あんま言うな、、」
「まぁ、もう仕方ないわ、くよくよしてないで早く町に向かいましょ」
「だよねー、、暗くなる前にはご飯見つけときたいしなぁ」
ゴブリンに殴られたところがジンジン痛むなと、考えながら港町に向かって歩き出す。
「食べられそうな、草ってどれなんだろう、、全部同じ雑草にしか見えないんだけど。」
「同感ね、でも迂闊にキノコや草食べて毒あっても困るわね。あ、あそこ、ウサギが居るわよ!」
「居たところで、僕の素早さじぁ、つかまえるのも難しんじゃないかな、」
「確かにそうね、でも眠ってるわよ。風下から足音消してゆっくり近づけば行けるわよ。」
「試してみる。」
僕はアスルを音を立てないようにそっと抜き、風下から息を殺して
そろり。
そろり。
と、近づき、首もと目掛けて刃をを軽く引いた。
柔らかい感覚もなく、そのまま刃は裂くように通り抜ける。
「ごめん。いただきます。」
「礼儀正しいのね。で、血抜きとか下処理の仕方知ってるのかしら?」
「あまり僕を舐めてもらっては困るな。」
「驚いたわ、知ってるなんて、」
「知らない」
「やっぱりね。教えるのもめんどくさいわ。あれやりましょ、許可して。」
「え、あのレットグリズリー倒したやつ?!こんなしょぼいとこで使うの!?もっと必殺のーとかピンチの時とかに、、、」
「餓死したいの?」
「う、、許可します、、」
{所有者の許可を確認スキルを発動します}
まただ、体の中を灼けるように流れてくる。
ウサギの背肉の背側を下にして置き、余分な脂を取り除いたら中央から縦に包丁を入れ、背骨に沿って肉を左右に開く。背骨の中心から脇に伸びている骨の先の下に包丁を入れ、中心に向かってこそげながら少しずつ丁寧にすすみ、骨から肉を切り離していく。
なんの戸惑いや躊躇なくなくもうすでに何百回もやったことあるかのような手さばきで下処理が終わる。
体から熱が引いていく
「これの終わりってまさか、、、?」
「安心して前回と違って戦闘じゃないし、限界まで体を酷使したわけじゃないから、死ぬことは無いわ」
「なんだ、よかっ、う、」
全身に電撃が流れる感覚。
いつも通り動かそうとすると、手足たちからの抗議の痛みが駆け巡る
「体が痛い。」
「そうね、今回は重めの筋肉痛で済んだみたいね。」
筋肉たちの痛みに耐えながら焚火の準備を進める。
切り分けられたウサギの肉をそこら辺にあったちょうどいい長さの小枝に刺す
「あ、火のつけ方知らない」
「貴方今、【火種】使えるわよ?」
「え?! 魔法?」
「そうね、スキル発動と主にギフト貰ったんでしょ?それに含まれてたのよ。」
「マジか!魔法とか、ワクワクするな!」
「ならちょうどいいわ、貴方のステータスと共に教えてあげるわよ。」
またまたアスルによると。
この世界の生物にはランクがあり、体力、筋力、命中、防御、俊敏、魔力、それぞれ S~Fまであり、Sはその能力を極めている状態。逆にFは凡人以下。となる。自他ともに閲覧するには【鑑定】スキルが必須らしい。
「アスルはそのスキル持ってるんだろ?ぶっちゃけ俺のステータスってどうなの?」
「そうね、S~Fの表に当てはめようとするならば、Fの下のGってところかしら」
「G、、凡人以下のさらに下、、」
「その中でも、スキルで貰った三つのギフトは、筋力値がほんの少し上昇したのと、【火種】【反射強化・下】ね、ただ、魔力と精神力が低すぎるから、火種のスキルが使えても一瞬かしら、」
「火種、、どうやって使うの、、?」
「使いたいスキルを思い浮かべて、口に出してみなさい」
イメージは村で見た魔法。
僕には死んでも無理なんだって思ってた。
だけど。
なんか、行ける気がする。
【火種】
指先に生まれた小さな炎を見て、しばらく瞬きを、呼吸を、
忘れた。
「でた、、」
「そうね」
「本当に出た、、」
