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異世界に転生した平凡な私の非凡な日々~ドラゴンさんに懐かれました。  作者: もり


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104/110

104.移住

 

 うん、移住しました。

 あまりのスピード引っ越しにびっくりだけど、魔法ってすごいよね。

 しかも最強のドラゴンミヤコちゃんと博識白澤のアウルがいるんだから、無問題。


 お店の燃えてしまったところは、ミヤコちゃん監視の下で火の王様に修繕させて、その間にお父さんとお母さんは引っ越しのご挨拶。

 お兄ちゃんはツグミさんに手伝ってもらって長官と連絡を取って、移住することを伝えた。

 ノスリはチャムラカ王国の地図とにらめっこしながら、アウルと一緒に色々と計画を練ってたみたい。


 うん、私はすることない。

 というわけで、アトリとセッカの相手がほとんど。

 ちょっと落ち込みそうになったけど、結局はそんな暇がないほどに引っ越し作業は進んで、今はスクバの街にやってきました。


 家族で話し合った結果、王都とかよりも田舎がいいなってことでスクバの街に決定。

 街は復興に向けて住民が集まってきてはいるけれど、まだまだだから。

 海辺の街も候補には上がったんだけど、たぶん初めのうちはパン屋さんとしてやっていくには難しいだろうって判断。


 問題は、スクバの街ではノスリはもちろん私も顔を知られているってこと。

 だから新しい店舗兼住宅に移り住んでも、ほとんど家の中で過ごしてます。

 引っ越しは以前のように夜中に少し手前で地上に降りて、そこから荷馬車で移動。

 さも、安全になったって聞いてやって来ました感をお父さんたちは出してた。

 いや、あれは演技ではなく本気だね。


 お父さんたちは新しい家の補修がある程度終わったので、他の家の手伝いに行ってる。

 お兄ちゃんとツグミさんは隊舎に行って、隊長さんたちに協力してるみたい。

 ミヤコちゃんは子猫の姿でお兄ちゃんたちと行動。

 二人とミヤコちゃんのことは隊長さんからのお口チャック命令が隊員さんたちに出てるので、街の人たちにはばれてないんだって。


 ノスリはこの街に着いてすぐ、アウルと一緒に実家に帰ってしまった。

 要するに王子様に戻ったってこと。

 わかってはいたけどあっという間で、ちゃんとしたお別れもできなかったよ。

 また会えるのはわかってるけど、次に会うときは立場も違って今までどおりにはできないかもしれない。

 それはすごく寂しい。

 ただまだ実感があまりなくて、だから考えないようにしてる。


 というか、実は今はそれどころじゃない。

 だって私は今、ジャッキーと火ネズミな火の王様と一緒にいるんだよ。

 それどころかヒッキーまでいるんですけど!

 アトリとセッカもいるけど、この微妙な空気を読めるわけもなく、お客さんが増えたって感じではしゃいでる。

 ああ、子供っていいなあ。


「あの……ヒッキーはどうしてここに?」

『ふむ。土の中で砂金の粒を数えておったら、風の王がやって来て面白いものを見ることができると聞いてな。やはりコルリは面白いな』


 権兵衛、またお前かー!

 てか、私は別に面白くないよね?

 そう思っていたら、ヒッキーが手を差し出して何かくれようとしたので、私も差し出した。


『ん』

「え?」


 手を出したのは条件反射だったけど、待って!

 待って、待って!

 これ何かで見た!


「ええ!? ちょ、えええ!?」

「わあ! お姉ちゃん、何それ!?」

「さ、砂金ダヨ!」

「きらきら~!」


 手のひらからパラパラとこぼれて床に落ちる音でアトリとセッカが何事かと近づいてきた。

 それで砂金を見て大喜び。

 いや、ほんと待って。

 何かでこのシーン見たことある。


『これを見つけると、人間たちは喜んでいた。だからコルリも喜ぶのではないかと思ったのだ』

「あ、うん。嬉しいけど……もらってもいいのかな……?」

『当然である』

「じゃあ、遠慮なくもらうね。ありがとう、ヒッキー」

『うむ』


 お礼を言うと、ヒッキーは嬉しそうに頷いた。

 よかった。化け物にはならなかったよ。

 私は欲深い人間だからね。

 もらえるものはもらう主義なんだ。

 これをノスリにヒッキーからだって渡せば、国の復興に役立つよね。


「アトリ、セッカ、これヲ集めて何か袋に入れテおいテくれるカナ?」

「は~い!」


 アトリとセッカは仕事ができたことで嬉しそうに袋を探しにいった。

 それから手のひらにまだ残ってる砂金をどこに置いておこうかと考えてたら、ジャッキーがじれったそうに私の周りをうろうろし始めた。


「どうしたの、ジャッキー?」

『吾輩にも何か欲しいものを申すのだ』

「欲しいもの?」

『エリクサーがよいか? それとも――』

「待って待って、それはいい。いらない」


 不老不死の霊水なんていらないよ。

 っていうか、本当にあるんだ……怖いから誰にも言わないでおこう。

 でも何か言わないと、ジャッキーは納得しそうにない。

 たぶんヒッキーにライバル心を燃やしているからだね。

 当のヒッキーはテーブルの木目を指で沿わせて遊んでるよ。


「ええっと……塩……は違うか。岩塩とかだったらヒッキーの――」

『塩だな! 人間たちが海水から作っておったものであろう?』

「あ、うん」


 岩塩も元はと言えば、海底だった場所が隆起したりして地上に出てきた結晶とかだけど、どちらにしろヒッキーの守備範囲じゃないのかな。

 そう思ったけど、そうか。

 海水や塩湖の水を蒸発させれば塩ができるから、ジャッキーでも――って、何、今の音?


「お姉ちゃん! お店が!」


 アトリとセッカの怯えた声に、私は勢いよく立ち上がって走り出した。

 まさかまた火事になったりなんて……。


「……塩?」

『うむ。ひとまずはここが一番広かったからな。他の場所も塩で埋めようか?』

「い、いや。いいよ。……ありがとう、ジャッキー」


 お店へのドアの前に立つアトリとセッカを押しのけて入ろうとしたけど、入れなかった。

 大量の塩がお店の中を埋めてたから。

 仕事が早いよ、ジャッキー。

 ドヤ顔のジャッキーに何を言えばいいのかもわからない。

 とりあえず、どうすればいいんだろう。




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