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恐怖の才能

 

 私には恐怖の才能がある。私は色々なものに恐怖するが同時にそれを客観的に観察出来る。


 だから私は恐怖を楽しんだ。あえて言えば、恐怖させる才能が恐怖する才能を上回ったのだろう。


 私の才能は素晴らしく、オカルティストとして稼いでいる。ある所では怪談作家、またある所では雑誌記者、時にはブロバイダーなどなど。その時、私は嘘を描かずただ思ったことを書く。それだけでお金が手に入る。


 しかし、私はただ稼ぐだけで満足しない。才能は人生をかけて証明するものだ。私はより才能を磨くために人を求めた。


 ネットのオカルト版ではだめだ、あれは怖がる才能はあるが、それ以上に恐怖を面白がる。

 本当の恐怖する才能の持ち主はもっと静かなはずだ、声も出さず怯えているはずだ。だからこそ、こっちが見つけなければ見つけられない。


 そして、見れば何がそいつを怯えさせるのか分かるはずだ。そうして、この才能を磨き、誰もが怖がる『何か』を見つければ、皆が恐怖する才能に押しつぶされ、楽しむなんてできない世界。その世界で唯一私だけが人々を恐怖させる。素晴らしい楽園ではないか。


 そんなことを妄想しほくそ笑んだ。



 歩いていると、黒い服を纏った人に君には恐怖する才能があると言われた。


 私にとって、世界は暗闇だった。暗闇は常に私を引きずり込もうとする。


 歩く横の路地裏、陰、そこにはありとあらゆる悪徳と不条理があり、眠るときの瞼の裏には常に何かがいる。


 目の隈は常に消えず、人との会話には常に悪意がある。そう感じている私にとって、世界とは価値を感じない物であった。


 だが、それでも私は動き続ける。そういう機構のように、私の恐怖が肉体のシステム、才能ならば、ただ生きることこそがより大きな肉体のシステムなのだろう。


 私にできることはなく、誰かがここから救ってくれることを祈り続けた。そんなときにあの人がやってきた。


 あの人は語った。恐怖する才能を皆が持っている。だが、恐怖させる才能がそれを上回っているがゆえにみな恐怖を楽しむことが出来る。そんなものは不純だろう。ありとあらゆるものを恐怖させる、絶対の回答があれば、皆が恐怖する才能に跪き、君と同じになるだろうと。


 私はその誇大妄想に惹かれたわけではない、ただ、楽しそうに恐怖を語るその姿がいいなあと思ったんだ。あえて言えばそれは唯一私が恐怖する才能に、恐怖させる才能が上回った瞬間だったのかもしれない。


 私はその手を掴んだ。その人と一緒に居たかったから。その人を見続けたかったから。


「あなたの夢にどこまでもついていきます。だから、あなたも私を捨てないでください。もし、捨てたら、・・・・化けて出るかもしれませんよ。」


 そう私は悪戯っぽく笑った。



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