「だから出るって言ったでしょ。早く用意した焚火に移さないと消えるわよ」
枯れ木に火を移すと、ぱちぱちと音を立てて炎が広がっていく。
指先にあった時には感じられなかった、確かな熱が広がっていく。
「暖かい、、」
「こんなことで感動するなんて、安上がりね。」
「仕方ないだろ。生まれてから初めての魔法なんだから。」
「おめでと、で、今少し頭痛いでしょ」
「なんでわかるんだ?」
「貴方の魔力切れそうになってるもの、後一回無理やりにでも出したら、意識持ってかれるわよ」
「魔法怖、、と言うか、なんで指先にあった時の火は熱くないのに、燃え移らせた後は熱いんだ?」
「妙なところに疑問持つのね、知らないわよ、スキルだからじゃない?」
「なんか、違う気もするけど、アスルが知らないならいいや」
焚火の縁に刺してあったウサギの肉が、綺麗な雫を垂らす、火は勢いを増し、肉からは香ばしい匂いが漂ってくる。
「うまそ、、初めて自分で料理したご飯だ、、」
「貴方、昨日から初めてばっかね。これから先が思いやられるわ。」
アスルの嫌味を無視するように、肉へとかぶりつく。
「あれ、」
「どうしたの。」
「昨日村で食べた肉と全然違う。不味くはないけど、あれには、足元にも及ばない、、」
「どこで食べたの?」
「村の食事処。」
「呆れた、、それはそうでしょ、食事処の人は料理のプロよ?初めての料理で同じ味出せたら、料理人のメンツが丸つぶれよ。」
「マジか、、結構期待してたのに。」
「諦めて、チャチャっと寝ることね、明日も朝から歩くんだから、筋肉痛を少しでも回復させといた方が良いと思うのだけれど」
「はいはい、わかりましたよ、」
辺りを見渡す。空はもう赤みを失い、木々の間には闇がたまり始めていた、。
「ここでいっか。」
大きな木の根元なら少しは風を防げる気がした。湿った落ち葉をかき集め、地面に積み上げる。
冷たい土の上で寝るよりはましだろう。
「おやすみ、何かあったら起こして。」
「そうね、獣や魔物でも近づいたら起こすわ」
寒い。
こんなところで果たして眠れるのだろうか。
寝返りを打つたび、体が痛い。
今日は生き残れた、明日も同じように行くだろうか。
そうだ、俺は死なないらしい。
本当にそんなことが有りえるのだろうか。
「さっきから考え事うるっさいわ!そんなこと考えてたって寝れないんだからやめなさい。」
「悪かったな、不安なんだよ」
「子守唄でも歌ってあげましょうか?」
「静かに寝るから勘弁して」
アスルと会話したことで少しは気持ちが和らいだのか、そのあとは深く考えることなく、意識を手放した
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「ん、、」
顔に何か冷たいものが当たる。
触ってみると、顔が濡れている。
「あら、起きたの?ずいぶん早いのね。」
「何だ、朝露か、」
「朝露?」
「知らないのか?夜になると空気が冷たくなって、空気の中にある見えない水が小さな水のつぶになって、葉っぱや草につくんだよ。それが朝露だよ。」
「空気中に水?何変なこと言ってるのよ。」
「俺の言うことは確かに村の奴らにも馬鹿にされたよ。でもほんとだからな。」
「それより体はどう?」
「まだ少し筋肉痛はあるが、違和感程度だからな、大丈夫。」
「そう、じゃあ、今日中にでも町に行きましょ。」
「お金ないから、何か動物か魔物でも狩らないと、町についても意味ないけどな。」
「ま、深く考えても意味ないわ、歩きながらにしましょ。」
「それもそうだな。」
空は白く、まだ霧で遠くが見渡しずらい道を歩いていく。
「アスルは寝たのか?」
「いいえ、寝てないわよ。必要もないわよ。」
「そうなのか、うらやましいな。」
「私からしたら、寝れる方がうらやましいわよ。」
「そうなのか?暇とか?」
