留学先への想い
魔界、アスティアノの町。
帰宅したペルセは、ハイーラ達と共に、アモディエナからもらった学校のパンフレットを読んでいた。
小綺麗な校舎で、楽しそうな様子の子供達。
ペルセにとっては、まさに未知の領域だった。
「…そういえば、ハイーラさん達も、学校には行ってたの?」
「ん?そりゃまぁ、ね。魔界の中の学校には行ってたわ」
「へー」
ふと気になった、素朴な疑問をぶつけてみた。ハイーラは穏やかな表情のまま、パンフレットから視線を外し、ペルセの様子を見ていた。
「…どんなところだったの?」
「そうね…大体は勉強を教わるところなんだけど、同じ世代の子達と、色々ことやったりしてたわね」
ハイーラはそう言いながら、少し物憂げな表情でマールの方を見ていた。マールは不思議そうに首を傾げるだけで、何も言ってこない。
ハイーラとマールは小さい頃からの付き合いだと前々から聞いていた。もしかして、学校も同じだったのだろうか。
「こっちを見られても〜…私、途中から学校に満足に行けてないからね〜」
「私、何も言ってないんだけど?」
「ハイーラは知ってるでしょ〜?」
「…あんたのお家事情は、イレギュラー過ぎるのよ。それに、もうあの家は潰したでしょ?」
「そうだね〜」
マールは静かにクスクス笑っている。だが、その奥には、重いものが眠っているように見える。
ハイーラも、それに気付いているようだ。しかし、すでに解決しているようだし、あまり気にしなくてもよさそうだ。
ペルセは再び、パンフレットに視線を向ける。
写真に写る子供達は、似たような服を着ている。これには、何か意味があるのだろうか。
そう思っていると、マールが口を開いた。
「それにしても〜…このエストラって学校の制服、学ランとセーラー服なんだね〜」
「そうみたいね。短期留学だと、着れるかどうかは向こうの考え次第だけど」
「セーラーは私も経験ないからね〜、ちょっと憧れるな〜」
「…あんたにそんな美的センスがあるの…?」
「ひど〜い。可愛い制服に憧れてたっていいじゃ〜ん」
ペルセは二人のやりとりを聞き、改めて女子生徒の服装に注目してみた。
確かに、可愛らしい服装である。以前着たことのあるスーツと比べても、可愛げのある印象だ。
さらにパンフレットをめくると、制服に身を包んだ子供達が、教室で授業を受けてる写真が載っている。
先生らしき人物が前に立ち、話しているように見える。生徒達は手元にあるノートを広げて、必死に何かを書いてるようだ。
「…ちゃんと、授業もあるみたいね」
「一対一じゃないんだ…」
「まぁ…学校は基本、何もなければそういうものね」
アモディエナやデメナが勉強を教えてくれることもあるが、その時は付きっきりで教えてくれていた。だが、学校ではそうでもないのか。
そこも、ペルセにとっては新鮮に見えた。
「どういう授業がされるの?」
「…そこまでは、さすがに分からないわ。私達も人間界の学校は経験ないし、そこは学校によりけりなところも大きいからね」
学校によって、内容がバラバラなのか。ましてやエストラが人間界であるなら、魔界とも違ってても変ではないかもしれない。
「…楽しそう…」
素直な感想が、口をついて出てきた。
勉強は好きではない。だが、それを抜きにしても、パンフレットの中にいる子供達は、皆充実していそうだった。
もちろん、全部が事実であるとは思っていない。しかし、それを抜きにしても、楽しそうに見えた。
「…行ってみたい?」
「うん」
だからこそ、ハイーラからの問いを否定することはできなかった。




