返ってきた三人の日常
翌朝。
いつもの日常が始まる。
寝癖でボサボサな髪と、洗面台の前で格闘するペルセ。
こっちから起こしに行かないと全く起きてこない、寝坊助のマール。
そして、そんな二人を眺めながら、台所で朝食を作るハイーラ。
「よっ、と」
ハイーラはフライパンを揺らす。中には、卵と牛乳を混ぜた、黄色いものがある。
昨日は帰りが遅かったので、今日の朝ご飯は比較的簡素だ。
スクランブルエッグと、焼いたソーセージ。
こだわらなければ、作るのは難しくないメニューだ。焼き具合を見る限り、もうすぐできそうである。
「ペルセちゃーん、マール起こしてきてくんない?」
「えぇ〜!?」
これも、いつもの日常だ。
ペルセは洗面台でしばらく格闘していたようだが、諦めてマールのいる寝室へと向かった。
普通は、逆だろう。だが、そんなことは今更だ。
「ん…できた」
フライパンの中身を、それぞれの皿へ分ける。
そこに、予め用意しておいたソーセージを盛り付け、ケチャップをかける。
ーーー完成だ。
ハイーラは三枚の皿をまとめて、机へ運ぶ。
「ん〜…眠い〜…」
「…あんた、寝癖スゴいわよ」
奥から、マールが出てきた。その髪は、寝癖であちこちはねている。
今更言ってどうこうなるものではない。しかし、気になるものは仕方ない。
「ご飯だー!」
その影から、ペルセが姿を現した。
マールほどではないが、ペルセにも寝癖は残っていた。
ーーーあとで、二人まとめて寝癖を直してやろう。
密かに決心しながら、ハイーラは席に着く。
それと同時に、マールとペルセも席へ着いた。
「いただきまーす」
ペルセの静かな挨拶が、家のなかに響く。
今日は、昨日のようにペルセもピリついていない。ちゃんと、食欲もあるようだ。
マールもボーッとしつつ、ゆっくりとソーセージを口に運んでいる。
焼き具合は、完璧だ。ハイーラも、ソーセージを一口含みながら、そう確信した。
そう思っていると、ペルセがマールを見つめている。
ーーーまさか、まだマールから悲鳴が聞こえるとか言うつもりなのか。
ハイーラは思わず身構える。
だが、ペルセはマールを見て、不思議そうに首を傾げた。
「…ねぇ、マールさん」
「ん〜…?」
「何か、いいことあったの?」
その発言に、ハイーラは密かに安堵した。
どうやら、悪い話ではないようだ。
「…どうして、そう思ったの?」
「昨日聞こえてきた悲鳴が、今日、ビックリするくらい聞こえないし、むしろ落ち着いてるから…」
ハイーラの質問に、ペルセは戸惑いつつも答えた。
その返答に、ハイーラとマールは思わず顔を見合わせた。
もしや、キーアの捕縛の件か。
それとも、昨日の夜の話し合いか。
ハッキリした要因は分からない。それは、マールも同様のようだ。
ーーー何だか、可笑しくなってきた。
二人揃って、思わず吹き出した。
もう、笑うしかなかった。
「え?…え?どうしたの、二人とも?」
ペルセが戸惑っている。
だが、無理もない。大人二人が、いきなり笑い出したんだから。
だが、ペルセにその理由を話すつもりはなかった。
二人の口からは、自然と同じ言葉が、同じタイミングで飛び出した。
「ナイショ」
意図せずに、二人の声が重なった。
ペルセはその返答に対し、頬を膨らませ、不満そうにしている。
だが、ハイーラもマールも、それ以上言う気はなく、ただ笑い続けた。