「まぁ暇もあるけど、今までの記憶とか嫌な事をずっと考えちゃうのよ、昨日の貴方の寝る前みたいにね。」
「そうか、やっぱ一人って寂しいよな、俺も一緒に起き続けられれば寂しい思いさせないのにな。」
「な、なによ急に、」
「最初から頼ってばっかだから、少しくらい恩返ししたくて。」
「そういうことなら、たまにでも刀の手入れしてくれればいいわよ。」
「そっか、りょーかい。町着いたら、手入れ道具でも見よ」
「シグレ、誰かが襲われてるみたい。」
雑談が唐突に終わりを告げ、アスルの声色が真剣になった。
「場所はわかる?」
「この先少し行って右側、ゴブリンが二体かしら。」
迷いなく走った、一匹で苦戦していた僕が二体を相手できるとか、負けちゃうんじゃないかとか考えるよりも先に足が動いていた。
少しばかり走ると、女の子の悲鳴が聞こえてきた。
どうやら近くまでこれたようだ。
「そこ右よ!」
アスルに誘導されるままに全力で走り続けると、ゴブリン二体に挟まれて動けなくなっている女の子がいた。
「今助けるよ!」
前回とは違いアスルを抜くのは失敗しなかった。
躊躇なく女の子を狙っているゴブリンを後ろから斬る。
「昨日とは大違いね、どうしたのかしら。」
アスルが何か言っていたようだが、今の僕には聞こえていなかった。
「大丈夫!?僕の後ろに!」
「!、はい!」
女の子は迷わず僕の後ろに走ってきた、ゴブリンが追いかけるように浮いて来ようとしたので、間に挟まれるようにアスルを構える。
「仲間がやられて少し怯んでるわよ。今がチャンスよ。」
アスルに言われるがまま、踏み込み、ゴブリンに斬りかかる。
「ギァア」
ゴブリンは棍棒を盾にしてきたが、アスルの切れ味の前では意味をなさなかった。
「一日でここまで成長するとはね、やっぱり人の命がかかると変わるのかしら。」
「かもな。」
額から流れていた汗を拭う。
無我夢中だったが、昨日苦戦したゴブリンを苦なく二匹同時に討伐できた実感がわく。
それよりも襲われた女の子が心配だ。アスルをしまい。振り向くと、腰を抜かし木に寄りかかる。年は僕と同じくらいの、ショートカットの女の子、服は少しばかりいい物だ、町の子だろう。
「大丈夫?ケガは無い?」
「え、あ、はい!、痛っ」
立ち上がろうとすると足首を痛がり始めた。
「ゴブリンに殴られた?」
「あ、いえ、逃げている途中で、捻ってしまったぽっくって、で、でも無理すれば歩けるので」
「君サーベントの子?」
「そ、そうですけど?」
「じゃ、君が嫌じゃなきゃおぶっていくよ?僕たちもサーベントに行くつもりだったし。」
「たち?他にもお仲間が?」
「え、あ、僕だけ間違えっちゃったよ」
「私も数に入れてくれたのね、うれしいわよ♪」
「うるせぇ」
アスルを軽くたたくと、不思議そうな目でこちらを見ている。
「あ、何でもないよ!さ、送っていくよ、道案内だけできる?」
「はい、任せてください。」
女の子をひょいと背中におんぶした、、、
絶対に口には出せないけど、やばいかも。おぶるなんてカッコつけて言うんじゃなかったかもしれない。ここから遠かったらやばい。
「ふ、貧弱なのにカッコつけるからそうなるのよ。」
アスルにいじられながらもなんとか気合とプライドで歩く。
「君はなんであんな所で襲われていたの?」
「町の少し外れに友達が、住んでまして、ご飯を届けた帰りに、いつもなら居ないはずなんですけど。」
「そっか、災難だったね、僕はシグレって言うんだ。」
「私は、ノバ・エスタ。ノバって呼んでください」
「よろしくね。町はまだかかるかな?」、、そろそろ体も気合も限界
「もう、町が見える頃です」
その言葉を燃料にしながら、一歩一歩限界を超えながら歩くと、潮風の香りと共に、活気のいい男たちの掛け声や、家が見えてきた。
「君のお家はどこ?誰か家に居るかな?」
「あ、あそこの屋根が赤い家です、恐らく父が居るかと。」
