機能しない現実①
塗り替わった世界です。現実世界に限りない世界です。
「新しい携帯が出るみたいだけどさ」
千恵子が話しかけてきた。
京子はミーハーな千恵子のことを少し軽薄だと感じる。
別に嫌いなわけではない。
むしろ仲は良い方であるとの自認もある。
それでも。
それでも京子は、何かこう、倫理感やべき思想とは別に、さげすむ気持ちを消せないでいる。
「そんなに変わるんだっけ」
当たり障りのない、あまり意味の無い話を振る。
会話という奴は、無秩序な玉入れだ。
きっと最終的に琴線に触れる数を集計して、関係性とするのだろう。
「京子」
千恵子に呼ばれてハッとする。自分の脳内完結思考の漏洩を危惧する。
しかし次の瞬間、眼前のそれにすべてを奪われた。
「何あれ」
7月19日、世界に初めて怪獣が出現した。
国が、対応に悩み、軍隊が出動した時点で都市一つが壊滅状態だった。
さらに、もう一つの誤算。ミサイルおよび近代兵器のほとんどが無効化された。
怪獣という呼称。それは、人知を超えた力を持った、生物に見えるということである。
しかし、その生物は、火器類を無効化したのだ。
生物の範疇を、線引きを新たにしなければならないことを感じさせた。
そして、怪獣は地中に消えたのである。
「いだぁい」
千恵子が叫んでいるのが聞こえる。
右腕が、見たこともない方向に曲がっているように見える。
その悲鳴を上げているそばに死体がたくさん見える。
頭がぼうっとして、何が起きたのかを理解することができない。
惨事を冷静に見つめている。
あれ。
「いたい」
私は二度と走ることができなくなっていた。
「ということで、私の人生を奪った怪獣を始末するために、私は防衛隊に入ったの」
隊長が呟いた。
2021年7月世界が変わった。
急激に発達したバイオテクノロジーと、一度きりの脅威、怪獣への対応策。
世界の流れは急激に変化したのだ。
各国の情報戦は、激しさを増した。
兵器開発の方向性も変化した。
これまで人類が築き上げてきたものが通用しない。
兵器が、概念が。
機能しない現実。
「さぁ、ここがジェリス隊長の部屋よ」
ここからが本当の物語。
ありがとうございました。




