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白奏…参
向けられる視線を感じる。今度は彼を見なかった。
「お前も、行けないのか」
紡がれた問いにただ笑う。それだけだ。
「お前も、行かないのか。――四季」
名を呼ばれる。いつの間にか、外の世界が、己の世界が、失ってしまったそれを、白い世界に残された人間が呼んでいる。
「ここにいる」
不可ではない。
拒絶でもない。
「行けぬ理由もない。行かぬ理由もない。だから、ここにいる」
誰も来ないことを知っていた。誰かを待っていないことも知っていた。
だから、待つ理由も、行く理由もない。
ここにいる事。残された選択肢が唯一、それだけだったから。
それだけだ。
理由など、さして重要ではない。
原因など、それ以上に馬鹿らしい。
ただ、命の砂時計は零れ落ちていく。そこに原因と理由を求める方がおかしいのだ。
そうあるものとして、何故受け入れる事が出来ない。