指をさされたところを見てみると、明らかに周りとは二回りくらい大きい屋敷が見えてきた。
「え、あの大きいお家?」
「はい、あ、言ってませんでしたっけ、私この村の町長の娘なんですよ。」
「え、町長の娘!?」
驚きながらもノバの家の前まで行くと、ドアが開き、中から優しそうだが、ガッシリとした体つきの40代くらいの男性が出てきた。港町の町長なだけあって、筋肉や日焼けが目立ち、海の男と呼ぶのがふさわしいだろう。こちらに気づくと駆け足で近づいてきた。
「ノバ、遅いから心配したぞ!」
「ごめんなさい。お父さん。」
「訳ありのようだな、君も一緒に中に入りなさい。」
「あ、はいお邪魔します。」
大きな丸いテーブルの周りには椅子が八つほど囲む様に置いてある椅子にドカッと座り僕を正面に見て話し始める。
「改めて俺の名前はザバ・エスタ。座りたまえ。それで、何が合ったか教えてくれるかな。」
言われた通りザバさんと正面に座った。
「僕の名前はシグレと言います。森で娘さんが魔物に襲われてるのを見つけて、助けて、ここまで連れて来ました。」
「ノバそれは本当か」
「はい、、お父さん、いつもは出ないはずのゴブリンが出て来て。」
「そうだったか、周辺を警護させてる奴らが見渡したのかもしれん。すまなかった。そして娘を助けてくれたシグレ殿感謝する。」
「いえいえ、お気になさらないでください、娘さんが無事でよかったです。」
「何か恩返しがしたい、何かないか?」
「そうですね、それなら村の宿屋的なところ教えてくれませんか、なるべく安いところで、お金も寝床も無くて」
「それならうちに泊まると良い、もちろんお代は取らないし、夕飯もつけよう、お風呂だってあるぞ。」
「良いんですか!?ありがとうございます。」
「娘の命の恩人になら安いものさ、服は用意しとくからまずはお風呂に入って来なさい。」
「はい、ありがたくいただきます。」
ノバの家のお風呂は凄っかったの一言に尽きる
村では川の中流で水浴びが良い方だった。
ノバの家のでは、綺麗な脱衣所があり、木のドアを開けると大きな鍋の様な物に暖かな親が並々張ってある。
仕事や海水でベタついてもこのお風呂のことを考えるとなんでも頑張れそうなお風呂だ、
脱衣所でボロボロの服を脱いでいると、ふとアスルを眺めて、
「流石に人の家でアスルを洗うのはまずいよな、ゴブリン斬ったやつだしな。」
アスルを脱衣所に置きお湯をかけ体を慣らし置いてあった石鹸で体を洗い、湯船に浸かる。
湯に肩まで浸かった瞬間、全身の力がふっと抜けた。
まるで体が溶けていくようだった。張っていた筋肉がほどけ、何も考えたくなくなる。
「何これ、一生ここに居たい。」
自分の声だけが反響している。
静かだ。
まるでこの世界に自分しかいない様な静寂、村では味わえなかった安心感。
ふと、
「あれ、アスル?」
返事がない
名残惜しさを感じながらも慌てる様にお風呂を後にした。
脱衣所に戻ると、新しい服としっかりとした靴までもが用意されていた。
「至れり尽せりだな、、って違う、今はアスル優先だった。」
お風呂に入る前に立てかけた所に変わらず置いてあった。
胸を撫で下ろし持ち上げてみる。
「ちょっと、一瞬私より服に目が言ったわね、」
「あー、ごめん、まともな服と靴に感動してて。」
「まぁしっかりと私優先してくれたから、今回は許すわ。」
「とゆうか、なんで会話が出来なかったんだ?」
「まだ私の所有者として未熟だし魂の繋がりも弱いからね、今は待つか帯刀してないと会話は無理ね、そのうちどこに居ても会話可能になるわよ。」
「魂の繋がり、?」
「言ってなかったかしら、私の固有スキルは魂を経由するのよ、二回もやったでしょ?」
「あー!あれか、あれはなるべくならやりたくないね、反動が辛い、」
「もっと体が強くなったりすれば楽になるわよ、なんなら主導権だって取れるかもね。それより、いつまで裸なの?」
「あ、そうだった。傍から見たら全裸で独り言話してるやつだもんな、流石にやばい」
急いで服を着るとアスルをしっかりと帯刀して脱衣所を後にし、先ほどザバさんと会話した所に戻る。
机の上には焼き魚や刺身など港町全開の食事が置いてあった。
腹の虫が騒いでいる。
「おぉ、上がったか、どうだったうちの風呂は」
「お世辞抜きで最高でした。一生入ってたいほどです。」
「気に入ってもらえたようでよかったよ。飯も用意した、好きなだけ食うといい。」
「お言葉に甘えさせてもらいます。」
するとゴブリンに襲われて泥だらけだった服から、着替えてきたらしいノバが帰ってきた。
「もうお風呂上がったんですね。この町のお魚は絶品ですよ、ぜひ食べてくださいね。」
「うん、いただきます。」
皿の上には、薄く切られた赤い魚の身が扇のように並べられていた。その横には白い湯気を立てる焼き魚と、ふっくらと炊かれた白い米。
「生魚、、」
「そうか、生は初めてか、鮮度が良くないと無理だもんな!騙されたと思って食ってみろ、飛ぶぞ?」
恐る恐る箸で一枚つまむ。
ぷるり、と震える身は思ったより柔らかい。
意を決して口へ運ぶ。
「……!」
歯を立てた瞬間、身がほどけるように崩れた。
肉のような繊維を噛み切る感覚はない。ただ、とろりとした旨味とほんのりとした甘みが舌いっぱいに広がる。
「な、なんだこれ……。」
思わずもう一枚口へ運ぶ。
今度は添えられていた醤油を少しだけつけてみた。
途端に香ばしい香りと塩気が加わり、魚の甘みがより濃く感じられた。
「、、何これ、食べたことない、死ぬほど美味しい。」
次に焼き魚へ手を伸ばす。
箸を入れると、皮がぱりっと音を立て、その下から真っ白な身が姿を現した。
湯気とともに潮の香りがふわりと立ち上る。
一口。
今度は熱い。
しかし、噛む必要がないほど柔らかな身が口の中でほろほろと崩れ、じゅわりと脂が広がっていく。
皮の香ばしさと、身の優しい甘み。
思わず白い米をかき込む。
「……っ。」
米の甘さと魚の塩気が混ざり合い、さっきまでの感動とはまた違う幸福感が胸に広がった。
「なんでこんなに美味しいものを今まで知らなかったんだ……。」
気づけば箸が止まらなくなっていた。
「そうか、そんなに美味いか!」
「はい、、これだけでサーベントに来てよかったと思います!」
「そこまでか!嬉しいな!」
「シグレさん大袈裟だよ、でも自分の住む町を褒められて悪い気はしないね。」
「所でノバよ、逆人の前でする話ではないのだが、そろそろ、何か手を考えるべきでは無いのか」
「でも、、」
「今回みたいにいつでも助けてもらえるとは行かないんだぞ。」
「、、、」
何やら重い空気が流れる。
「あの、ちなみに、ご飯を届けるお友達と言うのは、、」
「この子の幼馴染のマーレと言う子だ、10年ほど昔、魔法が暴走し、近づくものを眠らせてしまう魔法が常時発動している、マーレは自分から村から出るのを志願したが、ノバがどうしてもと、離れの家に住まわしている。そこから毎日ノバがギリギリまで近づいて、ご飯を届けている。」
「そうなんですか、、すみません。なんか」
「良いんだ、気にしないでくれ、近頃魔物も活発に成りつつある、そろそろ、引き時なのかもしれんな、」
「でも!」
「俺だってなるべくならしたくは無い、だがノバが犠牲になるのはマーレも望んでい無いだろう。」
「、、、」
重い空気の中何も言えないでいると、急にアスルから話しかけられた。
「内容次第では、助けられるわよ。」
アスルの言葉に耳を傾ける、聞き返すことはできない、とゆうか、そう言う雰囲気では無い。
「魔法が暴走してるのは、魔力量が多くて制御出来てないか、単純に制御法を知らないのか、両方かだと思うわ、シグレにやった様に、体を乗っ取って無理やり魔力を押さえ込むのを体に教えれば多分、後は本人の力量次第だけど、」
あれをやるのか、僕は最初体の筋繊維が崩壊したあれを、ただ僕が弱すぎるだけかもしれないが、試す価値はあるのか、、
「安心しなさいよ、最初のは貴方の体が弱すぎるのもあるけど、体を無理に動かす反動でもあったのよ、魔力を操るのは体を動かすのとは違って筋肉痛にもならないわよ、少し疲れたりするかもしれないけど、」
「それなら、やる価値はあるか。」
心の中でアスルと会話していると。
「シグレくんどうした、そんな神妙な面持ちをして。」
「もし、よければそのマーレと言う子の所に行かせては貰えませんか、もしかしたら助けられるかもしれないんです。」
二人は驚いていた。
ただ本当かと疑う目はしていなかった。
村とは違う対等な人間としての目を向けられていた。
「信じて良いのかね。」
「はい、確実とは言えませんが、このまま何も出来ないよりかはマシかと思います。」
「そうか、君は娘の命の恩人だ、俺は信じる、後は一番あの子を心配してるのはノバだ、許可はノバに聞きなさい。」
「シグレさん、信用しても大丈夫なんでしょうか、」
「何をするかは言えないけど、その子に危険は無いよ、」
「そっちではなくて、貴方も、あの子に近づけば魔法にかかって眠ってしまうかもしれません。一度眠ってしまったら、そこに近づけませんので、助けられないです。それでもやるんですか、」
「そうだね、10年近くもひとりぼっちなんだろ?俺も似た様なものだったからな、独りの気持ちは痛いほどわかるし、絶対に助けたい。」
「そこまで言ってくれるなら、私はシグレさんを信じます。」
「ありがとう、全力を尽くすよ、」
その日はその話をした後は特に目立った会話をする事はなく、僕の旅の目的などを話してお開きになった。
家の2階にある客間に通された。
通された客間は、村の家とは比べものにならないほど立派だった。床には木の板が隙間なく敷かれ、窓には薄い布のカーテンが掛けられている。部屋の隅には小さな机と椅子、それに柔らかな藁を詰めた寝台まで置かれていた。
「……これ、本当に使っていいのか?」
思わずそんな言葉が漏れるほど、僕には贅沢な部屋だった。
「使っちゃダメなら通さないでしょ。」
「わかってるよ、言ってみただけ、」
アスルの声は僕にしか聞こえず、アサルト話すと独り言を言ってる人になってしまうので、人と話すときはなるべく黙っててくれるアスルだが、僕が一人になると積極的に話してくる。
実は寂しいのかもしれない。
客間の窓を開けると、夜の潮風が静かに入り込んできた。どこからか波の音が聞こえ、遠くには船の帆を揺らす軋みまで聞こえる。
部屋自体は質素だが、白い壁は丁寧に手入れされ、寝台には清潔な布団が敷かれていた。
「海の匂いがする……。」
村では嗅いだことのない匂いに、僕は少しだけ胸を躍らせた。
寝台に手を置く。
柔らかい。
恐る恐る腰を下ろすと、体が少し沈み込んだ。
「……すごい。」
地面でも藁の上でもない。こんな場所で眠れるなんて思ったこともなかった。
やっと18歳になり念願の普通車の免許の教習所に通い始めて、小説そっちのけで車の運転に夢中になっておりました、まだ仮免許を取ったばかりですが、買う車も決めており、中古で安いですが、自分で内装をいじる方ができる様で、とてもワクワクしています。高校の方では期末テストが終わり、もうそろそろ夏休みが近くなってきました、友達とBBQをする予定やドライブに行くなど、高校最後の夏休みを全力でエンジョイしようと予定を練っています。バイトも遊びも小説も同じくらい取り組みますので、ぜひ次回を楽しみに待っていただけると幸いです。読んでいただきありがとうございました。良ければブックマーク、感想等していただけると幸いです。




